只今彼は策略中
南北高校。お嬢様たちばかりが通っている、有名な女子校だ。今日もたくさんの生徒が立派な淑女になるために、様々な授業を受けていた。
その中でも「姫」と称えられていたのが
姫路愛生である。
品行方正で愛らしく、誰もが振り向く絶世の美少女。高校1年生にして学校の頂点に立っている姫路は、朝から
「ななこちゃああああああん!」
爆走していた。
「は?」
某ボルトもびっくりである。
教室にスライディングしながら入ってきた姫路は、松山菜々子に話しかける。
「どうしt」
「遂に告白してきたんだ!八王子さんのあの苦笑い、本当にお美しかったよ!特にあのサラサラヘア。まるでシルクのようでさ、俺どうしようかと思ったよ」
「はいはい、落ち着いて。」
松山は、頬を紅潮させた姫路を見る。
本当に黙っていれば美少女なのに。世の中、天は二物を与えると言うが、性格の方はどうにかできなかったのだろうか。
「で、付き合うことは出来たの?」
「ううん」
「は?じゃあ振られたの?...にしては元気だけど」
「振られても無いけど...俺の想いと携帯番号、メアドが書かれた手紙も渡して来た!」
はぁ。こいつは馬鹿なのだろうか。そんなんじゃ振り向く訳がないだろう。たとえ、相手が男装した女子だとしても。
「あんたね…そんなんじゃ、振り向くもんも振り向かないわよ?」
「大丈夫!じわじわ外堀を固めて、彼女を攻略する。...片想い、何年目だと思ってんだよ。これくらい乗り越えなきゃね」
じっと姫路を見つめる。
(・・・まあ、そのためにここまでしてんだものね…)
溜息をつく松山。
きっと、こいつはどんな手を使っても彼女を自分のものにするのだろう。
そんなの、
「 」
「なんか言った?」
「はぁ...言ったわよ。大馬鹿野郎だってね。」
「はぁ!?どこがだよ!俺くらい美少女はそう
s」
「あ、姫路さん?ちょっとよろしいですか?」
「はい、なんでしょうか。」
クラスメイトに呼ばれ、去っていく姫路。姫路が通ると生徒たちが赤らめていた。
窓の外を見る。相変わらず、変わり身の早くて腹黒いやつだ。
「ま、そこがいいんだけど…」
姫路愛生。どこぞの八王子と違い、女装して女子校に通っている、紛うことなき男子である。