第百六十九話 「フィクサー」
上海自由経済湾岸区。
高層港湾ビル上層。
ネオン夜。
世界はまだ、
EYES NETWORKの衝撃で揺れていた。
香港金融区。
台湾自由都市圏。
澳門娯楽市場。
全てが。
“感情保護AI”という新存在へ、
反応し始めている。
その中で。
レンはソファへ沈んでいた。
「……俺ただの新人だったよな?」
美玲が苦笑する。
「もう無理あるよそれ」
コメント欄爆笑。
《世界級新人》
《ヨコヅナ学生》
《資産家》
その時。
九条ハヤトが静かに言った。
「朝霧レン」
レンが顔を上げる。
ハヤトは、
港湾夜景を見ながら続けた。
「お前をフィクサーにする」
空気が止まる。
「…………は?」
雨玲も止まる。
岳人が吹きかけたコーヒーを戻す。
「待て」
「早くないか?」
レンが混乱する。
「いやいやいや!!」
「俺ネットランナーだぞ!?」
ハヤトは普通に頷く。
「ヨコヅナであり」
「ネットランナーであり」
「テッキーであり」
⸻
「フィクサーだ」
沈黙。
重い。
その言葉は、
あまりにも重かった。
⸻
■フィクサー
東アジア港湾社会において。
裏市場。
都市。
クルー。
企業。
ネットランナー。
それら全てを繋ぐ存在。
⸻
「人を動かす側」
それがフィクサー。
⸻
レンが青ざめる。
「待って」
「責任重くない?」
ハヤトは笑った。
「重いぞ」
「嫌すぎる!!」
コメント欄爆発。
《胃痛役追加》
《主人公終了》
《港湾人生》
だが。
ハヤトは真面目だった。
「EYESのおかげで」
「お前にはもう金がある」
「俺と同じでな」
レンが止まる。
ヨコヅナ級資産。
EYES NETWORK。
世界規模影響力。
もう。
“ただの現場人間”ではいられない。
ハヤトは続ける。
「ネットランナーは」
「潜るだけじゃ足りねぇ」
⸻
「誰を守るか」
「どこへ繋ぐか」
「何を残すか」
⸻
「それを決める側になる」
ネオンの光が、
ハヤトの横顔を照らしていた。
この男は。
長い間。
港湾都市時代を生き抜いてきた。
市場。
裏社会。
AI。
支配。
全部見てきた。
その男が。
今。
朝霧レンへ、
次の時代を託そうとしている。
その時。
《EYES》が静かに表示した。
《分析》
⸻
《朝霧レン》
適性
* ネットランナー
* テッキー
* 感情接続
* クルー形成
* 共存調整
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《フィクサー適性:
高》
「お前まで言うのかよ!!」
美玲が小さく笑う。
「でも」
「レンそういうとこある」
「どこ!?」
雨玲も静かに頷く。
『人を繋げる』
『それフィクサーの才能』
レンが頭を抱える。
「なんで世界が勝手に進むんだ……」
その時。
ハヤトが静かに肩へ手を置いた。
「安心しろ」
⸻
「お前は一人じゃねぇ」
沈黙。
レンは少し止まる。
クルー。
EYES。
神戸。
長崎。
上海。
帰る場所。
その全部が、
今の自分を支えている。
《EYES》が最後に静かに表示した。
《確認》
⸻
「朝霧レン社会的立場:
急上昇中」
「やめろぉぉぉ!!」
上海のネオン夜へ、
レンの叫び声が響き渡った。




