準備
その後は解散となり……俺は家に帰った。
特に変わったこともなく、いつものように時間を過ごし、
やがてベッドに入り、そのまま眠りについた。
――。
窓から、眩しい太陽の光が差し込んでいる。
「……うーん」
俺は体を起こし、ベッドに腰掛けたまま、デジタル時計を見る。
6月10日
「……え? は?」
一瞬、理解が追いつかなかった。
なんと――最後の記憶から、二か月も経っている。
ピコン。
視界に、見慣れたウィンドウが浮かび上がった。
『追加クエスト:体育祭で優勝する』
『報酬:記憶のかけら』
「……追加、クエスト?」
イベント整理でもされたのか?
それにしたって、ここまで一気に早送りされるなんて……。
俺視点では、混乱しかない。
『体育祭で優勝……』
ゲーム内でも、かなり難しかった記憶がある。
クラス内ヒロインの好感度を、一定値まで上げていないと、
そもそも成功しないイベントだったはずだ。
今日の日付から考えると――残り、七日。
百合は、もう条件を満たしているだろう。
秋は……まだ、少し足りなさそうだ。
――だが、問題はそこじゃない。
薔薇崎華麗。
彼女とは、まだ一度も関わっていない。
このままじゃ、優勝は無理だ。
諦めるしかない……はず、なのに。
報酬は――記憶のかけら。
それだけで、簡単に切り捨てることはできなかった。
「……一体、どうすればいいんだ」
そう考え込んでいると――。
「優くーん!」
外から俺を呼ぶ、百合の声が聞こえた。
ひとまず、考えるのは後だ。
俺は学校へ向かう準備をすることにした。




