表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

Unexpected obey anyone to fight unexpected person.

忍びの者に調査させて出てきた名前が浅利勝頼かつよりだ。


生まれてからづっと茂季の直臣として仕えてきた武将で、あの浅利信頼の弟だ。

兄の信頼とは何かあるごとに比べられてきたようだ。


兄よりも熱く、しかし嫉妬心を隠せていない若い武将だ。

茂季からは何かと信頼せれており、安東領内においても重要な部門を任されている。


最近は安東が抱え込んでいた忍者のみならず、俺が預けた忍者も使って暗躍していたようだ。


先の戦いで、相手の足並みが揃わなかったのは彼の成果である。

近年、頭角を現してきており茂季にも彼の影響が強く出ている。


危険ではあるが、有用だ。



※※※※※



軍を和賀に向ける。

軍をいくつかに分け、一気に攻め上げる。



※※※※※




南部の軍が領内部まで押しかけてきた。


「相手が大軍なのは皆も既に知っておろう。 故に、城に籠っても意味は無い。 そこで本城は捨て、我らはここに布陣する」


 和賀 義忠よしただが指し示したのは、大川であった。和賀には大川と言うべきものはそこしかない。

最近は南部内部が揺れ、和賀が大きく侵略していたので、ここまで攻められることはなっていた。


「なるほど。そこならば兵力で落ちる我らにも、僅かですが勝機は有るかもしれません。自然に守られているがため、周囲は開けていて伏兵に気を回さなくて済みます。数の少ない分、不利ではありますが、戦には絶対はありません。どのような布陣をなさるのですか?」


「一世一大の大博打よ」


問い掛けに対して、にやりと笑みを浮かべつつ答えた義忠の言葉に広間に居る者達は皆考える。

やがて彼が指定した戦場の地形などを考慮した鬼柳氏が、驚きの表情を浮かべつつ一つの答えを導き出した。


「背水の陣」


ぼそっと呟いた。


 義忠は布陣する場所を指し示した際に、川を越えた場所を指し示さなかった。始めから背水の陣を引くつもりであったが故に、敢えてその場所を指示していたのだ。


「そうだ鬼柳。 狙うはただ一つ、敵将の首だ。幸いに敵将は当主自らが来る。彼を討てば必ずや混乱が起こるだろう」

「承知っ!」


 劣勢であるのは百も承知である。しかし、この広間に居る和賀家家臣は劣勢であるからこそ、覆くつがえしてみたいと思う。

 だからこそ彼らは、力強い了承を返したのである。 そんな彼らの力強い返事を聞いた義忠は、一瞬だけ笑みを浮かべる。 だがすぐに表情を引き締めると


「黒沢尻氏、江釣子氏の者達に、檄文を出せ!! 南部と雌雄を決する! 集合場所は大川だ!!」

「御意」


 それから数日も経たないうちに、将兵を率いて本城を出陣した義忠は軍議で言った通り大川を渡る事なく川を背に布陣する。 それから東山道を塞ぎ、大川で対陣せざるを得ない状況に持っていった。

 するとその日の夕刻頃から、義忠の檄文を受け取り行動を共にする事を決めた国人達が集り始める。 その二日後、ほぼ集まり切ったと判断した義忠は、有力家臣を集めて軍議を開いた。 


「檄文でも知らせたが、この一戦に全てを掛ける。 国力差故に、次は無いだろう。 この戦で敵大将の政実を討ち取る事が出来なければ、先など無い。 そう心得よ!」

「おう!!」


本陣の裏手から、蹄の音が轟いていた。

それは味方の発した音ではなかった。

浅利則頼に率いられた、南部勢の騎馬の音だったのだ。

和賀は大川を背にして、陣を敷いていた。

つまりは、川を壁とし、背後からの襲撃をあまり考慮に入れてなかったのだ。


「義忠様!お逃げなされませ!殿を務めまする!」


将官が慌てて、本陣に駆け込んで来もした。

本陣に動揺が走り始めた。


「まだだ。まだ戦ってすらいないのだ。ここで諦めることなど出来ぬ」


「ですが、ここで殿が討たれては」


「逃げようとも同じだ。《 戦わぬ将には誰も、誰も着いては来ぬ》 」


義忠は側近を集め、後ろに構える。


すると、新たに一人の武将が現れた。

彼は手に、見るも見事な剛槍を携えていた。


寺池てらいけ信針のぶはり、葛西、和賀、対南部同盟よりここに推参! 和賀殿、後ろは任されたし!」


寺池信針は旗衆を引き連れ、川の中を進んだ。

膝下まで水が掛かる程まで中に進む。

浅利則頼率いる三百騎あまりの騎馬武者。

土手沿いを土煙を舞い上がらせつつ、馬を走らせていた。


やがて、騎馬は土手を駆け下り始めた。

腕を掲げ、


「行くぞ!」


下ろした。


浅利則頼と寺池信針はぶつかった。


「我こそは浅利則頼!名乗れ。尋常に勝負致せよ」


見るも見事な剛槍が手できつく、扱かれていた。

彼は安東家のみならず、南部家の家中においても英雄じんがいに近き剛の者の一人であった。


寺池はそんな男の前に、歩いて現れた。


「我こそは寺池信針!先の戦、我らの将の敵、討たせてもらう」


浅利則頼は馬から降りる。


青貝螺鈿の剛槍を互いに向け合い

二人の槍、その鋭い切っ先が煌めき、交錯し始めた。



※※※※※



ついに和賀も落ち、

葛西は北と西から攻められた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ