思惑
学校に着き
教室に入ると――。
「おはよう! こっちにおいで。
しかし、いつも君たちは一緒に登校してくるんだね……。
少し、ボクは寂しく感じるよ」
秋の言葉を聞いて、やはり思った。
――二か月間、時間が飛んだことは、誰も認識していない。
「おはよう……秋」
秋の好感度も上げなければいけない。
そう思い出し、俺は鞄に手を伸ばした。
「あ、そうだ。これ、やるよ」
鞄からジュースを取り出し、差し出す。
「おや、今日はどうしたんだい? 珍しいね……。
でも、愛羅武くんからのプレゼントということだし、
ありがたく飲ませてもらうよ!」
そう言って、秋は俺からジュースを受け取ってくれた。
――これで、少しは上がってくれるといいな。
そんな淡い期待を胸に抱いた。
キーン、カンカンコーン……。
チャイムの音が教室に響く。
「お前たち、席につけ。出席を取るからな」
そう言いながら入ってきたのは、君待先生だった。
出席を取り終えると、先生はそのまま話し始める。
「今日は、体育祭で出る種目を決めたいと思う。
出たい種目があったら、手を挙げてくれ。
まずは女子からだ。その後、男子も一つ種目を選んでくれ」
数分後、黒板には次のような組み合わせが書かれていた。
二人三脚 (薔薇崎/ )
ペア障害物競争 (桜 / )
背中風船運び (夢見 / )
――そう。これも、イベントの一つだ。
選ぶ種目によって、
特定のヒロインの好感度を大きく上げられる。
俺は、もう選ぶ種目を決めていた。
「俺は、二人三脚がいいです」
そう言うと、先生は俺をじっと見つめ、
すぐに視線を黒板へ戻し、名前を書き足した。
二人三脚 (薔薇崎/愛羅武)
――俺の種目は、これで決まりだ。
薔薇崎の方を見ると、彼女は俺をじっと見つめていた。
そして、静かに口を開く。
「……後で、お話がありますわ」




