四コマ漫画『ある紳士の自殺』
四つ目のコマ
外。天気は晴れ。
芝生を乗せた小さな盛り土の上に〈R.I.P〉と刻印された墓石が刺さっている。
墓石は少し薄めの石の板で、上端が丸い。そこに一羽のカラスが止まっていて、表情のない丸い目をしていて、こちらを見ている。その丸い黒目の右の半ばには大昔のカートゥーンで描かれるときに見える鋭角の切れ目が入っている。
遠景に小さな教会が見える。空には小さな太陽がかかっていて、mに似た形で描かれた羽ばたく鳥が三羽、空の半ばに飛んでいる。
三つ目のコマ
細面の紳士がベッドに座り(ベッドはコマ内の右に向かっておかれていて、ヘッドボードはコマの外である)、ピストルを自分のこめかみに突きつけて引き金を引こうとしている。
手には空っぽのグラス。
紳士はタキシードをひどく着崩している。取り外し可能な襟が首から外れかけてぶら下がり、シャツには皺が寄っている。蝶ネクタイは見当たらないが、靴が二足、ベッドの上に放り出されていて、紳士の履いている靴下の右のかかとに継ぎはぎがしてあった、この継ぎはぎだけが黄色い着色をされている。
コマの左側には小さなナイトテーブルがあり、遺書らしき封筒と七割がた飲まれたウィスキーの瓶が置いてある。
紳士の表情は目、鼻、口が中央へと戯画的に寄っていて、これはカートゥーンの技巧では渋面をつくっているとみなされるものである。これにより紳士は耐え難い不満があって自殺することが示されている。
紳士の左上に吹き出し――『なんてうるさい音なんだ!』
二つ目のコマ
三コマ目と同じ部屋だが、ベッドもテーブルもきちんときれいに片付いている。
三コマ目で自殺しようとしていた紳士がベッドとテーブルのあいだで立っていて、きちんとしたタキシード姿でポケットに左手を突っ込んでいて、もう右手で懐中時計を持っている。
おそらく時間を見るつもりだったのだろうが、何か気になることがあって、文字盤を見ず、天井、すなわちコマの上、一コマ目と二コマ目を区切る軸をいらついた表情でにらんでいる。
紳士のにらむ視線の延長線上に吹き出し――『今日もやかましい音をたてている』
一つ目のコマ
屋根裏部屋。暗い。
暗さは神経質に何千本も書き加えられた黒い線でつくられている。
屋根裏のつくりも家具もほとんどがこの線のために見えない。
部屋の中央に首を吊った女。女は赤いドレスを着ている(このコマで唯一の着色である)。裸足。
顔の前に黒く長い髪が垂れていて表情は見えない。
ただ、ひとつ、目だけが見える。表情のない丸い目をしていて、こちらを見ている。
その丸い黒目の右の半ばには大昔のカートゥーンで描かれるときに見える鋭角の切れ目が入っている。




