戦闘神姫 第二話 選ばざる者、神を選ぶ
「クロカミ・イッシンさん…貴方は、ウエポンズには成れません」
その瞬間、時間が止まった気がした。
鼓動の音だけが、やけに大きく耳に響く。
「……え?」
乾いた声が漏れる。
「そんな…嘘…ですよね?」
博士は首を横に振った。
「血液検査、適合試験、すべての結果が示している。ソウルウエポンに耐えられる器ではない。もし手術を施せば、武器に体を壊され、命を落とすだろう……まるで、君の姉の時のように」
博士の最後の言葉は小さくハッキリとは聞こえなかった
「……姉?」
思わず聞き返すが、博士は視線を逸らし、書類をそっと重ねた。
「失礼、なんでもない。……国の宝を無駄死にさせるわけにはいかない。手術は認められない」
その言葉を最後に、俺は施設を後にした。
家に帰った瞬間、全身から力が抜けた。
八年――何のために剣を振り続けてきた?
父さんと母さんを殺した奴らを倒すためだろう……?
泥のように眠り、そして目が覚めると、隣にシュラが座っていた。
「……聞いたんですよね?俺が、適正がないって」
少しの沈黙の後、シュラは短く答えた。
「あぁ、真っ先にな」
「俺には……父さんや母さんの才能なんてなかったんだよ」
弱音が、勝手に口から漏れた。次の瞬間、ゴツンと拳骨が落ちる。
「見損なったぞ、イッシン。そんなことで戦士になる夢を諦めるのか?」
シュラの言葉に力が籠る
「だって俺は……ウエポンズに成れない…それじゃあ惨めに死ぬだけだ」
シュラの目が細くなる。
「お前は、何のために武器を振り続けてきた?」
問いかけられ、俺は黙り込む。
「なんのため…?」
八年の訓練。その意味を改めて探した
その時、以前シュラの言った言葉をふと思い出した
(憎しみに…囚われるな…)
……俺はやっぱり、この国を守りたい。
父さん達が守ってきたノヴァリスの国を!
イッシンの目に光が戻る。その目をみてシュラは問いかける
「やっとお前らしくなったな。そうなると、選択肢は三つだ」
シュラは指を三本立てる。
「一つ、そのままの体で戦う」
「二つ、後方支援に回る」
「そして三つ目だが…お前に適合する神器を見つけ戦う」
三つ目を口にした瞬間、シュラの口元に不敵な笑みが浮かぶ。
「それって選択肢って言わないですよね…でも
それなら…」
俺の答えとシュラの答えは合致していた
「…そうだな」
その答えを出した時シュラの口元は僅かに緩んだように見えた
「ただ、神器は選ばれた者しか扱うことができない…お前の親父さんも使えなかったんだ…それでもお前は神の力を手にして戦うのか?」
シュラは最後に質問をしてきた
「勿論、そこに選べる選択肢がある限り、俺は前に進む」
この時の俺はまだ知らなかった。
その選択が、俺たちの運命を大きく変えることになるなんて。