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戦闘神姫  作者: 柳井
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【3章】戦闘神姫 第2話  寄生糸ー操り人形

ノヴァリス王国の大将軍であるシュラは、ネフィリス王国の国王ネフィリス・ラゴウと会談していた。重厚な応接室。装飾の一つ一つが、この国がもはや小国ではないことを雄弁に語っている。


「本題ですが、こちらのリュー・レイカがそちらの戦闘員と戦い死傷した件についてお伺いしたい。」

シュラは前置きを捨て、真正面から切り込んだ。

「ふむ。私はそちら側の戦闘員がこちらの領土に入ってきたと聞いておるが…?」

先の戦闘で、ゼロに吹き飛ばされた妹のカグラが、結果としてネフィリス側へと転がり込んだ。

それが、今回すべての発端となっている。


「それはそちら側の戦闘員が攻撃を仕掛けたからでしょう。こちらに敵意は無かった」

「そちらの領土でならその理屈も通るだろう。だが今回は、あくまでネフィリスとノヴァリス、どちらの領土でも無い場所だと聞いておる。それに……全員の意見を聞いていない以上、私は判断しない」


理屈としては歪んでいる。

だが同時に、形式としては成立していた。

戦闘に関わった四人のうち、一人――レイカは既に死んでいる。

“全員の意見”が揃わない以上、判断しないという逃げ道は確かに存在した。

一瞬、シュラは息を整える。

感情で押せば、この場は完全に詰む。


「承知しました。ここに来たついでです。以前からお伺いしたいと思っていた事がありまして」

「ほぅ…何かね?私も忙しいのだが」

「以前よりお手紙をお出ししておりましたが、数ヶ月ほど前、そちらの兵隊に国を襲われた件。そしてサイランと言う女性に国の所有物を盗まれた件について、その対応をお聞かせ願えますか?」


数ヶ月前、ノヴァリス王国は襲撃を受けている。

黒い鎧に身を包んだ兵士たち。

そして、その混乱に紛れて侵入したサイラン。


「では聞こう…その兵隊はネフィリスの名を名乗ったのかね?」

「……は?」

思考が一瞬、止まった。

「我々の部隊だという、確かな証拠はあるのかね?」

「あれは確かに貴方達の兵だった……あの黒い鎧は……」

その言葉を遮るように、ラゴウは静かに問いを重ねる。

「だから、私の国の者だと名乗ったのかね?」

その瞬間、シュラの脳裏に、あの戦闘の光景が蘇る。

――黒い鎧。死への恐怖が無く、ただ戦い

国を壊す破壊者

そして、誰しも言葉を交わした記憶は無い

「……」

理屈では分かる。

だが、納得できるはずがなかった。

シュラは机を叩き、ついに感情を露わにする。

「そんなの通りませんよ!ではサイランの件はどうする!あれは完全に言い逃れできない!」


ーー

少し前、サイランと素顔を隠した男がノヴァリス兵達を見ていた


「そろそろですね…開始してください」

「えぇ。困ったことは、揉み消してしまいましょう」

寄生糸(パラサイト)操り人形(マリオネッター)発動!」

男の爪の武器から糸が飛ぶ。その糸はノヴァリス兵の首に刺さる

「イテッ…虫かぁ?」

刺さった糸は殆どの痛みを感じさせかった

「では始めましょうか。惨劇(ショー)を」

ーー

ラゴウが言葉を返そうとした、その刹那。

外から、悲鳴が響いた。

「うわああ何をする!」

シュラは反射的に窓へと視線を向ける。

「何故……うちの兵がネフィリス軍を攻撃しているんだ……」

目線の先にはノヴァリスの兵士数人が暴れていた

「シュラ殿!」

フーマが会議室へ駆け込んでくる。

「何があった!?」

「突然、うちの者達がネフィリス兵に攻撃を仕掛けたでござる。今はクロエ殿が抑えているが、一人は重症でござる…」

「シュラ殿、これはどういう事かね?」

「私にもわかりません。突然戦闘を始めるほど愚かな者はいないはず……」

その瞬間、シュラは悟った。

この会合自体が――

最初から、戦争を始めるための“舞台”だったのだと。

「話はそれまでだ…無事に帰れると思うなよ」

ラゴウの放つ圧が、室内を満たす。

だが、シュラもまた歴戦の将だった。

「悪いが、帰らせてもらう。通せ」

扉の前に立つ兵士へ、視線を向ける。

「退かぬなら、力ずくで通るぞ」

兵士は動かない。

瞬き一つせず、瞳には焦点が合っていなかった。

「……やむを得ん」

シュラは拳で兵士を打ち倒す。

だが兵士は、音もなく立ち上がる。

痛みを感じた様子すらない。

再び倒しても、また立ち上がる。

人間の動きではなかった。

「……洗脳か何か別物か…仕方がない」

シュラは刃物を抜き、兵士の腱を断つ。

兵士は倒れ伏し、それでもなお床を這って手を伸ばしてくる。

「フーマ!退くぞ」

「承知。」

二人は会議室を逃げるように後にした。


「国王、うまくいきましたね…」

現れたのはサイランと素顔を隠した男

「あぁ。これで我が軍は、正式に攻めることができる。お前達のお陰だ」

「急いで、仕上げに入ります。」


ーー

「クロエ!何があった」

城前ではクロエがネフィリスとノヴァリスの兵士を抑える

「突然兵士達が暴れだした。何があったかサッパリわからぬ。それに打ち倒しても何度でも這い上がってくる。まるで人形のようだ」

シュラの中で合点がいく。会議室にいた兵士と同じ状況だった。

「恐らくコイツらはもう駄目だろう…なら」

「シュラ殿?!何をなさる」

シュラは自身の神器を抜くーー刹那、真上から振り下ろされた剣は自軍の兵隊を両断する

「すまない。お前達。助ける方法が無かった…せめて。俺の手で(かいほう)してやる」

シュラは操られている兵を容赦なく切り捨てる。そして大声で叫ぶ

「ラゴウ殿!こちら側で暴れた物は全て始末した。我々は一度国に帰る。そして国王に報告する。もし……貴方達が攻めてくるなら私らは容赦はしない。」

そして、シュラ達はネフィリス王国を後にする


「ふん…シュラ・ラカンよ最悪の状況は避けたか。だがいつでも仕掛けてやる」

シュラは自ら、自軍の兵を殺した。ネフィリス側は重症だが死には至る傷では無かった。結果的にシュラは三人の命を削り"即戦争"という事を回避することができた


「今のままでは必ず負ける…。その前に力をつけ戦力を整えなければ…」


ーー

ノヴァリス王国

「私が1ヶ月後の試合に選ばれたのですか?」

「あぁ。主はシラハルからの推薦だ。絶対に勝て…分かるな?」

オネットは若き男に期待と圧を向ける

「では鍛練を始めろ。それとシラハルは何処だ?」

「シラハル様は本日見ておりません……何処に行ってるのやら…」


ネフィリスとの会談は失敗に終わった

これからネフィリスとの戦闘は益々過激になることを俺達はまだ知らなかった








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