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監視

「俺、ちょっと行ってくる!」


そう言って二人を置き、俺は走って階段を駆け下り、声のした方へ向かった。


そこには、項垂れてうずくまる三色菫がいた。

周囲には女子生徒が二人いる。


顔は認識できないが、以前、菫を囲んでいた連中と同じだろう。


「何してるんだ!」


感情的な声が出る。腹の奥底から来る怒りだった。


「あ、なに。またアイツじゃん。彼氏か何か?

今日はバット持ってないみたいだけど」


二人は俺の方を向き、少し近づいてくる。


――よし、菫から引き離せた。


そう思った、その時。


うずくまっていた菫が立ち上がった。


俺は気づく。

彼女の足元から、黒いモヤが立ち上っている。

胸には、黒いパンジー。


菫は、ゆっくりと女子生徒に近づいた。

手には、鋭いペンが握られている。


女子生徒の意識は、まだ俺に向いていた。


菫がペンを振りかぶった、その瞬間――


「お前ら、危ない!!」


咄嗟に叫ぶと、女子生徒が動いた。


頭を狙っていたであろう

振り下ろされた腕は、頭ではなく腕に突き刺さる。


「ぎゃっ! なによ、アンタ!!」


悲鳴とともに、腕から血が流れる

血を流しながら、女子生徒は菫を突き飛ばした。

菫は倒れ、頭を打った様子はないが動かなくなった。


それを見た二人は、その場から逃げ去った。


……俺は、この展開を知らない。


ゲームでは、俺が介入すれば教師に見つかり、いじめていた連中は数日後退学になるはずだった。

誰かが怪我をする変数など、存在しない。


――あの黒いモヤ。

あれが、ゲームとの違いを生んでいるのか……。


「何かあったのかい? ……おや、その子は」


背後から桜秋の声。

振り返ると、百合もいた。


「ああ。複数人に囲まれて、いじめられてた」


黒いモヤやペンのことは伏せ、起きたことだけを話す。


「そうか。無事か、確認しよう」

秋がそう言った


菫の状態を見る。

胸の花は、紫色のパンジーに戻っていた。


体を揺さぶると――


「ん……? 一体……いたた、頭が痛いです……」


目を覚ました。


「大丈夫か。記憶はあるか?」


「あ、あなたは……記憶……ですか?

……いつもの二人に呼び出されたところまでは……その先が思い出せません」


やはり、黒いモヤの間の記憶はない。


「もしかして……また助けてくれたのでしょうか?

……ありがとうございます。

あ、前にお名前を聞いていませんでしたね」

彼女はメガネ越しの笑顔を見せてくれた。


「俺は優。こっちが秋と百合だ」


「優、優…優さん……ありがとうございます、優さん!」


その瞬間、彼女の胸の花弁が一枚、赤く染まった。


――好感度が上がった、でいいんだろう。


「じゃあ、一旦今日はここまでにしよう」


そうして立ち去ろうとした時、ふと上を見上げた。


三階の窓に、薄緑色の髪をした人物がいた――気がした。


二度見すると、もういない。


……気のせいか。


俺たちは、そのまま帰路についた。


――――――




「……ああ、私が処理をする」


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