ヤンデレ 〜逃げられない男〜
助けてくれてありがとう。
今追われててさ。
やっと逃げてこれたんだ。
ちょっとここ座っていい?
あぁ……疲れた……。
あぁゴメンゴメン。
知り合いの女に監禁されてて、走って逃げてきたんだ。
色々すいませんね。
今訳を話すから……。
オレはこの間結婚してね。
みんな祝福してくれた。
職場の同僚、上司、昔の友達、同級生、家族……。
ホントに幸せだった。
仲間が飲み会を開いてくれるって言うからオレは飲み会に参加したんだ。
学生時代の昔話や、オレを祝福してくれる話、ホントに楽しかったんだ。
何次会まで行ったかな。
もうそれも覚えてないな。
楽しくてつい……飲み過ぎてしまったんだ。
気が付くと知らない所にいた。
なんか六畳位の部屋だったよ。
イスに縛られててさ。
訳が分からなくて辺りを探していたら、後ろから女の声がしたんだ。
振り返ると、キレイな女の人がいてね。
でも最初は誰か分からなかった。
「あの……どちら様で?」って尋ねたんだ。
そしたらその女、にっこり笑って、
「思い出してくれるまで、ここで私と暮らしましょう」って言ったんだ。
怖かったよ。ホントに怖かった。あの笑顔。
何日たったかな。
すぐに拘束を解いてくれたから、行動できたんだけど……
え?抵抗しなかったのかって?
無理だったな。
そいつ拳銃とナイフ、スタンガンを持ってたから。
軍人みたいだったよ。
オレがその女が作った飯を食ってる間、ニコニコしながらオレが飯食ってる様を銃を構えて見てるんだぜ。
恐怖で味が分からなかったよ。
一番苦痛だったのが夜の時間だった。
何されるかって……そりゃあ……ヤられるんだ。
イスに縛られてな。
ナイフを片手に気持ちよさそうな顔してんだソイツ。
生きた心地がしなかったよ。
でさ、夜は二人で一緒に寝るんだ。
ダブルベッドでな。
拘束が解かれてるから、逃げようとするんだけど……
ソイツ、寝ねえんだよ。
目をずぅっと開けて、笑ってる。
『幸せ……本当に幸せ』ってブツブツ言ってるんだ。
それが一番怖い時間だった。
毎日毎日だぜ。
オレは嫌になって外に出ようとするんだけど、当然、鍵がかかってるし、窓には鉄格子。
これは逃げられないと思ったな。
でも諦めなかった。
オレは「好きだよ」「愛してる」って言い続けたんだ。
当然嘘だけどな。
それを長いこと続けてたらよ、そいつ、オレの事拘束しなくなったんだ。
銃もどこかに置いて、夜もちゃんと寝るようになったんだ。
しばらく、その習慣を続けた。
そしたらよ、鍵もかけなくなったんだ。
チャンスだと思った。
オレは夜を待ち、ソイツが寝たのを確認した後、そっと出て行ったんだ。
外に出たとき、ほっとしたのを覚えているよ。
でもそこは山の中だった。
昔に廃業したペンションかなんかを買い取ってそこにオレを監禁したんだな。
まだ油断できない。
オレは走ってその場を離れようとした。
するとだ。
パンッ……チュインッ!!て音がしたんだ。
気付いてたんだよソイツ。
オレが逃げた事に。
銃を撃ってきやがった。
弾はオレの近くにあった岩石にあたって弾けた。
オレはがむしゃらに逃げまくったさ。
山道を必死にな。
ほらここ。この傷、他にも何発か撃たれてて弾がかすったんだぜ。
怖かったよマジで。
逃げて逃げて逃げて逃げて……そして、国道を見つけ、そこを進んで、町の方に逃げてきたってわけ。
そしたら、あんたがいて、アパートに一緒に入れて貰ったんだよ。
オレ……逃げてる間、ずっと考えてたんだ。
アイツは誰なのかをな。
そしたら思い出したんだ。
アイツは……オレの友達だった。
小さい時のな。
大人になってたから気付かなかったよ。
『私、あなたのお嫁さんになる』って言ってた様な気がすんだよな。
オレは「いいよ」って言った気がする。
でも昔の事だぜ。
しかもオレ、その後すぐ引っ越したから、向こうも忘れてると思ったんだけど……。
でも、今回で学んだな。
あんまり……無責任な事言うもんじゃないって。
オレ……無事に帰れたら本当に気を付けるよ。
自分の発言に。
……ところで悪いんだけど、電話かけてくれるかな?
警察に。
スマホも財布も無くてさ、悪いんだけど頼むよ……。
匿ってくれてありがとう。
はあ…………。
男は幼い頃とはいえ、無責任な発言でこうなった。
無責任な発言はしないほうがよさそうだ。
てか、電話かけてくれって言ってソファーに横になってしまったんだけど、どうすればいいかな?
窓から見てんだよ。
……知らない女。
なんか言ってる。
「電話かけたら殺す……その男返して……」




