【3章】戦闘神姫 第4話 褐色の美少女、弓使いローア
ノヴァリス王国より少し離れた所に、
綺麗な水が湧くといわれる湖があった。
その湖の真ん中に、突如としてダンジョンが出現していた。
ダンジョンの出現が原因なのか、
湖の水は黒く濁り、かつての透明さは失われている。
「確かに目立つね…」
「でも攻略されてないって事は、相当なレベルなのかもね」
イッシンとアヤカの二人は、先に湖へと到着していた。
「なんとか攻略して、神器があればいいんだけどね」
「あぁ。俺に合う武器であればいいんだが…」
「アンタなら心配ないわよ。焦らずいきましょ」
その時だった。
「お待たせいたしました」
二人の背後に、馬車が止まる。
「久しぶりだな、イッシン!」
姿を現したのは、イアの派閥に属する熊腕のマクだった。
「サポーターって、マクの事だったのか…!じゃあ残りの二人も?」
「いや、ユミコとリツコは別で修行中だ。お前とカグラにリベンジに燃えてるよ。もう一人は……」
「ローアですー。よろしく」
もう一人が馬車から降りてくる。
褐色の肌に、短く整えられた髪。
その名前と姿に、イッシンは覚えがあった。
「もしかしてお前…あのローアか?」
「やぁイッシン。活躍は聞いてるよ」
ローアは満面の笑みで答える。
「何よ、アンタ。軍に知り合いがいたの?」
「あぁ。ローアとは昔ちょっとね……」
「私がいじめっこから助けてあげたのよ」
ローアが即座に口を挟む。
「ちょっとやめろよな…」
「ふぅん。どうでもいいけど、アンタ戦えるのね?」
なぜか、アヤカの声は少しだけ刺があった。
「心配ねぇよ。しっかりアタシが見てきた。弓の精度ならユミコにも劣らねぇ」
「お前、弓使いなのか?運動神経もいいし、近接系かと思ったけど」
「勿論、前衛で戦うこともできるよ。でも私が動きながらサポートするほうが、他が戦いやすくなるかなって」
「ふぅん。わかったわ。じゃあ今回の任務を整理するわね。今回は未知のダンジョンの攻略が任務よ。ただし難易度は未知数。生き残ることが今回の最重要課題よ。そして神器があれば儲けものね」
前衛三人、後衛一人。
イッシンにとっては、初めてのチームプレイだった。
「じゃあ行くわよ」
アヤカの合図と共に、四人は湖にかかる橋へと足を踏み入れる。
「しかし、親切に橋まで掛けてあるとはな」
数歩進んだところで、アヤカが足を止めた。
「構えて……何か来るわよ……」
三人は即座に武器を構える。
次の瞬間、水面が大きく跳ね上がった。
「なるほど……皆、コイツにやられたのか」
現れたのは、巨大な烏賊――クラーケンだった。
「丸焼きにしてあげるわよ」
アヤカが先制し、剣から炎を放つ。
だがクラーケンは湖へと潜り、その攻撃を回避した。
「こいつ、戦闘の知識もあるのかよ」
「来るわよ!」
湖面から姿を現したクラーケンの口から、砲弾が放たれる。
狙いはマクだった。
「任せろ!」
イッシンが砲弾を斬る。
だが、割れた砲弾から墨が飛び散り、イッシンの視界を覆った。
「何だ……この墨……!見えねぇ」
「マズイわね。私の攻撃は通らないし、あの砲弾は直撃したら致命傷よ。一旦距離を取るわ」
「アヤカちゃん。少し気を引ける?」
「誰がアヤカちゃんよ……。でも、その目……何か考えてるわね。わかったわ。マク!イッシンを一旦ここから離して!」
「おう。任せろ!」
マクがイッシンを抱え、後退する。
だがクラーケンの攻撃が、二人を追う。
「炎気一閃!私がいる以上、手出しはさせないわ!」
アヤカの一太刀が、迫る脚を斬り落とす。
「うん。充分な隙だね。イカは眉間が弱点って相場でしょ!強射手!」
ローアの放った矢が、正確に眉間を貫く。
クラーケンの体色が黒く変わり、動きが鈍る。
「アヤカちゃん、今だよ!」
「もう動いてるわよ!」
アヤカの剣が閃き、
クラーケンは瀕死に追い込まれる。
「流石、戦闘姫だね」
「アンタも、弱点を見抜くなんて中々やるわね」
二人の連携により、クラーケンは完全に沈黙した。
「今のうちに速く行くわよ!」
「おう!」
四人は再び、ダンジョンへと走り出す。
「すまねぇ。足、引っ張っちまった」
「ホントよ。でも、ここからが本番。あのクラーケンでこのレベルなら、恐らく難易度Aはあるわよ」
難易度A。
それは、戦闘姫が一人で攻略できるかどうかの水準。
つまり、残る三人は明らかに格下だった。
「あぁ。気を引き締めていこう!」
四人は、ダンジョンの中へと消えていった。
ーー
イッシンたちがダンジョンへと入った、その直後。
一人の男が、静かにその後を追ってやって来ていた。
「ふむ。これくらいは余裕ですか……」
男は、湖畔に倒れたままのクラーケンを見下ろす。
「まあ、獅子王の認める男は、ほとんど何もしていなかったようですが……」
その瞬間。
クラーケンの脚が、微かに動いた。
だが、その一撃が男に届くことはなかった。
男の身体に触れるよりも早く、
クラーケンの脚そのものが、音を立てて弾け飛ぶ。
「私に攻撃など……愚か者め。死んで詫びなさい」
男は一歩も動かず、クラーケンの命脈を絶ちきる
「瀕死になりながらも生き延びようとする……その美しさだけは認めましょう」
男はゆっくりと手を伸ばす。
次の瞬間、クラーケンの亡骸は黒い靄となり、
男の身体へと吸い込まれていった。
「では、私も行きますか……」
男は、ダンジョンの奥へと視線を向ける。
「アルギエラよ。貴方の認めた男を、私も拝見しに……」
ーー
ダンジョン内部。
水辺に近い構造のためか、空気は冷たく、湿っていた。
「流石、水辺のダンジョンだけあって、少し冷えるね」
「早く攻略して抜け出すわよ……こんなジメジメした所」
四人は慎重に歩を進め、
やがてダンジョンの中間地点へと辿り着く。
そこで、全員の足が止まった
目の前には2つの扉が行く手を阻む
「4人で行くのが得策か?」
「全員で行くのはデメリットもあるわ…二手に分かれましょ」
「誰がペアになる?後衛のローアも鍵になるから……」
皆が考える中、アヤカが切り出す
「仕方ないわねぇ…私がイッ…」
「なら私がイッシン君といくよ」
アヤカの発言に被せてローアが提案する
「そうだな、剣士二人で組むより離した方がいいな。じゃあアヤカはアタシと行こう」
そうして、イッシンとローア、アヤカとマクのペアが出来上がる
「何かあったらすぐに呼びなさいよ」
膨れっ面を向けるアヤカは拗ねていたように見える
「あぁ。全員で乗りきろう。」
そして二組は、二つの扉へと入っていった




