体育祭5
最後の直線。
俺は歯を食いしばり、限界を超えて足を動かした。
前の背中が、ぐっと近づく。
――抜いた。
ゴールテープが視界いっぱいに広がり、
次の瞬間、俺は一位でラインを踏み抜いていた。
「ゴーーーール! Aクラス、逆転一位だー!!!」
アナウンスがグラウンドに響き渡った。
俺はそのまま地面に座り込み、すぐに薔薇崎のもとへ向かった。
「ほら、俺の背中に乗れ。保健室まで担いでやる」
薔薇崎は、まだ涙を流していた。
俺はそんな彼女を背負い、背中越しに声をかける。
「言っただろ? お前のせいじゃない。お前のせいには、絶対しない」
保健室に着き、椅子に薔薇崎を座らせる。
「……ありがとうございます。心からのお礼を……」
「だったら喜ぼう。俺へのお礼は――笑うんだ」
少し恥ずかしい言葉を口にしてしまったと思い、照れながら笑顔を向ける。
「ええ……」
薔薇崎はそう言って、俺に微笑み返してくれた。
彼女の胸元の薔薇の花弁が、また一つ赤く染まる。
――俺への好感度が上がったらしい。
どうやら薔薇崎は、小っ恥ずかしいセリフが嫌いではないようだ。
そんな情報を胸に刻み、俺は保健室を後にした。
廊下を歩いていると、薔薇崎の父親と母親とすれ違った。
軽く会釈を交わし、そのまま通り過ぎる。
保健室へ向かっているのだろう。
少しでも薔薇崎が、家族と安静に過ごせればいい――そう思いながら、俺はグラウンドへ戻った。
ちょうど順位発表が始まっていた。
「一年生! 総合優勝! Aクラス! おめでとうございます!!」
歓声が上がる中、ウィンドウが視界に現れる。
『追加クエスト:体育祭で優勝する』
クエスト完了
『報酬:記憶のかけらを受け取りますか?』
色々あったが、なんとか追加クエストも完了できたらしい。
俺はそっと胸を撫で下ろした――その時。
「優くん! 私たち優勝だよー!!!」
突然、肩を掴まれる。百合だった。
体育祭が終わっても、その元気は変わらない。
「みんな本当にすごかったね! 薔薇崎さんにも、あとで一緒に報告しよう!」
「薔薇崎は、今は家族と一緒にいる。また今度な」
そう伝えると、百合は素直にうなずいた。
その後、秋や菫とも少し言葉を交わし、
俺たちは家族とともに、帰りの支度をした。




