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不運? なんなく鑑定団  作者: 足羽くるる
番外・朝までメモに綴る文にならないコトバ達 〜ボツ編〜
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ボツニアンオブザふなかん part.2 〜ユメノアトサキ〜

「ごめん……願いが叶えられなくて」


そう告げた運命の人は、瞬く間に――忠実に表すならばその瞬く間もなく、消えた。二度と思い出すこともなかった。その姿も声も、どんなことを話したかも、最期の言葉も――


夢だ。


決して幻ではない。が、なにを思って見て聞いて感じたそれが、現実かのようなそれが、形として遺ることはない。


例えば、食べてしまったケーキを思うだけの心残り、腹の疼きと膨れた心地。あれは夢が醒めたあとのすっきりとしない、あの感覚とどこか似ている気がする。


しかし、どこにもない手掛かりを、確かにあった、としか言いようがなく、根拠の無い、ときに辻褄も合わない場面も時系列も破綻した(挙句にはその概念すらない)それをどうもっともらしく説明したところで何になろうか。経験した現実に基づいた出来事を繰り返している場合とか、たまたま他の人の聞いていたか録音していた寝言がせめての根拠にはなろうか。脳科学は詳しくないが脳波で何を見ているかは分かるのだろうか。たとえ分かったとして、理解されたとして、やはり現実と比べられると根拠に乏しく、だいたい相手にされないか、ああそうだったんだねとしか済まされないそれを、どう伝えればいいのか。


夢日記、なんてのもろくなものではない。

書いたことはためになるどころかその夢の内容に思いを馳せ、しまいにはその夢の世界が本物に違いない、こちらこそ生きるべきせかいだ、なんとかしてこの世界をもう一度、またしてはこの世界で起こったことが現実に関係がある、なんて思い始めたらきりがないだろう。昔はこの夢こそが現実もしくはそれを超えた世界であり、お告げとしたり、この世界で起きたことこそ真実に違いないと信じて疑わなかった。

しかし、現代の世の中において夢はただの脳の低活動状態が起こす謎現象(いちおうはバグとか、活動しているがゆえの正常なはたらき)として理解されたために、現実とはまったくもって切り離された幻なのである。

かくして信じられても、信じられなくても、夢のなかで起きた出来事はただの妄想とも同レベルで扱うことはしばしばである。

そんな今でも夢占いとかはある。信憑性は高いとかそうでもないとか。まあ主観とか占いをする側の誘導尋問に引き摺られることがないにしても、正しい夢の記憶をはっきり思い出すのはかなり至難の業であるが、そういった夢を題材にした作品やオカルトや宗教にはまだそうしたことを認めたくないがために、これまでの慣習とか願望とかこじつけとかこれまでの経験とか、先程の誘導尋問的構造が出来上がっていて、そういった類のものでどうにか成立させているのではないだろうか。


しかし、あの夢を、はっきり記すことが出来なくとも、あったことは事実。

それをどう表現するかなんて考えることが必要だろうか。

事実だった。それだけで十分ではないか。

自分さえ理解し、そのことがどう現実に関係するかなんてことは深く考えることもなく、ただあったことを気が済むまで楽しんで、忘れていけばいい。

忘れた方がいいことなんて、現実にもある。

現実は見たまま、夢も見たままのことはわすれるが、次から次へ、果てしなく繰り返し押しかかる膨大な現実の情報量を処理することに追われる脳は、夢など見せたはいいが捨てざるを得ないのだ。

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