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不運? なんなく鑑定団  作者: 足羽くるる
第二章・休暇の間の騒乱 〜川越編〜
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第二章3 xx-探し物はなんですか-

ひとつやり終えるまでとことんキリのつかない俺には、何も分からぬまま、何の成果も上がらず、ただこうしているのが非常に嫌でしかない。


辛くも、それに他人を巻き込むまでしたくはなかった。

しかしここまでやると、猫の手も借りたい勢いで、他力本願でもいいから何か手掛かりを掴みたかった。


 あの後、もう一度自分の部屋の中をくまなく……特に箪笥たんすやベッド下をあたってみた。

 箪笥には昔自分の着ていた服がそのままになっている。

 服はもう小さくなっていて着られないが、家の近くに古着屋もなければ年下にいとこがいるわけでもない。俺の妹がまず着るわけがない。結局のところ、ごみとして出すのも面倒だしもったいないので放置されているらしい。

 その中を探してみたがまるで見つからない。

 早いとこ正体を見つけ出しておきたいので、下の階のリビングにいる伯母の伊万里いまりに何か知っていることがないか聞いてみることにした。


「伊万里さーん」

 階段を駆け下りながら伯母を呼ぶ。


「どうしたのよ、さっきからそんなに必死になって何か探して。なーに、女の子から貰った大事な手紙とかでも置いてったりしたのかな~?」


 言ってることが妙に勘付いていそうなのが気になるが、決して女子から手紙なぞこの俺が貰うわけがない、というか何か探していることが既にばれている。ばれるといってもいかがわしいものではないことだけは保証できる。

 やはりこの伯母が失くしものについてだいぶ関係しているのだろう。


「あのさあ、俺の部屋久しぶりに見てみたんだけど」


 伯母がこっちを振り向いたが、表情からは怪しい感じは読み取れない。

 だが、敢えて単刀直入には聞かない。


「俺の部屋掃除してくれたりした?」

 さあ言え、真実を……


「当たり前じゃんか、埃だらけにはしときたくはないもんだしね。帰ってきてそんな部屋なんて嫌でしょう。掃除はしとくから毎月でもいいから帰ってきたら?あやちゃんも喜ぶわよー」

「そ、そう……」


 あー……だめだ、全く違う方向に話が進んでしまった。

 伯母と話すときはいつもこうなる。話のそりが合わないというか、すり変わるというか。

 もちろん確かに、部屋が埃だらけになるよりは毎回のように掃除してもらってくれている方がありがたい。

 そしてだが、この家に毎月でも帰ってくることならスケジュール(超ガバガバ)的には普通に大丈夫だ。さらにこの家からアパートまではチャリで30分もあれば余裕で行くことが出来る。東武東上線とうぶとうじょうせんも使えないことは無いが、できることなら交通費は使いたくない。

 そんな大して遠くもないのにこの家には帰らない、いや帰れないのだ。

 理由としては俺がいると綾が喜ぶなんてのは全くの逆で、ましてや嫌がるから。


 単に俺とこの家に毎日顔を合わせ続けていたからこう、慣れで嫌がられていたのかな、と最初は思っていたこともあり、別居というのか店の近くでアパート暮らしを始めた。

 こうして一人暮らしをするのも憧れだったし、何より自立はいつかしなければならない。いつまでも居座るのもかえって迷惑だし。このタイミングで始めるには良かったのかもしれない。

 ただ、こう日を空けて帰ってきても、まるで綾の俺への嫌悪感というのは変わらなかったのだが。むしろそれまでより悪くなったとさえ思う。


 しかし今さっきはこういう話がしたかったわけじゃない。

 とりあえず本題に戻ってなくしものの在り処を探ろう。


「さっき伊万里さんが言ってたことなんですが、なにか部屋に置いていったものに心当たr」

「ひょええ〜っ!! 私の言ったことって、手紙のこと!? まさかあの可愛い卓君に彼女がもういたとはっ! さっき言ったのほんとに思い付きの冗談だったのよ〜、まあまあ勘が鋭いわたし! 確かに占い師とか本業にしてもやっていけるかも! ねえねえどう思う?」

 めっちゃハイテンションでまくし立てられるうちに、また話が変わっている。


「いやそういうことじゃなくて、なくものについての話を……」

 しっかりあれについて話さなければ。


 ん……??


 そういやその実態が何だったか全く覚えてないわけだ。それをどうやって説明すれば……?

 でも最初に違和感を覚えたときも、探しているときも、まるでそれが何だったか記憶していたように探していたような。


「……たぶん大事なもののはずなんだけど、それが何だったかちょっと思い出せない」


「何それ〜、それじゃさすがのネット上で人気沸騰中の恋占い・運命占い専門占い師でも分からないわよ〜」


 いつから占い師になってたんだよ……

 というかこの伯母(ひと)の本業って何なんだっけ?


「やっぱり何だか思い出せない、けどずっとあったものだから。なんかほんとに知らない?」


「ずっとあったのなら私はちょっと知らないけどね。だれも卓君の部屋の中はいじったりしてないから変わっていないはず」


「……そっか」


「でも、私は毎日来てるわけじゃないし。いない時のことは綾ちゃんなら知っているかもしれないから聞いてみたら?」


 頼みの綱はあとは綾だけか……気が乗らないがこうなった以上聞いてみるか。


「綾ちゃんなら自分の部屋にいるはずよ~」

「分かった」


 この後俺は妹の部屋で部屋のボスと対面することになる。

 が……あんなことになろうとは誰が予測していただろうか。

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