【3章】戦闘神姫 第7話 見つけ出せ守護者の弱点
湖に突如現れたダンジョンに、イッシン達四人は攻略に挑む。
力と心、二つの部屋を突破した四人は、ついに守護者へと続く扉を開いた。
ーー
同時刻。
二つの扉の前では、激しい戦闘が繰り広げられていた。
「ほぅ……貴方、ただの卑怯者ではありませんね」
「オメェ何者だぁ?」
(俺についてこれる奴はそういねぇ……能力を出すかぁ?いや……そうなったら面倒な事になりそうだ)
その時、レグリオルが静かに武器を納めた。
「少し熱くなりました。これ以上戦えば、私も貴方も無傷では済みません。それに私は貴方に敵意はありません。ただ見届けたいだけです。退くというなら見逃しましょう」
「笑わせんな……ちげぇんだよ、退くのはテメェだ」
「やれやれ……死ななければ理解できませんか」
その瞬間、空間に声が響く。
「直ちに戦闘をやめなさい」
「誰だか知らねぇが関係ねぇな。獲物は逃さねぇ」
ギルは無視して襲いかかる。
突如、何もない空間から風が吹き荒れた。
風は二人を包み込み、そのままダンジョンの外へと弾き出す。
「ちっ……何だこりゃあ!」
「神の力でしょう。最初に入った者達への干渉を禁じる……といったところですか」
「あーあ、シラケちまった。今日は見逃してやるが、次は本気だ」
「えぇ……“お互い”に」
ギルは背を向け去っていく。
レグリオルはダンジョンを見上げた。
「私は見届ける責務があります……ここで待たせてもらいましょう」
ーー
四人が最奥の部屋へ足を踏み入れる。
中央に刻まれた巨大な紋章が光を放つ。
空間が震え、大地が割れる。
現れたのは巨大な亀型の守護者だった。
「こいつが守護者……!」
咆哮と共に突進してくる。
「防御特化って顔してるわね。前衛は私とマクで攻めるわ。ローアとイッシンは隙を見て援護して」
アヤカとマクが同時に踏み込む。
「一太刀で楽にしてあげるわ!炎気一閃!」
炎を纏った斬撃が叩き込まれる。
だが、甲羅がそれを弾く。
「アヤカ!次はアタシだ!」
マクの腕が獣化する。
「獣拍!」
横殴りの一撃。
鈍い衝撃音が響く。
「アイツ刀が弾かれる所見てなかったのか?」
「よく見なさい、亀のほうを」
甲羅の奥で、守護者の顔がわずかに揺れる。
「効いているのか?打撃が」
「おそらく振動だね」
「正解よローア。外殻じゃなく本体を打ってるの」
マクの拳は甲羅を砕くためではない。
内部を揺らす打撃だ。
「流石マクだな。あれは一溜まりもないぜ」
「もうすぐよ。顔を出したときが反撃の合図よ」
「これでどうだぁ!!」
渾身の一撃。
だが――
守護者の甲羅から無数の棘が突き出し、マクの腕を貫く。
「ぐわあああ!!」
マクの悲鳴と共に血が流れる。
「やられたわね……」
守護者は攻撃のタイミングを読み、カウンターを仕掛けていた。
そして口を開き、光を溜める。
「やべぇ……避けきれん」
(これを直撃はアタシでも……ヤバい!)
「させないよ!強射手!」
ローアの矢が顎を撃ち抜く。
照準が逸れ、光線はマクをかすめるだけで済む。
だがダメージは深い。
宙に浮いたマクをイッシンが抱きとめる。
「マク……少し休んでろ!三人で何とかする」
「気を付けろ……あいつトロそうで隙がねぇ……それにあの防御力……お前らじゃ突破できねぇぞ」
「イッシン、アヤカちゃん。二人で少し時間を稼いでくれない?」
ローアの目が鋭くなる。
少し考えた後、アヤカは頷いた。
「わかったわ。イッシン、私についてきなさいよ」
「あぁ……ローア、マク頼んだぞ」
イッシンとアヤカが攻撃に回る。
「何か懐かしいな。昔の特訓を思い出す」
イッシンはかつてアヤカと特訓していた日々を思い出す。
「ついてきなさいよ。置いてくわよ」
そう言ってアヤカは守護者に斬りかかる。
(脆い箇所はある。そこを突けば勝機はある。でもアイツの高威力の光線が厄介ね。ローア……アンタの発想力が頼りよ。)
カァンと甲高い音が鳴り響き、アヤカの剣が弾かれる。
「しまった……!」
守護者が光線を放とうとする。
「やらせねぇよ。頼むぜ柳霞、アヤカを隠せ」
イッシンが刀を振るう。
霧が立ち込める。
光線は逸れ、壁を穿つ。
「アンタ……その刀」
「あぁ。カグラが貸してくれた。いや、預けてくれたんだ」
ーー
ダンジョンへ向かう少し前。
「イッシン……今いい?」
「おう、カグラ。怪我はもういいのか?」
旅の準備をしているイッシンのもとへカグラが訪れる。
「ええ。まだ完全じゃないけど……武器は何を持っていくの?」
「あぁ、刀にするよ。一番手に馴染んでるからな」
「それなら……これ、持っていって」
差し出されたのは柳霞。
「カグラ……これお前の刀だろ」
「元々この刀の所有者は姉さんだった。私は今、戦える状況じゃない。だから預かっててほしい。必ず私は戦場に戻る。それまで……」
イッシンは刀を受け取る。
(重い……。この刀はこんなに重かったか?いや違う……この重みはカグラの気持ちそのものだ。それに……)
「カグラ、早く戻ってこいよ。それまでお前と“レイカ”さんの想いを背負って闘う」
「ありがとう、イッシン。必ず取りに行くよ」
ーー
「助かったわイッシン。貴方もやっと覚悟のある顔付きになったじゃないの」
「あぁ。友人と師匠の想いを背負ってるんだ。今の俺は強ぇぞ」
だが戦況は変わらない。
それどころかスタミナは削られていく。
(でもアイツは“防御特化”。なら必ず形態を変える瞬間がある)
「マクちゃん、動ける?」
「あぁ。少し休めばな」
「危険だけど、マクちゃんにしか出来ない事がある」
「任せな。やらなきゃ誰か死ぬかもしれねぇんだ」
守護者が攻撃へ転じる。
棘を射出。
「イッシン!避けなさい!」
「いや……避けれねぇわ」
背後にはマク。
「狙いは最初からマクだったのね」
(マズイわ……私じゃ間に合わない)
「安心しろよ。俺が守ってやる」
棘を斬り落とす。
「これもレイカさんから習った。どんなものにも脆い場所はある」
「助かったぜ」
「どんなものにも脆い場所か……そこだね」
ローアの目が確信へと変わる。
「マクちゃん、動けるね。作戦開始だよ」
「おう。休んだ分キッチリ働くぜ」
ローアは攻略の糸口を掴んでいた。
だが、この戦いは思いもよらぬ方向へ進もうとしていた。




