表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/45

確認

「……はぁっ!」


一瞬で理解した。

俺は、また死んだようだ……なぜなら――


「優くん! 今日の晩ご飯、お祝いで外食とかどう?

あれ? 優くん? どうしたの……額の汗、すごいよ……大丈夫?」


百合が目の前で心配してくれている。

だが、百合の姿も言葉も、今の俺には届かなかった。


百合の姿は、ウィンドウに隠れて見えていなかった。


『貴方は死にました』

『制限時間:1,689,322,001秒』


これを見るたびに、俺は自分の死を深く実感する……。


そして、俺の手には黒い手帳が握られている。

俺はその場から動けなかった。


「優くん!」


百合がウィンドウを通り抜け、俺の肩に手をかけた。


「ほんとうに大丈夫なの……?」


百合は心配そうな表情を浮かべていた。


俺は大きく息を吐いた。


「ふぅ……あ、あぁ、大丈夫だよ……

ご飯の話だっけ? ……みんなで行こうか」


気持ちを切り替える。

さっきとは行動を変えるため、教室には行かず、百合と一緒に行動することにした。


だが


「やっぱり今日は無し!!!

私がお父さんとおばさんに言っとくから!

優くんは家で休もう!」


百合は本気で心配しているのだろう。

その気持ちが、痛いほど伝わってきた。


「わかったよ……じゃあ帰るな。

今日はありがとうな、百合」


こうして俺たちは外食をせず、それぞれ家に帰ることになった。



家に帰ると、父さんがリビングの椅子に座り、新聞を読んでいた。


「父さん、ただいま……。

なんとか体育祭、優勝できたよ!」


「優……頑張ったな。

だが顔色が少し悪い。今日はもう、ゆっくり休みなさい」


俺の不調に、すぐ気づいたようだった。


リビングに入ると、この空間がたまらなく温かい。

手帳によれば、この家は“安全地帯”らしい。


父さんや母さんが安全だと思うと……

胸の奥が、ほっと緩んだ。


晩ご飯を家族と食べ終え、風呂も済ませた後、

俺は自分の部屋へ戻った。


机の上に置いた黒い手帳を、もう一度読み返す。


『黒色は危険であり、脅威だ』

『この世界にとって、黒はイレギュラーな存在である』

『だが、感覚として近しい何かを感じるだろう』

『自分の家が、一番安全な場所である』

『害意のあるものは、入ってこられない』


この文章だけが書かれ、他のページはすべて空白だった。


モヤ……あいつの目的がわからない。

そして、俺を刺した存在……視界を奪われ、姿を確認できなかった。


わからないことはいったん置いておく事にした。

俺はウィンドウを開く。


『追加クエスト:体育祭で優勝する』

クエスト完了


『報酬:記憶のかけらを受け取りますか?』


やはり、報酬は家の中で受け取るべきなのだろう。

手帳の内容が、それを示しているし。


『報酬:記憶のかけらを受け取りますか?』


「受け取る」


『記憶のかけらを手に入れました』

『記憶のかけらを入手した事により、同期を開始します』


俺はベッドの上で、再び意識が薄れていった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ