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Ironically, despite their best endeavors, their mission resulted in complete failure .※

※《皮肉なことだが、最善の努力にもかかわらず任務は完全な失敗に終わった。》

忍者頭の息子の突然の報告に俺は固まってしまった。


「茂季が、妖しにつかれている?一体何の冗談だ?」


妖怪?バカバカしい。そんなものがいる訳・・・・・・あれ?


「ですが、私は茂季様のもとにいましたが、ここ半年間ぐらいご様子がおかしかったのです。特に、私たち忍者に暗躍を命ずるときなど、虚ろな目をして命ずるのです。それも、父にも隠せと。暗躍がいつどこから漏れるか分からないからと。

御屋形様より、茂季様に絶対服従の命を頂いていたので、従っていましたがこの前矢を射たれて熱を出されたときついに変わられてしまわれたのです」


「変わった、とは」


「それが、今までは敵対していても肉親だからといって残酷な手を打つことはなかったのですが、それまで暗躍していたその手この手で次々と相手を寝返らせ、あっと言う間に制圧。主犯の元安東家当主たちを晒首にしたのです。それで、他は震え上がり、直ぐに服従なされたということです」


「晒首か。あの茂季がそんなことを」


「はい。優しかった茂季様では考えられもしなかったことです」


「して、何か前兆は?」


彼は首を横に振り、


「何も。我々が来てから何も変わってはいないのです」


「何も、か。だが奴は優しかった。俺が騙されていたのか?しかし、なぜ今になって明かす?理解できないことが多すぎる。1度会おう。茂季に伝えてくれ」


「はっ。伝令を飛ばします。現在は情勢も比較的安定していますし、すぐにでも会えるかと」


「分かった。とりあえずその方向で行こう」


彼を下がらせて、忍者頭のみを残す。


「忍者頭、迅速に茂季の裏で暗躍するものを掴め。そやつは必ず身内の誰かだ。最近近づいてきた者以外に、古くから友好があった者まで洗い探せ」


「はっ。必ずや」


「今は敵対してはないが、心の内にどんな野心を秘めているか分からん。任せたぞ」



※※※※※



兵を集め、体勢が整った。

補給部隊もしっかりと作用し、防衛から攻撃に移る機会がやって来たのだ。



※※※※※



九戸政実は兵を率いて、斯波領へ侵攻した。その報を聞いた斯波氏は一人の男の名を聞くや否や兵の招集を命じた。その男とは、雫石しずくいし久詮ひさあき。南部家より取った雫石城の城主の息子だ。父の詮貞あきさだは戦上手で知られており、この度の行くさでも最前線の雫石城で戦っている。その技量を全て受け継いだと言われている息子をこちらに回すことで、雫石城と協調しながら守ることが出来るということだ。

先に物見に長けた猪去(いさり)氏を派遣し川の渡しを確保させる。そこで川の水量が異常に少ないことに気付いた。周辺に物見を放つと上流で水をせき止める堰が作られている。自軍を渡らせた後で堰を切る。今まで歩いて渡ることができた川が一気に増水し、半刻ほどの間濁流が流れる。


「よいか、今より我らは斯波領制圧に参る。背水の構えともなりおる故、各々油断は禁物といたせ!迅速に攻め、大量に領地を広げる。手柄を上げれば引き上げよう。わかったなら鬨を上げよ!」

「「「おおおおおおお!!」」」

「全軍前進!」


斯波国内に侵入する南部勢。物見に出ていた猪去(いさり)氏が戻る。

政実が率いる軍が斯波氏が率いる軍とぶつかった。


「前方より、お殿様の手勢が敵勢に遭い苦戦しております。ご加勢を!」

「先駆けの兵100を率いて先行せよ」

「はっ!」

「このあたりは開けた地形だ。伏兵を気にせず勢いよく攻めよ。地の利は我々にある」

「はは!」

「残りは私に続け!」

「「おお!!」」


久詮は兵を率いて急進する。そして退路を断つべく後方に回り込もうとする一隊を見つけ、そこに攻撃を命じる。


「かかれ!かかれ!」


鬼もかくやという声を張り上げ兵を叱咤する。鍛え上げられた兵は背後から奇襲の形になった敵兵を粉砕する。


久詮は兵を二つに分け片方を猪去(いさり)氏に指揮させ、中軍の欠けた鶴翼の体を取り、真ん中を政実の兵を通し、追いすがる南部勢を十字砲火で射すくめる。いく度と撤退を繰り返し、誘い込む。

狭い地形を利用して、混雑して密集しているところに矢を射こむので次々南部兵が倒れ伏す。それを踏み越えるかのように後続の兵が押し寄せる。部下の兵が戻ったころ合いで自らも兵をまとめ兵を退く。だが追撃の手は緩むことはなく、我先に押し寄せてくる。人数に差がありすぎて被害が馬鹿にならない。

しばらくはひたすら逃げの一手だったが、伏兵を潜ませた道まで来た。そして、その間を駆け抜けるように命じた。そして追いすがる南部勢に左右50、合わせて100の弓兵から放たれた矢が十字砲火となって降り注ぐ。腕や肩や足を撃ち抜かれた兵が転げまわり悶絶する。先頭の兵の惨状を見て足が止まった敵勢に、伏兵が襲い掛かり数十の兵を血祭りにあげる。久詮も反転し、襲いかかる。

足が止まった南部勢を尻目に、兵を徐々に後退させた。南部勢もかなりの損害を出した。死人100あまり手負いは数知れず。





























斯波氏の絶対的な勝利で終わるかと思われた。

しかし、久詮のもとに伝令が走ってきた。


「南部により、当主、斯波しば経詮つねあき様が捕まりました。斯波家は降伏を決定しました」

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