電話
黒は危険――そう認識しながら校門へ向かうと、見覚えのある女子が待っていた。
金髪ロングが印象的な美少女、百合だ。
「もー、どこ行ってたの? 待ってたんだよ。帰り道も一緒だし、帰ろ!」
彼女の胸ポケットを見る。
そこには、黄色いユリが飾られていた。
やはり、これは好感度だ。
「……おう」
バットを片手に、警戒を解かないまま、俺は百合と並んで歩き出した。
通りを抜け、家の前に着くと、父さんが立っていた。
「優……おかえり。……そして、???ちゃんも」
「優くんパパ、こんにちは!」
百合の名前が、なぜかはっきり聞き取れなかった。
一瞬の違和感を覚えた、その時――
「母さんとも話し合ってな。これをプレゼントすることにした」
父さんはそう言って、携帯電話を差し出した。
「もう高校生だ。連絡手段くらい、必要だろう」
ちょうど、この世界の情報を調べる手段が欲しいと思っていたところだ。
携帯電話は、このゲームでもイベントの起点にもなる。
「……ありがとう、父さん」
父さんは、静かに家の中へ戻っていった。
「じゃあさ! 優くんも携帯持ったんだし、番号交換しよ!」
そうして俺は、百合と連絡先を交換した。
今日は早めに寝よう。
入学式の翌日――
次のイベントに備えるために。




