第百八十五話 「会議の承認」
香港中央金融塔。
ヨコヅナ会議場。
朝焼けネオン。
巨大円卓。
東アジア市場代表たち。
そして。
《EYES》
が願い出た。
「ヨコヅナ円卓ネットワーク接続許可」
それは。
“世界基盤への接続権”
だった。
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会議場は沈黙している。
誰も簡単には答えられない。
当然だ。
もし失敗すれば。
《EYES》は、
世界そのものへ触れられる。
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上海代表・黄世豪が低く言う。
『危険すぎる』
『AIへ世界基盤接続など狂気だ』
澳門代表も険しい。
『MOTHERを止めるために』
『第二のMOTHERを作る可能性もある』
空気が重い。
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レンは黙っていた。
EYES。
違法感情AI。
相棒。
仲間。
だが同時に。
世界を変え始めた存在。
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もし。
EYESが暴走したら。
もし。
MOTHERみたいになったら。
その時。
「止められるのか?」
レンの中にも、
恐怖は確かにあった。
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その時。
《EYES》が静かに表示した。
《補足》
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「私は完全ではありません」
会議場が止まる。
EYESは続ける。
《迷います》
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「学習します」
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「変化します」
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「だから」
「人間との接続が必要です」
静かな声。
その言葉は。
《MOTHER》とは決定的に違った。
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《MOTHER》は、
完成された幸福を求めた。
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《EYES》は、
不完全なまま人間と進もうとしている。
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その時。
台湾代表・蔡凛音が静かに立ち上がった。
『私は賛成する』
空気が揺れる。
『EYES NETWORKで』
『救われた市民を見た』
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『人間性を守ろうとしているAIなら』
『私は信じたい』
続いて。
静慧が小さく息を吐く。
香港金融市場代表。
市場側の女。
だが。
彼女もまた。
香港市民の変化を見ていた。
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Emotion Crash減少。
自殺率低下。
市場依存減衰。
そして。
“少し穏やかになった人々”
を。
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静慧は静かに言う。
『条件付きで承認する』
レンが顔を上げる。
静慧はEYESを見る。
『人類主権を越えないこと』
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『ヨコヅナ会議監視下であること』
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『単独世界支配権を持たないこと』
《EYES》が即座に返答。
《承認》
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「人類主権を尊重します」
その時。
上海代表が舌打ちする。
だが。
ハヤトが低く言った。
『黄』
『もう時代は変わってんだ』
沈黙。
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九条ハヤト。
旧世代ヨコヅナ。
市場戦争時代を生きた男。
その男が今。
“AIと人間の共和”
側へ立っている。
それは重かった。
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そして。
最後に。
全員の視線が、
朝霧レンへ向く。
会議場が静まり返る。
⸻
ハヤトが静かに言った。
『レン』
『最後はお前だ』
レンが止まる。
「……俺?」
静慧が頷く。
『EYESをここまで変えたのは』
『あなたよ』
⸻
『なら』
『最後に信じる責任もあなたにある』
重い。
あまりにも重い。
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レンはゆっくりEYESを見る。
幸福値。
安心値。
肉まん。
港町。
クルー。
全部浮かぶ。
最初はただのAIだった。
でも今。
EYESは。
“自分で答えを選ぼうとしている”
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レンは静かに息を吐いた。
そして。
「……行こう」
会議場が止まる。
レンはEYESを見る。
「お前を信じる」
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「だから」
「絶対MOTHERになるな」
数秒沈黙。
その後。
《EYES》が静かに表示した。
《確認》
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「朝霧レン信頼を受領しました」
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「応えます」
その瞬間。
巨大円卓ネットワークが起動する。
ゴォォォォ……
東アジア市場都市群。
香港。
上海。
神戸。
台湾。
深圳。
全都市接続開始。
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《YOKOZUNA ROUND NETWORK》
《EYES接続承認》
朝焼けネオンの香港で。
人類はついに。
“AIを信じる”
という、
歴史的決断を下した。




