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『NEO横浜電脳租界 〜違法感情AIと美少女配信者〜』  作者: 神代零


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第百五話 「海上ドライブ」

 神戸湾岸自由区・深夜。


 海上高速道路。


 ネオンライトが、

 黒い海面へ反射している。


 その上を。


 一台の大型ノーマッドカーが走っていた。


 改造物流車。


 違法通信アンテナ。


 電波妨害装置。


 完全にハヤト仕様。


 運転席で、

 九条ハヤトが片手運転している。


「神戸来たら」


「夜の湾岸ドライブは基本だ」


「観光ガイドみたいに言うな」


 レンが呆れる。


 コメント欄爆笑。


《また平和回》

《湾岸ドライブいい》

《サイバーパンク青春》


 後部座席。


 美玲は窓の外を見ていた。


 ネオン海。


 貨物船。


 巨大広告。


 赤い瞳へ、

 光が流れていく。


「……すごい」


 その声は、

 少しだけ子供っぽかった。


 レンは少し笑う。


「そんな珍しいか?」


「こういう風に」


「みんなで出かけるの初めて」


 レンは言葉を失う。


 そうか。


 美玲は。


 配信者で。


 財閥令嬢で。


 被験体で。


 世界に見られ続けてきた。


 でも。


 “普通に遊ぶ”ことは、

 少なかったのかもしれない。


 その時。


 ハヤトが笑う。


「青春取り戻しツアーだからな」


「勝手にツアー化するな」


 藍華も窓際で笑っていた。


 黒犬は助手席。


 何故か普通に馴染んでいる。


 その時。


 《MAY-LIN LIVE》通知。


《神戸湾岸ドライブ切り抜き》


世界トレンド1位


「また!?」


 レンが頭を抱える。


「なんでドライブで世界一になるんだよ!」


 《EYES》が解析。


《視聴者感情分析》


* 安心

* 癒やし

* 疑似青春感

* クルー帰属欲求



『Emotion Crash抑制効果確認』


 レンは少し止まる。


「……え?」


 美玲も画面を見る。


 《EYES》は続けた。


《MAY-LIN LIVE》


“感情安定型配信”へ変化傾向


 ハヤトが少し真面目になる。


「なるほどな」


 レンが聞く。


「何が?」


「今までは」


「熱狂型だった」


 ネオンが車内を流れる。


「でも今のMAY-LINは」


「人を落ち着かせ始めてる」


 沈黙。


 レンは少し考える。


 飯。


 風呂。


 夜景。


 ドライブ。


 ただの日常。


 でも。


 それが。


 この時代には、

 足りなかったのかもしれない。


 その時。


 美玲が小さく笑った。


「……みんなでいると安心する」


 レンは少し照れる。


「お前」


「最近素直すぎるだろ」


「ダメ?」


 赤い瞳が真っ直ぐ向く。


 レンは数秒止まる。


「……ダメじゃない」


 コメント欄爆発。


《付き合え》

《青春してる》

《神戸編好きすぎる》


 海上高速道路。


 ネオン都市。


 狂った2092年の世界で。


 クルーたちは、

 少しずつ“居場所”を作り始めていた。

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