プロローグ③
ゴウケツの剣とサイランの狂刃がぶつかり合い、暗闇に火花が舞った。
「さすがはノヴァリス王国最強と謳われるだけのことはありますね。深手を負っていても、その動きですか」
「口が達者だな。だが、俺相手にここまでやるとは大したもんだ」
(長居はできない。戦闘姫といえど、レイラは人間……最速で仕留める!)
ゴウケツの闘気が一気に跳ね上がる。
「悪いが、遊んでる暇はないんでね。一気に決めさせてもらうぞ!」
全身の筋肉が膨れ上がり、落雷のごとき斬撃がサイランに襲いかかる。
「速いっ!」
サイランはなんとか防御で受け止めたが、その剛剣はサイランの刀を弾き飛ばす。
「終わりだ!」
ゴウケツが大きく剣を振り下ろす、その瞬間――
「試作機だが、仕方ない……ディストラクションアームズ、解放!」
サイランから黒い閃光が迸る。俺は即座に距離を取った。
視界が戻ると、そこには異様な黒い装甲を纏ったサイランの姿があった。
それは、さきほど戦った黒装甲の生物兵器に似ているが、ウエポンズとは違う、禍々しい黒色の鎧だ。
「これはネフィリスの技術で作った、お前たちウエポンズを破壊するための兵器――ディストラクションアームズだ」
再び剣を交える。しかし状況は一変した。
サイランの速度も力も格段に上がり、気づけば俺の身体は斬撃に刻まれ、血にまみれていた。
「クロカミ・ゴウケツ、貴方を殺すのは惜しい。どうだ?ネフィリス軍に力を貸さないか?そうすればレイラも助けてやる」
ニヤリと嘲笑い、問いかけるサイラン。
……確かに、このまま戦えば最悪、一人は死ぬ。未知の能力、強力な武器、そして俺たちは深傷を負っている。
だが、俺たちの答えは決まっていた。
「貴方……」
死にかけのレイラも、同じ答えだった。
「その腐った提案は飲めねぇな。お前の眼は濁りきっている」
――そして、ライハに似た女や謎の生物兵器、この女がすべて知っているはずだ。
「全力を叩き込む。覚悟しろ、俺の名はノヴァリス王国大将軍、クロカミ・ゴウケツだ」
すべてを守るため、俺は気力を剣に込める。
「黒獅子の咆哮!!!」
渾身の力を込めて振り下ろされた大剣から、獅子の姿をした衝撃波が放たれ、サイランもろともあたり一面を薙ぎ払った。
「これだけは使いたくなかったんだがな……また王様に怒られちまう」
全力を出し尽くし、体はボロボロだった。近くで倒れているレイラも無事のようだ。
安堵したのも束の間――
「本当に、そんな技は使わないでくださいよ……」
砂煙の中から現れたのは、サイランと黒いフードの女。
「なにっ……!?それは!?」
驚いたのは、黒いフードの女の手にした禍々しい武器だった。
「よくご存知ですよね?神器ですよ……まさか、そちらの国だけの武器だと思っていました?この娘がいなければ、私は死んでいましたよ」
フードを脱ぎ、はっきりと顔を見せる女。
その顔は、やはり間違いなかった。
「やっぱりライハだったのか……なぜだ、なぜライハがネフィリスに……」
「あなたも、うすうす気づいているでしょう?大将軍であれば。そして貴方が勝てなかった最大の理由は、神器に選ばれなかったことです。ライハ、やりなさい」
「その名前を気安く呼ぶんじゃねえ!ライハは、俺たちの娘だぞ!」
その言葉に反し、返ってきたのは無情な斬撃だった。
「冥不召霊ー怨念ノ剣」
ライハの詠唱と共に剣に禍々しく黒い炎が蠢く
斬撃は俺の身も魂も斬り裂いた。
神器の威力……すぐ近くに神器を宿した妻・レイラがいるのに、これほどまでに強力とは知らなかった――
俺はレイラの横に倒れた――。
次回でプロローグが完結し物語本編に移ります
是非宜しくお願いいたします