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There are no warlike people – just warlike leaders.

史実にもあった九戸家による安東制圧戦。

でもこれ負けるんだよな。



※※※※※



戦の準備を進める。

さすが九戸家。南部の中に味方も多い。

塩以外にも様々な野菜を育て始めた。苗や種は太平洋側の海運と、忍者による商売で細々と手に入れてきた。

それを使って交易を続けてきたのだ。


九戸家には精強な兵ばかりで、索敵が杜撰だった。忍者もいるだけ。忍者を連れてこれるだけ連れてきたが、田中殿はこれを使おうともしない。

頭は一応俺だが、軍を動かしているのは父さんのときからいた将。

この将が凄い脳筋なのだ。

ああ。史実で安東に言いようにやられる訳だ。


「梅吉、田中殿を呼べ」


世話役の1人に命じ、俺はこれからの軍略を考える。

出来れば、あまりこちらの軍の被害を減らしたい。

となれば、孤立させ、1つ1つを討っていきたい。


「竹吉、忍者頭も呼べ」


安東は分裂状態だったはずだ。

だがこっちは長年敵対している南部。そう易々と引っかかることは無いだろう。


「忍者頭。到着しました。して、いかように?」


黒装束に身を包んだ忍者がそこにいた。


「手短に命ず。安東へ赴き、情報を集めよ。どことどこが仲が悪いのか、どことどこが繋がっているのか。より詳しくだ。期限は1カ月間。直ぐに迎え。連絡役と護衛以外は全て動かすことを許可する。行け」


「はっ」


忍者は短く返答し、直ぐに出て行った。


「将軍がいらっしゃられました」


しばらくすると、梅吉が来た。


「通せ」


田中殿が来る。

大きな身体、荒々しい顔。


「田中殿。今回の戦は私の戦でもある。大人しくしているつもりでしたが、私も出る」


「それは、どういうことで?」


田中殿は首を傾げる。


そこからはいろいろと説明をし、名実共に総大将となった。

当主は俺だ。家臣で俺に逆らうやつはそうそういない。


史実通りにはさせない。


※※※※※


安東領が見えてきた。


「戦の準備をしろ!貝を吹け。戦だ」


それだけで、空気が変わった。

精強な九戸家の兵を率いて、進む。


最初の戦は野外戦だった。

別働隊を将軍に率いてもらい、後ろから挟み込む。

将軍が率いる騎馬隊は戦争の花。

それ九戸家はいま士気が高い。

百姓に人気が高い俺が頭と言うのもあるが、負けると思えないほど準備されていることが皆に伝わっているのだろう。今までの戦とは何もかもが違う。



※※※※※



忍者達が戻ってきた。


「地図を」


忍者が作った簡易な地図の上に駒、ここでは石を置いて説明された。


その情報をもとに敵方を混乱させていく。

裏切りを唆したり、それを教えたり、偽文を書いたり、などなど様々な妨害行為をして疑心暗鬼にさせていく。


その間もじりじりと近づき、圧迫していく。



※※※※※



伝令が慌てて入ってきた。


「貴様!今は軍議中、機密の最中であろう!」


家老の1人がそう怒鳴りつけるが、伝令は下を向いたまま


「失礼承知の上仕りました!最速で伝えなければならないことが!」


矢続きに


「南部家当主について南下中の七戸家より、南部家当主の裏切りの報告です!南下後、一度開戦をし、打撃を与えた後に引き返しています。既に背後に立たれ、安東と南部家に挟まれています」


軍議に出ている者たちの顔が驚愕に包まれている。


「もうか。思ったより早いな」


俺はそう呟く。

九戸家が東の沿岸部を取ったときから覚悟はしていた。

南部家が生命線の塩をそう易々と明け渡したのだ。普通ではあり得ない。いつかは戦になると踏んではいたのだが。


手は打ってある。が、それがどれだけ効力を発揮するか。


「皆のもの、落ち着け」


「ですが、殿」

「背後が脅かされたとなれば、私たちは」


「静まれ。直ぐにはこの状況は打破出来ない。だが、1カ月間あれば変えて見せよう。まずは、あの安東の砦を落とす。幸い工作済みで今日中には落ちるだろう。《好戦的な国民など存在しない。好戦的なリーダー達がいるだけだ。》何も恐れることはない」


俺はそこで皆の顔を見回す。

不安そうではあるものの、絶望まではいっていない。


「今一度あの砦に腰を置き、両軍に備える。両軍が互いに牽制し合えば、1カ月など直ぐ過ぎる。まずは、落とすぞ」


「はっ」


軍議をそこで終え、忍者達を集める。


「手回しをする。まずは、安東は置いておこう。既に策は打っておるしな。南部領内で一揆を起こすぞ。西は戦が連日であって疲労しているはずだ。年貢も九戸領と比べ重い。不満は大きいだろう。そこを付け。

他に九戸領でも百姓に立って貰う。少ししかいないが、信愛が援軍を出したときに三戸に入ってもらう。そうすれば、信愛は戻らざる終えない。館で一通り暴れたら領内に戻ってもらってかまわない。

時間との戦いだ。直ぐに向かえ」


「はっ」


忍者達は散り散りに去って行く。



※※※※※



「開門!」


工作により、裏切りをさせ、無欠開門させる

これによって大きな被害無しに砦を抑える。


「安東の捕虜は大切に扱え!後の交渉に使う」


砦の中を把握するために、地図を片手に歩き回る。


「ここと、ここの補強を急げ。後は石を集めるように。部隊長は役割分担をはっきりさせておけ」


砦内をあらかた確認し終え、屋敷に入る。


「政実様」


女性が1人、頭を伏している。


「顔を上げて良い。あなたは?」


美少女だ。


「私は、安東愛李です。どうか、どうか私の命だけで、他の皆の命までは」


縋り付いてくる。


「ま、待て。落ち着きなされ」


割と慌てる。まじで


「命まではとらん。そなたの他のも。だから落ち着かれよ」


気が立っていたのだろう。そう言うと、安堵で座り込んでしまった。

置いていく訳にもいかず、壁に背を預ける。


「娘よ。して、何故ここにいたのだ?一族直系の娘ならばもっと奥にいるべきだろう」


率直に疑問をぶつける。


「それは、私、今分裂している2家の血を継いでいて、前線に安心してもらうためと言うのが主でした。後は、策を伝えに。政実様には策を行う前に破られましたが」


「ほう。策を。興味が湧いたな」


しばらく話を続けた。


娘も落ち着いてきたようで、手を貸して起こす。


「着いてこられよ。気に入った」


娘も一緒に部屋まで連れて行く。つもりだったが、なにぶん俺が先頭だったのもあり、分からなくなった。


すると娘が笑って


「政実様、私が案内します」


娘の案内のもと、部屋まで行く。




※※※※※



防衛を続けて1カ月が経った。

安東、南部両軍が睨み合いをしていただけで、何も無かった。

愛李嬢とも仲良くなった。


少量の兵、決死隊を募って砦を任せた。

決死隊には武家や百姓の次男以下が選ばれた。

政栄も残りたがったが、ここで捨てる訳にもいかず無理やり連れて行く。



※※※※※



一揆が暴発した。

一揆の流れは当初予定していた規模を大きく上回って南部領内全体に広まった。

それと共に俺達も開戦する。

南部家は一揆の制圧に軍を動かさざる負えず、また、俺とも激戦を繰り広げなければならない。

七戸に裏切らせ、背後を怪しくする。

がたがたになった南部軍に俺の軍がぶつかる。

対等な戦力差。だったのが、一気に俺に傾く。

1刻もしない間に南部軍の敗走。軍を半分に訳、政栄に任せて砦に戻す。

俺は軍を率いて三戸を目指す。



※※※※※



三戸制圧完了。信愛が最後の抵抗を見せたが撃破。説得に応じず切腹してしまった。

三戸南部家は切腹。

弟の高信は九戸家が南部を継ぐことを認めた。

これで南部領は正式に俺の土地となった。


既に南部領で俺に逆らうやつはいなくなった。


政栄もいまだ堪え忍んでいる。


西の軍を動かして安東を攻める。


津軽領から軍を出させて、北からも圧力をかける。



※※※※※





天文23年(1554年)

安東領制圧。

3月 旧安東領に戸沢・小野寺・由利連合軍が進行、南部軍と激突。

安東愛李を妻に迎えることで、比較的早急に旧安東領を安定させる。

後、収穫期のため和睦。

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