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不運? なんなく鑑定団  作者: 足羽くるる
第二章・休暇の間の騒乱 〜川越編〜
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第二章13-a ラニングウェイ-下-

「でさぁ、結局おみゃー、何でこんなとこいるんだって」


 宇洋は、目の前に颯爽と現れた女性に向かって迷惑そうに、内心少し驚きつつ質問した。

 すっかり大人びた姿シルエットこそあの頃とは似つかないが、対義語にしおらしいが付くほど気が強いところはまるであの頃とは変わってはいない、俺の記憶と違わない、よく見知った彼女だ。


「あらそう、別にいていいじゃない、何が悪いの?」


「まあ別にそんなことはお見通しさ、テレビの中継に昔懐かしい知り合いが映っていたら会ってみたい心理、よーくわかる。俺ちゃんの推理がどうたらとか言ってたやんか。そうだ、ここで俺ちゃんの推理が間違っている理由も、おみゃあなりの推理も聞かしてみぃや」


「ぜんぜん見通せてないし何で推理までしなきゃいけないの、第一、私はタカみたいに探偵やってるわけじゃないのに」


「ふーん? 負けを認めるのかぁい? あんな強気だったおみゃぁがほぼ不戦敗であっさり敗北だなんて……興覚めだなぁ」


「勝負なんて受けた記憶もねえし! まあなんか悔しいから私なりの推理でも何でもしてやるわ」


「ん、今何……」


 何か聞こえた気がしたが気のせいだろうか。


 いや、はっきりとその声はだんだん大きくなってゆき、こちらへと近づいてくるようだ。


「……ひろぉー……宇洋ー、た・か・ひ・ろーーっ!!」


「ちょ、待ってぇ……ぜぇぜぇ」


 君達もやはり来ると思っていたよ……


「お、スグるん、それにアヤちんじゃないか!」





「お……おう」


 取り敢えず俺は取り乱さないように宇洋のほうしか見ないようにして軽く会釈した。が、そのすぐあと。


「すぐるん……あやちん……って? すぐ……ふあああ!?」


 まあ予想通りな反応だった……うん。



「やっぱりお前かよ、まい


 静かに目の前にいる久方ぶりの鑑定士に挨拶をした。




 ところで俺の予感は当たったが何でここに? Youは何しに川越へ?


「いや、なんでここにいんのお前」


「別にいたっておかしくないでしょ! 私は私で都合があるの、ってかあったの!! それにこれ言うの2回目なんだけど」


 ぎろっと隣の探偵をにらむ。


「てっその都合とやらは全く聞いていなかったのですが自分もぉ……」

 宇洋は若干声のトーンを落とし目で、舞をこれ以上コーフンさせないように気を使ったんだろう、たぶん。


「都合は都合! 川越の歴史博物館で調べものするためにサークルで来てただけなのっ!! こっちはマジもんの鑑定士目指して日々頑張ってるんです~、わーかーるー?」


「同業者っつか店長と店員の立場だろ!? マジでクビにすっぞ? お?」


「それ労働基準法的に完全にアウトですねー! あとしっかり職に就くまでバイト感覚でやろうとしていたのに、勝手に店長が店の時間を変えるって言い出すのほんとうにどうかと思う」


「何、なんだよおみゃーら」

 二人の様子を見て宇洋はまるでよくわからない、と首を傾げる。


「ってバカ兄……これはどーゆーことなのか」

 綾もいまいち状況を呑み込めていない。


「いや一番聞きたいのは俺だよ、舞!!それに宇洋!!」

 戸惑いつつもはっきりと主張する。


「ん……え、えーと、とりま落ち着こ? ね? ほら後ろの人たちも困ってる……し?」


「落ち着けるか! なんだよ後ろって! ……あ、すみません」


 恐る恐る後ろを見ると、持っているマイクを捻りつぶすのではないかというほど殺気に満ち溢れたインタビュアーの女性と、後ろに控えたいかにも退屈そうな報道陣が目に映った。

 ちょー気まずい。

「っとここで失礼しましたああ!」


 ひとまずここは逃げる、を選択した。


「あ、まってバカ兄ずるいぞこのっ!! それでもお前主人公なのかよ」


 ゔっ……

 襟首を誰かに掴まれ、動きが止まる。


「登場したと思ったらほとんど表舞台にも出ずに、なぁーにが主人公だ」


 いやお前が言うか。


「それにおいしいところも持っていこうとするけど結局一番見ていて無様なのは……」


「卓」「スグるんじゃね」「バカ兄だな」


 満場一致。

 いや、はああ??


「てかおめえはヒロインのくせに何で9話でやっと出てくんだよ」


「ヒロインという崇高で偉い立場だから社長出勤でもぜーんぜんOKなんですけどー? あと1話や2話でもちゃんと出ているじゃないですかー」


 舞はふんっと鼻を鳴らした。いやメタいいのか。


「ちょちょ、おみゃーらのさっきから言い合っているその話の意味がよくわからないなぁ」


「とりあえずさ、別の場所行こうよ、ね、ねぇみんな……」


「お、そうだな……って後ろおおやべえぞ……」


 綾と宇洋は完全に慄いて後ろの並みならぬ殺気を感じ取り、いつでも逃げられるように体が女性インタビュアー≪ハンター≫の動向をギリギリ目視できるぐらいの角度で逃走経路――真逆、のほうへとくるっと向いた。


 それを見た卓と舞も状況を察して後ろへ向く。


 これが幕開けの合図だったというのか。


 持ったマイクが明らかにひしゃげるほど怒りに震えたハンターの拳が振り上げられ、そのままこちらに物凄い剣幕で向かってくる。


 そして見た目の華奢さからはまるで想像もできない恐ろしい声音で咆哮、した。


「大人を馬鹿にすんじゃねえぞこのクソガキがぁぁあああああっ!!!!」

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