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He possesses a great capacity for overcoming any obstacle.

天文5年 1536年

後の九戸 政実が生まれる。


※※※※※


「男の子です」


九戸家に跡取り息子が誕生した。

家中大騒ぎ。宴が開かれた。


※※※※※



神様転生

俺は今それを体験している。

俺は死後の世界など信じていなかった。死んだらただ無に還る。そう思っていたのだが現実は違うようだ。

だが、俺には自我が残ってる。辺り一面白く何も無い。


「やあ」


突然声が聞こえた。


「あなたは?」


目の前の空間が歪み、薄らと黒みがかかっている。


「僕かい?僕は(●´∀`●)。偽りを司る神の1柱だよ」


「申し訳ないが言葉が理解出来ないようだ。もう一度ゆっくりと教えてくれないだろうか」


すると、黒い空間が揺れた。


「どうやら、君には僕の言葉が分からないみたいだね。今ので分からなかったらもう無理だよ。君はどうやら人外のそれでは無かったみたいだね」


黒い空間がもう一度揺れた。


「君は僕に選ばれたんだ!君はもう一度人生を過ごすことが出来る。どうだい、やるか?」


俺にためらいなど無かった。


「やる!」


黒い空間は再び揺れた。


「よろしい。ならば説明をしよう」


すると、手元に巻物が現れた。


「読むんだ。それが説明文。君には戦国時代の最北端、南部氏の一角に生まれ変わる。持って行ける力は1つだけ。そこに書いてある中から選ぶんだ」


そこには2つしか書いていなかった。


・健康

・肉体強化


「これだけ?少なくない?」


「どうやらそれだけみたいだね。君の素質の限界かな?思ったより選択肢が少ないみたいだね。もしかしたら強化の幅が大きいのかも」


2択か。どちらも肉体関係ぽい。


「健康は病気になりにくくなる。毒にもある程度耐性があるかもね。肉体強化はそのまんま。身体能力が大幅に向上するよ。でも、多少なりとも努力は必要になるね」


どちらにすれば有利か、かなり悩む。

戦国時代はとにかく死にやすい。

流行り病で死ぬか、戦で死ぬか。

どちらも嫌だな。


しばしばの間悩み、結局肉体強化を選んだ。

健康では戦に出たときに心許ないし、もし成り上がらなければならなくなったときに武力は必要になると思ったからだ。



黒い空間が揺らぐ


「どうやら目覚めのときが来たようだ。僕が関われるのはここまで。しばらくの間は知識が受け継がれないだろう……頑張ってね」


そう言い終わるとともに、意識が微睡みの中に入っていった。


「《彼にはどんな障害をも克服できるすばらしい能力がある。》彼は主人公になる。例え、こんなことがあろうとも。さあ、始めよう。ここからは君の物語だ」



※※※※※



5歳になった。数え年だけどね。

先日1週間程高熱を出して寝込んでいた。

後に世話役に聞いた話だとかなりうなされていたみたいだ。

その熱を乗り越えたとき、夢で前世を思い出した。

船大工の親父と農業研究家の母、農家の祖父母に囲まれて生きてきた俺をだ。

幼い頃から閉鎖的な島で育ってきたが母の影響で外によく出ていた。

幼い時は祖父母の手伝いをしたり、母と一緒に研究をして畑で実験もした。そのときに農業の歴史、野菜の歴史を母から聞いた。

少し大きくなったら、近所の子、友人を集めて親父に教えられながら船を作った。

小舟を作ってレースをしたこともあった。

子供の手作りだった為、原動機を搭載するようなことはなかったが、風で動くぐらいだが巨大船の制作もした。

限界まで大きくしてみたが、それは親父たちに怒られた。


懐かしい思い出だ。今思い出せるのはここまでみたいだ。

いつしか目から雫が落ちた。


「若!大丈夫ですか?」


傍に控えていた世話役が慌てている。


ぼそりと呟いた。


「海が見たい」


と。それが多大な効力を持って、父上は日本海沿岸を攻め、九戸領にしてしまった。


九戸家は100年程前に大鉱山を発見したことで、零落城主から大城主まで一気に成り上がった。

南部家の中では九戸家の影響力が強く、当主も無下には出来ない。



※※※※※



部下と世話役を付けられて、領地として沿岸部を与えられた。

まあもともと俺が望んだのだしね。


立派な港とそれらを一望出来る大きな館。

海から敵が来たらどうするのだろう?



※※※※※



村の子供たちと一緒に遊ぶ。

元気が溢れてきて、騒いでいないと落ち着かない。

まだ5歳なので大したことは出来ないが、近くにあった山に入る。

ここは子供たちの遊び場で、俺の領地になってからは良く父上の軍が安全確保している。

秋になると山の幸が手に入る。

ここら辺にはカナデが多いみたいだ。



※※※※※



父上が南部高信を支援して岩手郡に進出し始めた。

高信との関係は良好のようだ。



※※※※※



2年が経った。

父さんが付けた槍の師匠に槍の使い方教わる。その後には跡取りとしての領地運営の勉強をしているのだが、何分人材不足。

直ぐに教わることは無くなってしまい、領地運営にも手を出すようになった。


始めは塩造りだ。

今までは浜辺式塩田で塩を取っていたが、労働力に対して実入りが悪い。

流下式塩田に変更させ、生産量を大幅に増加させる。



※※※※※


次に農具改革だ。

九戸領には豊富な鉄がある。それに俺は跡取り。頼めば優先的に回してくれるだろう。

父上は何かと俺に甘い。

農具の先端のみを鉄に変え、資源を節約しながら農業をやりやすくしていく。



※※※※※



種蒔きも、適当にやるのでなく、苗代を作って整頓して植えるようにする。そのために苗代の準備に取り掛かる必要があったが、当時は種籾を適当に撒くのが常識だった。殆どの村人たちは育苗の必要性を理解していなかった。

跡取りである俺が言っているからやる。そんな感じだ。これを2月に行う。


籾種に対して塩水選を行った。殆どは胡乱げな表情を浮かべるが、何も言ってこない。

しかしこれで浸種に必要な籾種が揃ったので、籾種を川の水を入れた木桶に入れてなるべく水温が上がらないよう日陰になる場所に安置する。

籾に十分吸水させ揃って一斉に発芽させる為だと言ったが、やはり理解出来ていないようだ。





百姓たちの主食である雑穀などの栽培は、村人たちの判断に任せる事にした。

あくまで命令する時は重要なインフラ整備や農業整備のみだ。後は俺の生活を楽にするとき。



※※※※※


未だ幼少期の記憶しか思い出せない。

しかし、中学、高校で習ったことを知識としては知っている。

これはいったい、どういうことなんだろうか。

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