第二章1 違和感
観月卓は、連休中店を休みにし、間借りしているアパートではなく久しぶりについ最近……ではないがそんな風にも思える、実家にあたるのだろうがそうとはとうとう思えない、今は母と妹が暮らし、そして伯母がちょくちょく来たりする自分の家に帰ってみることにした。
家までは自分のアパートのある常盤台から自転車で40分ほどかかる。
見慣れた街並み。
通いなれた中学校までの通学路。
そんな風景を後ろに飛ばしながら、家を目指す。
家の門の前に立っている、少し母よりは背の高い、妙齢の女性がこちらに気づいて振り返った。
「あら、卓君じゃないの。ずいぶん久しぶりね」
両手にたくさん持ったスーパーの袋を片手に持ちかえて家の門を開けようとしていたところを見ると、伯母の伊万里さんは今帰ってきた様子だ。
「伊万里さん、今日も来ていたんですか……。たびたびすいません」
「店のほうは順調?」
「お陰様で」
乗ってきた自転車を玄関脇に止めながら卓は答えた。
伊万里さんと二人て帰宅することになった卓は、スーパーの袋の半分を持ち鍵を開けてもらった。
家に帰ってきたという感じはするっちゃする。前に帰ったのはゴールデンウィークだったからそこからだいぶ空いたからかもしれないが。
久しぶりに帰ってきた家の様子はどうやら変わっていないようだ。リビングの机もそのままで変わっていない。その上がゴミやら教科書やらで散らかっているというところも含めて。
しかしそんなことよりも、やはりいちばん帰ってきたと実感させられるのがこいつかもしれない。
そう、
「何帰ってきてんの、クソ兄」
「おおぅ……」
これが妹、綾である。現在高一。
クソだかバカだか散々言われてますがお兄ちゃんは耐えます。
これが世の中世知辛いと言われる所以その一。
『リアル妹は全く可愛くない』
昨今の風潮では『妹萌え』だとか『妹キャラ』といったものが絶賛大流行しているが、二次元と三次元ではまるで違う。
確かにラノベやアニメで出てきたりする妹キャラは可愛くていい子ばかりだ。小町神や紗霧ちゃんとかはもう崇拝対象とも言えるべき神々しさがある。
それで錯覚してしまうのも正直なところ痛いほど分かるが、妹欲しいとか言っている人をSNSとかで見かけると物申したくなる。
あれは罠だ。
決して妹という存在は現実ではああではないということを理解しなければならない。本当に芋欲しがったほうがまだいいから。
何が言いたいか?
「世の中そんな甘くない」。
これに限る。妹なんてのはいいから芋の自然な甘さを味わって下さいぜひ。
「二人とも喧嘩はダメよー」
いや、こっちは何もしていないんですけど! そして伯母さんなんでこっち見んの! あっち! あっちを見て!
視線誘導は全く効果なし、と諦めて卓はその気まずい場を離れようと、リビングを抜け自分の部屋のあった二階へと向かう。
元々自分の部屋があった二階の空き部屋は、前に来た時には既に片付けてあって、残っているのは勉強机、箪笥とベッドのみ。
そんな殺風景とも言える部屋の机の引き出しを見てみたり、箪笥の上や中、裏までも何度も確認した。確認、し……?
あ……れ?
もう一度引き出しを見る。
無い。
もしかしてベッドの下……とか?
埃1つ無い。
ふと違和感に気づく。
あったはずの何かが無い。
いや、あれが無いとか無いって……ねぇ出てきてくれよ本当に……ってあれ、俺は何を探していたんだっけ……?
無いのは分かるんだけどちょ待ち、えぇ……
何も分からず探すなんていう気持ち悪さを感じてやまないが、これでも本気で探しに来たというか、俺が今日来た理由の一つがこれでもあるのだし。
それが一体何だったのだろうか、卓はまるで思い出せなかった。
その違和感に苛まれながら、卓は元の自分の部屋を後にした。




