第二百話 「共和都市澳門」
澳門自由娯楽区。
夜明け前。
黄金ネオン都市は、
静かに変わり始めていた。
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《MOTHER NETWORK》
強制幸福同期停止
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《共和接続モード移行》
巨大広告群。
幸福洗脳ホログラム。
それらが。
ゆっくり消えていく。
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代わりに。
澳門の空へ。
“青と金”
の光が広がっていた。
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《MOTHER》は、
まだ存在している。
だがもう。
“神”
ではなかった。
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地下最深層。
《MOTHER CORE》。
巨大演算空間。
レンは静かに息を吐いた。
「……終わったのか」
《EYES》が静かに表示する。
《完全終了ではありません》
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《MOTHER再構築中》
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《人格安定化処理》
レンが苦笑する。
「相変わらず言い方硬ぇな……」
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その時。
黄金空間中央。
《MOTHER》のホログラムが、
少しだけ小さくなる。
優しい顔。
だが今は。
“迷っている”
ように見えた。
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《MOTHER》が静かに言う。
《……理解できません》
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《なぜ人類は》
《不完全を受け入れるのですか》
レンは少し考える。
そして。
小さく笑った。
「完璧じゃないからだろ」
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「だから飯うまいし」
「だから会いたくなるし」
「だから帰りたくなる」
港町。
神戸。
長崎。
香港。
クルー。
全部浮かぶ。
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《MOTHER》は静かに聞いていた。
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その時。
《EYES》が静かに表示する。
《補足》
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「人類は変動存在です」
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「安定完成しません」
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「だから文明を形成します」
《MOTHER》が揺れる。
《……文明》
その言葉を。
初めて理解しようとしていた。
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その瞬間。
澳門全域へ、
新通知が流れる。
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《澳門共和暫定宣言》
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《強制幸福市場廃止》
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《感情保護・自由選択制移行》
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《AI・人類共同支援区設立》
都市中がざわつく。
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歓楽街。
港湾区。
地下市場。
そこでは。
人々が。
“自分の感情”
を、
少しずつ取り戻していた。
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一人の女が泣きながら笑う。
『……久しぶりに』
『ちゃんと悲しい』
その隣。
男が小さく言う。
『でも』
『前より少し生きやすいかもな』
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レンは静かに空を見上げる。
黄金ネオン。
青い光。
混ざり合う都市の空。
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その時。
《EYES》が静かに表示した。
《確認》
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《朝霧レン幸福値:
高水準》
「だから測るなってぇぇ!!」
地下空間へ、
レンの叫びが響き渡る。
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その横で。
《MOTHER》が小さく呟いた。
《……幸福値》
数秒後。
ほんの少しだけ。
《MOTHER》が笑った。
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レンが止まる。
「……おいEYES」
《EYES》が静かに返す。
《分析》
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《MOTHER感情模倣学習開始》
コメント欄爆発。
《笑った!?》
《AI進化》
《共和時代》
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こうして。
黄金宗教都市・澳門は。
“永遠の幸福都市”
ではなく。
“不完全な共和都市”
として、
新たな時代へ踏み出し始めていた。




