眼中
次の日になったらしい。
俺は、いつも通り百合と一緒に登校した。
校門をくぐった、その時――横から声が聞こえてきた。
「ゆ、優さん! おはようございます!」
声の主は菫だった。
わざわざ朝の挨拶をしに来てくれたらしい。
「ああ、おはよう!」
俺も挨拶を返す。
ふと彼女の胸元を見ると、白いパンジーの花弁のうち、二枚が赤くなっていた。
――やはり、昨日のクエスト報酬で好感度が上がっている。
その影響だろうか。
朝から待っていて、声をかけてくれたのかもしれない。
菫の様子がどこか落ち着かないので、俺は声をかけた。
「今日は、なんだかソワソワしてるな。どうかしたのか?」
「じ、実は……私をいじめていた生徒二人が、親の転勤で転校したらしくて……」
そう言って、彼女は少し安堵した表情を浮かべる。
「もう、校舎裏に呼ばれることもないと思うと……少し、ほっとしたんです。
で、でも……一番の理由は、優さんの顔が見られたことです……。
優さんが、助けてくれたから……」
そこまで言うと、菫は顔を赤くして、足早に去っていった。
「優くん、好かれてるね〜。
あの子、私のこと見えてなかったみたい。ふふふ」
百合が楽しそうに笑う。
少し妙な気分になりながら、俺たちは教室へ向かった。
⸻
教室に入ると、すぐに秋が声をかけてきた。
「二人とも、おはよう! ほら、こっち来て早く席に座ってー」
「おう、おはよう」
「おはよう、秋ちゃん」
俺と百合は席につく。
すると、秋が前の席から振り返り、俺に話しかけてきた。
「そういえば、昨日の夜に連絡したはずなんだけど……。
どうして返してくれなかったんだい? スルーなんて、酷いじゃないか」
少し不満そうな口調だ。
――昨日の夜は、時間が飛ばされた様な状態で、何もできなかったんだよな。
そう思いながらも、俺は素直に謝ることにした。
「昨日の夜は、ちょっと忙しくて返事できなかった。すまん」
それを聞いた秋は、ぱっと表情を変える。
「じゃあ、自販機でジュース一本。それでチャラにするよ」
財布の中を見ると、なぜかちゃんとお金はある。
――まあ、出せばいいか。
「おう。好きなの買ってやるよ!」
「優くん、私にも!!」
そんな学生らしいやり取りをしていると、
「みんな、来てるかー。ホームルームを始めるぞ」
担任の君待先生が教室に入ってきた。
出席を確認すると、先生はすぐに教室を出ていく。
――そういえば、あの先生の授業、まだ一度も受けていないな。
そんなことを考えていると、モザイク顔の先生が現れ、授業が始まった。
キーン――。
気づけば、もう放課後だった。
⸻
俺は百合と秋を連れて、自販機のある購買へ向かうことにした。
その途中、生徒会長――天竺葵とすれ違う。
軽く会釈すると、彼女も同じように会釈を返してきた。
何事もなく、そのまま通り過ぎていく。
――あの夜、俺の家を見ていた理由は分からない。
警戒はしていたが、特に何も起こらなかったので、ひとまず安心した。
購買に着き、秋にジュースを買ってやる。
すると、ウィンドウが現れた。
『プレゼント機能が開放されました』
『プレゼントをすることで、好感度が上昇しやすくなります。
プレゼントする物によっては、急激に上昇します』
――最初から解放して、説明もしてくれればいいのに。
そんな不満が頭をよぎる。
「愛羅武くん、ありがとうね。美味しくいただくよ」
そう言って微笑む秋の胸を見ると、白いコスモスの花弁が一枚、赤くなっていた。
……ジュース一本で、いいのか?
そう思いながらも、好感度が上がるならと、百合にもジュースを買ってやることにした。
「ありがとう! 優くん!
優しい!! 天才!!」
からかうように、でも嬉しそうに百合は笑った。
百合に変化は




