戦闘神姫 第3話 神の力を宿す武器――その名は神器
【神器-ジンキ】とは――。
物体や武器に魂が宿ったものを、人々はソウルウエポンと呼んだ。
その中でも、とりわけ強大な魂を宿す存在があった。
それはあまりに強大で、人に“神”のような力を与えるもの。
人々はそれを、畏敬を込めて【神器】と名付けた。
シュラは大雑把にそう説明した。
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「そして、今この国にも数個の神器が保管されている。だが――適合する者がいない」
「適合? 神器って、誰でも使えるもんじゃないのか?」
「ウエポンズ手術に相性があるように、神器にも相性があるのさ」
「……それじゃあ、また俺は……」
もし神器すら使えないなら、俺はどうなる?
胸の奥に暗い影が差し、言葉を失う。
「その時は後方支援でも回ってもらうさ。心配するな。お前は“強い”。それを自信にしろ」
「……シュラさんよりも?」
「冗談が言えるようになったな。さて――着いたぞ」
その声音には、揺るぎない自信があった。
長年、俺を鍛えてきた男だからこそ知っている。
この人は決して嘘をつかない。
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「ここだ」
シュラは周囲を確認し、地下へ続く隠し通路へ案内した。
「軍にこんな場所が……。俺、軍そのものにもほとんど入ったことないけど」
「神器は強大すぎる力を持つ。適合すれば、国ひとつを滅ぼすことすらできる。――そんなものを、どこにでも置けるはずがないだろう」
重々しい言葉の後、シュラは念を押す。
「過度な期待はするなよ。誰にも合わなかったからこそ、ここに眠っているんだからな」
その奥に並ぶ武器群は、一見すればただの剣や槍に過ぎなかった。
だが、近づくだけで肌を刺すような異様な気配が漂い、俺は思わず息を呑んだ。
「神器って……普通の武器に見えるな。ただの剣や槍だ」
そう呟きながら手を伸ばした瞬間――。
刹那、刃が淡く光を放った気がした。
「……?」
瞬きの間に光は消え、ただの鉄に戻っていた。
気のせいかと思い、シュラには告げなかった。
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「どうだ? 気になるものはあったか?」
「正直、どれも微妙に感じた。……なんか“コレジャナイ感”ってやつ?」
俺の答えに、シュラは小さく頷く。
「それならそれで正しい。神器は人を選ぶ。そして、人もまた神器を選ぶ」
「それって……選ばれたら光ったりするの?」
意を決して、さきほどの出来事を口にした。
「触れたとき、一瞬だけど光ったように見えたんだ」
「……光?」
シュラの目が細くなる。
「もう一度、触ってみろ」
再び槍に触れた。だが、何も起きなかった。
「俺や他の適合者のときに、光ったことなど一度もない。……まあ、今日はここまでだ。適合しない神器にすがれば、最悪死ぬことになる。俺は何度も、その末路を見てきた」
――戦場の修羅。
その異名に違わぬ目で、シュラは告げた。
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「シュラさんは、どうやって神器を選んだんですか?」
「選んだんじゃない。……選ばざるを得なかった。それが正しいな。お前と同じで」
短く答えたその言葉には、重い過去の影がにじんでいた。
「一度家に戻れ。また明日以降考えろ。俺には、まだやることがある」
そう言われ、俺は軍の地下から退出することになった。
翌日、昨日の神器の話や光の事を考えながら、いつもの山奥の修行場で剣を振っていた。
「そんな曇った心じゃ、いつまでたっても私に勝てないわよ」
高い声が、風に乗って届く。 振り返った先に立っていたのは 幼なじみのカガリ・アヤカだった
「私も稽古手伝ってあげるわよ!」
そう言い、剣を構えるアヤカには確固たる自信があった
アヤカはノヴァリス王国が誇る最強戦力であるーー"戦闘姫"だ