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玄関
下に降りると、ご飯を食べている、久しぶりに見る父親がいた。
若い頃の父さんの顔がそこにあった。
「父さん…おはよう」
そう話しかけると、
「母さんがご飯を作ってくれている。冷める前に早く食べなさい」
変わらない声で返事をしてくれた。
「いただきます」
「ごちそうさまでした」
家族でご飯を食うことはもうないと思っていたが、なんだか温かい気持ちになれた。
「ご飯を食べ終わったから、もう行くね」
そう言い残し、俺は玄関へ向かった。
玄関を開けると、一人の女の子が家の外に立っていた。
俺はその子を見たことがあった。
彼女はこのゲームのヒロインで、主人公の幼馴染の金髪ロング美少女。制服の胸には黒色のユリが飾られていた。
初期から好感度MAXの、俺の推しの一人『夢見百合』だ。
やはりここはゲームの世界なのだと思い、俺は彼女に近づいた。
「百合!」
大きな声で彼女に近づく。
「優くん!」
彼女も大きな声で返事をしてくれた。
俺は百合の目の前に行くと、彼女は俺に抱きつき、こう言った。
「あなたはだ〜れ」
その時、腹にさされたナイフに気づく。
痛みのせいか、俺の意識はそこで途絶えた。




