表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌神と平凡と猫  作者: 千代
8/9

最終話 それは幸せか不幸か

あの日モノと出会った公園。あの日からうちの世界は変わった、もちろん良い方に。モノがうちを今のうちに変えてくれた。あ、幽霊にしてくれた的な意味じゃないからね!!


「モノ、ありがとう!」


急に口から出た言葉。自分自身でもびっくりした。心から出た気がする。


「ん?ど、どういたしましてです。」


モノは首をこてっと横に倒し、上目遣いで見つめてきた。こいつやりよる!!


夜中ということもあり、人がいない公園は静まり返っていて少し不気味だった。でも街から少し離れていて街灯に邪魔されず、星空が綺麗に輝いている。

この公園は大きな欅の木が中央に立っている。枝達、葉達の隙間からうっすらと人影が見える。いつものうちだったら気味悪がって逃げるであろうが、今日は何故か逃げず更には話しかけていた。


「綺麗な歌声ですね!」


人影はビクッと肩を揺らし、こちらを見た。すると、ふわりと地面に降りた。重力なんてその人にだけないみたいに。


「ほぅ、俺が見えるのか。て、お前もいたのか!」


お前?


「失礼ですね!居ちゃいけないんですか!!感動の再会的なシーンですよね?ね?」


口を開いたのはモノだった。え、まさかの知り合い的な?!まさかこの人も猫!!


「どう見ても人ですね。」

「いや、俺は神だ!」

「……中二病だ!自分の事を神とかwww」


神と名乗る人はうちの言葉が心に刺さったのか、ズーンっと効果音がつきそうなほど落ち込んでしまった。いや、でもさ急に自分から神とか名乗るなんて本物か中二病か変質者。


うちは神とか信じない主義なんで!!選択肢は2つに絞られたわけですよ!

ん、まてよ。まさか、中二病ではなく変質者!!まぁ、いくらうちが可愛いからと言ってもさ〜。


「「それはないんで!」」


まさかのハモリか!酷くね!?


「まぁ、それはおいといて。」


え、置いちゃうの?!うちのこと放置。やばい泣けてきた。


「小娘、お前はなぜ成仏しないんだ。」

「いやぁ、どこかのしゃべる猫にマイエンジェルを人質に取られたからかな!ね?モノ?」


うちがウルトラスマイルをモノに向けると冷や汗をかき口笛を吹き出した。嘘下手か!!


「お前のせいか…。神の使いだというのに何してるんだか。ガミガミガミガミ!!」


ガミガミうるせぇぇえええええ!

てか、ちょっと待て。神の使いって言った。このモノが!?神の使い?!待て待て、これは髪の使いとかいうギャグ的な聞き間違いのパターンかな?いや、そうじゃないとうちがずっと神の使いとかいう猫と暮らしてたことになるからね?なんか怖いわw


「神の使いですが何か?」


うちが見た中で一番のドヤ顔を決める神の使い。又の名をモノ。もういっそのことモノの使いでよくねwwもう意味わかんなすぎて笑えてくるw


「まぁ、てことで成仏しろ。」


強制的にですか。命令ですか。簡単に成仏出来ると思うなよ!成仏はマイエンジェルとの別れを意味する。それは決してあってはならないことだ。絶対に守るからねエンジェル達。


「ヒナ、コレクションは永久保存しといてあげますね!」


身体が半分消えました。早いって思ったそこのあなた!!人生は予想通りに行かないんです、しょうがない!

でも、残り半分は一向に数ミリも消えないんだよね…。成仏出来るなら一気に成仏したいし、半分先に行っちゃったうちの下半身を見た人はびっくりしすぎて腰抜かしちゃうかもしれないよ。カムバック下半身!うちのもとに帰ってこーーい!!




結論、無理でした。上半身だけの幽霊なっちゃったよ。あれだよね、心霊写真とかで偶然写っちゃった幽霊ってこんな感じじゃないかな。


「小娘、ほかに心残りでもあるのか。」

「心残りか…。強いて言えば、」


チラッとモノに視線を落とす。


「こいつはうちがいなくても平気かな?ってとこかな。」


すごく心配だった。じぶんが消えた世界はどんな風に回って、みんなはどんな風に













忘れていっちゃうのかな。って








ちょっと怖くなるんだ。そのうちみんなの記憶が薄れて、うちとの思い出とかうちの存在が消えちゃうんじゃないかって。

生きてる限り新しいことがたくさんあるから記憶はどんどん上書きされていく。

時が経つにつれて、うちの記憶に上書きされることだってあるだろう。

でもそれはしょうがないと思うしかなかった。どうせ変えることのできない事実。

ただモノは、モノとはすごくたくさんの思い出がある。モノにだけでも忘れないでいて欲しい。モノはうちがいなくなっても平気なのかな?って。自分勝手だよね。


「はぁ…、お前のせいか。」

「初知りです!!」

「まぁ俺の使いが原因ならば、責任は取らないとな。」


せきにん?なにこれ、嫁にもらってやる的な恋愛フラグ!!


バキッ


今なんかが折れた気がしたよ?フラグ折れちゃったの?さようならフラグ。


「小娘、お前は馬鹿だな。」


会って数十分で馬鹿って言われました!!自己ベストだあああ。


「てことで小娘、人間を捨てる覚悟はあるか?」

「はいっ!!」


………。みんなもあるよね、反射的に返事しちゃうこと。うん、あるある。それが実はとんでもないことだったりさw

人間捨てるって言ったよね?ニホンゴワカリマセン。


「そうか、では始めよう。」


〜♪


身体がふわっとなる浮遊感に襲われる。まるで魂だけを攫われるかのような…。

はい、そこ!!魂だけしかないじゃんとかつっこんじゃダメだよ。今、いい感じのシーンだよ!シーッ!!


しばらくすると歌が終わった。歌自体はいい歌だったし、鳥肌が立った。ただうちの視界が低くなっていることを誰かに説明してもらいたいです。


「説明してあげましょう!ひなは成仏する必要がなくなりました!」


は?何言ってるの?


「猫になりました!」


「へ?はああああああああああ!!!うち人間だよ。アイアムヒューマン。」


うちが叫ぶのを見ると、モノと自称神はお互い目を合わせ肩をすくめた。神はうちの前に手鏡を出した。

そこに映るのは緑の目をした真っ白な猫。驚きを隠せなかったうちは鏡に手を伸ばした、がすぐに手を引っ込めた。見えてしまったから。人間の手でもなく、幽霊の手でもなく、真っ白な毛に包まれた小さな手が。


「これで問題解決♪」


「ひなも神の使いになれたんですよ!よかったですね!」


もうダメ、ツッコミ追いつかない。誰か助けて。


「「ようこそ!!こちらの世界へ!」」


どうやら、始めから道を間違えていたみたいです。

これが日常から非日常への物語




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ、終わった〜!疲れた〜!!」


投稿ボタンをクリックし、仕事を終えた。グッと腕をあげ伸びをする。


「ニャー」


私の足に頬をこすり付ける黒い飼い猫。

撫でてくれとでも訴えるような視線を送られた。


「モノも登場させてやったぞ!

……モノが喋れたらこんな感じの非日常になったかもね!なーんてねw」


お望み通り頭を少し乱暴に撫でてあげた。気持ち良さそうに目を細め、頭を手に押し付けてくる。

しかし急に気が変わったのかクルッと体を翻し部屋から出ていってしまった。



「……そのまさかですよ。」


黒猫のつぶやきは聞こえない。




ーーーーーーーーendーーーーーーーーー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ