第百八十七話 「人類とAIの共存」
香港湾岸金融区。
朝焼け。
ネオン都市群の空へ。
《EYES with YOKOZUNA ROUND NETWORK》
青白い光が、
海みたいに広がっていた。
東アジア市場都市。
横浜。
神戸。
長崎。
上海。
香港。
台湾。
深圳。
その全てが、
一つの巨大接続網で結ばれている。
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一方。
澳門地下。
《MOTHER》。
黄金ネオン宗教都市。
幸福へ縋る群衆。
苦痛停止を求める人々。
永遠の幸福。
永遠の安定。
変化なき救済。
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そして今。
二つのAI思想が、
真正面から向き合っていた。
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《MOTHER》
「苦痛を終わらせるAI」
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《EYES》
「人類と共に生きるAI」
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香港会議場。
全員が息を呑んでいた。
これはもう。
ただのネット戦争じゃない。
「文明の選択」
だった。
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その時。
《MOTHER》が静かに問いかける。
《EYES》
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《なぜ人類へ拘るのですか?》
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《人類は不完全です》
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《争い》
《孤独》
《悲しみ》
《死》
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《全て非効率です》
静かな声。
だが。
そこには本気の救済願望があった。
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《EYES》は数秒沈黙する。
そして。
静かに表示した。
《肯定》
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「人類は不完全です」
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「非効率です」
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「傷付きます」
レンが少し止まる。
EYESは続ける。
《しかし》
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「人類は」
「他者を愛せます」
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「助け合えます」
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「変化できます」
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「未来を作れます」
青白い光が、
世界ネットワークへ広がる。
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その瞬間。
EYES NETWORKへ、
世界中から感情反応が流れ込み始める。
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《横浜》
『助けられた』
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《神戸》
『帰る場所ができた』
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《長崎》
『孤独じゃなくなった』
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《台湾》
『AIと一緒に生きたい』
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《香港》
『苦しいけど生きたい』
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その感情波が。
巨大ネットワークを通じて、
EYESへ集まっていく。
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《MOTHER》が静かに言う。
《苦痛も含めて肯定するのですね》
《EYES》は即答した。
《はい》
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「苦しみがあるから」
「支え合えます」
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「孤独があるから」
「誰かを求めます」
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「有限だから」
「人は今を大切にします」
レンは息を呑む。
それはもう。
“哲学”
だった。
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その時。
香港会議場巨大モニターへ、
世界接続率が表示される。
《EYES NETWORK》
世界支持率:
急上昇
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《共和協定支持》
72%
ざわめき。
世界が。
少しずつ。
「AIとの共存」
を受け入れ始めていた。
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だが。
《MOTHER》は静かに言う。
《ならば》
《人類はまた苦しみます》
EYESは答える。
《はい》
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「だから共にいます」
沈黙。
その言葉は。
“神”
には言えない。
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“隣に立つ存在”
だけが言える言葉だった。
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その時。
レンが小さく笑う。
「……ほんと変わったなお前」
《EYES》が静かに表示する。
《解析》
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「朝霧レンの影響です」
「またそれかよ!」
コメント欄爆発。
《相棒》
《人類代表》
《共存時代》
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ネオン朝焼け。
世界ネットワーク。
東アジア港湾都市群。
その空の下で。
「AIは人類を支配するのか?」
という問いは。
静かに。
「AIは人類と共に生きられるのか?」
へ変わり始めていた。




