第三話
放課後の空気は熱気を帯び、あちこちのフィールドで召喚光が瞬いていた。 その中心の一つで、悠と真也が向かい合う。フィールド中央のホログラムが二人の名前を表示し、開始カウントがゆっくりと浮かび上がる。
「よし、悠。今日こそ一勝もらうからな」
真也が自信満々に笑う。悠は肩をすくめ、いつもの調子で返した。
「はいはい。じゃあ、軽く相手するよ」
「その余裕がムカつくんだよな!」
二人のリングデバイスが同時に光を放つ。
「行け、フロワラー!」 「頼む! ストライガー!」
悠の前に、氷の粒子が渦を巻き、白銀の狼・フロワラーが姿を現す。冷気をまとい、吐息すら白く、鋭い眼光で前方を睨む。真也の召喚光から現れたのは、虎型リンクス・ストライガー。筋肉の収縮が見えるほどしなやかな体躯、爪先には微弱な電気が走り、地面を焦がすほどのスピードを秘めている。
観戦していた学生たちがざわつく。
「お、またあの二人か」 「シルバー上位同士のバトルは見応えあるよな」
二人の準備が整い、カウントが始まる。
《3》
《2》
《1》
《START》
開始の合図と同時に、ストライガーが地を蹴った。
「ストライガー、スラッシュ!」
黄色い残光を引きながら、一直線にフロワラーへ突っ込む。その速度は風を裂き、観客席の髪が揺れるほど。悠は落ち着いた声で指示を出す。
「フロワラー、避けろ。からのフロストバイト」
フロワラーは氷の粒子を散らしながら横へ跳び、ストライガーの爪撃を紙一重で回避。そのまま口元に冷気を集め、青白い氷牙の弾丸を放つ。
「くっ、速い……! ストライガー、よけろ!」
ストライガーは身をひねって攻撃をかわすが、毛並みに霜がつき、動きがわずかに鈍った。
「やっぱりフロワラーは厄介だな……!」
真也が歯を食いしばる。悠はリングデバイスを軽く回しながら言った。
「真也、焦りすぎ。ストライガーの良さはスピードでしょ?」
「言われなくても分かってるって!」
ストライガーがフィールドを縦横無尽に駆ける。その動きは残像すら残さず、観客の目では追いきれない。フロワラーは冷気をまとい、相手の軌道を読みながら反撃のタイミングを探る。氷の軌跡と黄色い残光が交差し、観客席から歓声が上がった。
真也が叫ぶ。
「ストライガー、ライトニングダッシュ!」
ストライガーの体が一瞬だけ光を帯び、速度がさらに跳ね上がる。地面を蹴るたびに火花が散り、空気が震えた。悠は小さく息をついた。
「ならこっちは……フロワラー、アイスブレイク」
フロワラーの足元から冷気が爆発し、周囲の温度が一気に下がる。氷の破片が舞い、ストライガーの進路を塞いだ。
「うおっ、道が……!」
真也が驚く。それで指示を出せていないところを狙い、悠はすぐさま次の指示を出す。
「――氷牙」
フロワラーが氷の上を滑るように加速し、ストライガーの背後へ回り込む。そのまま、氷牙の一撃がストライガーの肩に命中した。
ストライガーはよろめき態勢を崩しかけるが、ストライガーはまだ倒れない。鋭い眼光を保ったまま、低く唸り声を上げて踏みとどまる。
「ストライガー!」
「……ガウ!」
真也の声に大きく吠える。
「ストライガー、まだいけるよな!」
「ガウッ!」
その返事は力強かった。悠はフロワラーの様子を確認しながら、静かに息を整える。
「……さすがにタフだね。なら......」
フロワラーの足元に冷気が集まり、白い霧が広がる。観客たちが息を呑む。
「フロワラー、フロストエッジ」
狼の体表に氷の刃が形成され、毛並みが鋭い光を帯びる。真也は歯を食いしばり、すぐに指示を飛ばした。
「ストライガー、スピード上げろ! ライトニングステップ!」
ストライガーの体が電光をまとい、瞬間的に視界から消える。次の瞬間、フロワラーの背後に回り込んでいた。
「そこだ、スラッシュ!」
電撃を帯びた爪が振り下ろされる。しかし、悠は即座に反応した。
「フロワラー、アイスシールド!」
フロワラーの周囲に氷の壁が瞬時に形成され、ストライガーの爪撃を受け止める。火花と氷片が飛び散り、フィールドが一瞬白く染まった。氷壁が砕け散り、ストライガーが後方へ跳ね飛ばされる。しかし着地は完璧だった。
真也は息を荒げながらも、笑っていた。
「ははっ……やっぱ悠は強えな。でも、負けねえぞ!」
悠もわずかに口元を緩める。
「こっちこそ負けないよ。じゃあ、そろそろ終わらせよう!」
フロワラーの体から冷気が噴き上がり、フィールド全体が薄い霜に覆われていく。観客たちがざわつく。フィールド全体の温度が下がり、地面が所々凍り始める。真也はストライガーを見つめ、静かに言った。
「ストライガー……最後まで走り抜けるぞ」
ストライガーは低く唸り、地面を蹴る準備をする。悠が腕を上げる。
「フロワラー――フロストハウル」
フロワラーが天に向かって吠えた。その瞬間、冷気の波動がフィールド全体に広がり、氷の結晶が舞い散る。視界が白く染まり、観客たちが思わず身をすくめるほどの冷気が吹き荒れた。
真也は叫ぶ。
「ストライガー、突っ切れ! ライトニングダッシュ!!」
ストライガーの体が雷光に包まれ、氷の嵐の中へ飛び込んでいく。氷片を弾き飛ばしながら、一直線にフロワラーへ向かう。
「ガアアアッ!!」
フロワラーも迎え撃つように前へ踏み出す。氷の刃が輝き、冷気が渦を巻く。二体の軌跡が交差した瞬間――轟音がフィールドを揺らした。
氷と雷がぶつかり合い、光の爆発が起きる。観客席から悲鳴と歓声が入り混じった声が上がる。視界が白く染まり、しばらく何も見えない。やがて、霧がゆっくりと晴れていくとフィールド中央には、フロワラーとストライガーが、互いに向かい合ったまま静止していた。どちらも息が荒く、体には傷が刻まれている。真也は息をのんで見守っている。
「……ストライガー……?」
「……」
僅かな沈黙の後、ストライガーは倒れ伏し、光の粒子となってデバイスへ戻った。
《ストライガー、戦闘不能》
フィールドのホログラムが結果を表示する。
「……っはぁぁぁぁ……負けた……!」
真也がその場にへたり込む。悠はフロワラーの頭を軽く撫でながら言う。
「いい勝負だったよ。ストライガーは本当に厄介だね」
「お前は強すぎるんだよ……!」
リナが拍手しながら近づいてきた。
「二人ともすごかったよ。見てて楽しかった!」
悠は少し照れたように笑った。
「じゃあ、次はリナの番かな?」
「えっ、わ、私⁉」
技名は適当です




