只今彼女錯乱中
東西高校。そこは、八王子の地元でも有名な男子校である。なぜ彼女が入学出来たのか。そしてなぜ入学したのか。それはおいおい話すとして、ここは様々な身分の男子が集まる、某BL漫画のような学校だ。
故に
「おい、王子が来たぞ!」
「え!?マジで?」
彼女が登校すれば、生徒たちが囁きだし
「おーい、王子様」
「八王子くーん」
手を振り、話しかけ
「おはようございます、王子様」
「おはようー、王子!」
「おっはー、八王子くん!」
昇降口への道は、かのモーゼのごとく生徒たちが二つに割れ、八王子の目は死んだ魚のようになる。
「はぁ...」
八王子は慣れつつある光景を見ながら溜息をつく。
(どうしたものか)
朝の事を思い出す。自分の家の前で行われた告白はどうしても頭の中から離れない。
結局、あの美少女はこちらが何かを言う前に電話番号とメアドが書かれた手紙を渡して去っていった。
(あの制服は、南北高校のだったな...にしても)
「...姫路愛生ね...」
「なにが姫路なの?純ちゃん」
「それがああああああ!?ややややややしろぉぉぉぉ!?」
「僕の名前、そんなに長くないんだけど」
千葉やしろ。八王子が女子だと知っている親友であり、幼馴染みであり、男の娘である。通称「白雪姫」だ。
「知っとるわ!てか、いつからいた?何時何分何秒地球が何回まわった日?」
「落ち着いて!さっきだよ...で、どうしたの?」
「実はさ、今朝、告白されてさ」
「いつものことじゃん」
「ま、まあ、そうなんだけどさ...なんか違和感があってさ…」
「違和感、ね...」
少しの間考える千葉。彼女が違和感があると言ったのは初めてだったからだ。
「どんな子だったの?」
「ストーカー予備軍」
「ドンマイ」
「え!?ひどくね?それで終わらせるのか?」
八王子が絶望しきった顔をする。
千葉はくすりと笑う。
「嘘だって。ほら、もしなんかあったら僕も相談のるし。護身術も学んでるしね」
「それはダメ」
「え?」
「私が、何の為にこの学校に入ったと思ってんの?やしろが心配だから、守るために来たんだよ!?この魑魅魍魎たちから守るためにね!ほら、あそこの軍団が私ら見ながら鼻血出したよ!?」
「うん、まあ、」
「と、に、か、く、やしろは私の件に関わらなくていいし、私に守られてね」
「うん...ありがとう、純ちゃん!」
赤らめながら千葉を見る八王子。
八王子も八王子でヤバイよな。千葉は彼女に微笑みながら考える。
(まあ、何かあれば裏でやればいいか...)
千葉やしろ。八王子が入学出来た要因の一つであり、様々なお偉いさんとパイプが繋がっている、裏ボス的存在であることを彼女は知らない。
そして、件の「姫路愛生」が放課後、校門でスタンバっていることをまだ知らなかった。
いつの間にかまともな人がいなかった。