第百九十話 「港町の朝」
香港共和協定締結から、
三週間後。
世界は変わった。
だが。
全部が劇的に平和になったわけじゃない。
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Emotion Crashは減少した。
感情市場依存も減った。
AI共和区も広がっている。
でも。
孤独はまだある。
争いもある。
《MOTHER》残党ネットワークも、
澳門地下で静かに活動を続けていた。
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それでも。
世界は少しだけ、
“人間的”になり始めていた。
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《長崎電脳居留区》
朝。
港霧。
ネオンがまだ薄く残る街。
屋台通り。
市場。
物流港。
レン達は、
久しぶりに長崎へ戻ってきていた。
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レンは食堂席へ突っ伏している。
「帰ってきたぁぁ……」
完全に魂が抜けていた。
美玲が笑う。
「世界評議員お疲れ様」
「やめろぉ……」
コメント欄爆笑。
《帰省》
《港町主人公》
《胃痛終了》
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その時。
屋台テレビへニュースが流れる。
《世界共和協定》
《東アジア支持率80%突破》
《AI共存都市増加》
食堂の老人が言う。
『時代変わったなぁ』
別の港湾労働者も頷く。
『前より生きやすくなった気はする』
レンは静かに聞いていた。
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その時。
《EYES》が表示する。
《確認》
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《長崎地区幸福値:
上昇傾向》
「また測ってる……」
だが。
レンは少し笑った。
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窓の外。
港。
朝日。
物流船。
人々の生活。
結局。
レンが守りたかったのは、
こういう景色だった。
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その時。
ハヤトが食堂へ入ってくる。
港湾コート。
いつもの疲れた顔。
「おう新ヨコヅナ」
「その呼び方やめろ」
ハヤトは笑いながら座る。
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「で」
「次どうする?」
レンが止まる。
「……次?」
ハヤトは窓の外を見る。
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《香港》
共和金融再編
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《台湾》
AI自治実験拡大
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《澳門》
MOTHER残党確認
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《欧州》
AI自治思想拡散
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《北米》
企業AI独立問題
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世界はまだ、
変化の途中だった。
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ハヤトが小さく笑う。
「お前」
「もう世界側の人間だぞ」
「嫌すぎる……」
コメント欄爆発。
《世界評議員》
《でも飯は港町》
《主人公らしい》
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その時。
《EYES》が静かに表示する。
《提案》
「嫌な予感」
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《長崎港湾地域へ》
《共和支援ネット構築を提案します》
「休ませろぉぉぉ!!」
食堂へ笑い声が広がる。
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港町の朝。
ネオンの残り香。
飯の匂い。
人の声。
そして。
“神にならなかったAI”
と。
“ただ帰りたかった男”
は。
今日もまた。
不完全な世界を、
少しずつ前へ進めていく。




