表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘神姫  作者: 柳井
26/32

【2章】戦闘神姫 第15話 最強と最狂

サバイバル訓練は、もはや訓練ではなくなっていた。


主催・戦闘姫イアを殺すか、他の全員が死ぬか――。


「なんで……あの三人まで巻き込む必要があったんだよ! 元チームのメンバーだったんじゃないのか」


ユミコ、リツコ、マクの三人は、かつてイアのチームだった。


「あいつらには悪いことをしたと思う。――国を守るには、新しい力が必要なんだよ。戦闘姫を越える“器”が」


イアはうつむき、どこか哀しげに言う。


「御託はいい。始めようか――《神器じんき》、顕現けんげん


イアの足元にオーラが集まり、地面から大剣がせり上がる。


大地震砕だいちしんさい


【《神器(じんき) 大地震砕(だいちしんさい)》】

大剣型の神器。あまりに重く、使用者を選ぶが、その威力は絶大。一振りで地を裂き、山すら叩き割る。


「アヤカやパラットちゃんの時と、圧が違う……」


イッシンには分かる。両者も凄烈だったが、イアの“圧”は別種――

自分より格下を確実に殺すと決めた獣の圧だ。


「少しは長生きしてくれよ?」


イアが走る。自分の身の丈を超える大剣を握ってなお、速度は落ちない。


(受けるか? ――いや、受けはまずい!)


咄嗟に回避。振り下ろしは空を切り、地が裂ける轟音が遅れて響く。


「やるじゃねぇか。受けてたら真っ二つだったな」


「なんて威力だよ……しかも、まだ本気じゃない」


(だが今の速度なら、まだ躱せる。――本気になる前に)


「まだまだいくぜ? へばるなよ?」


イアが再度突進。速度はさきほどと同じ――


(よし、これなら避けてから――刺す!)


狙いどおりに躱し、鉄槍でカウンター。イアは読みで身を捻るが、かすり傷が走る。


「ハッ、避けられるのは承知さ。だから“読む”。重量武器を使うなら当たり前だよなぁ!」


その時、イアへ向けて何かが飛ぶ。イアは大剣を盾にして弾いた。


「石の礫……これは!」


森の奥から、片腕となったマクと、ユミコが姿を現す。

「イア姉さん、マジっすか。ぜんぶ聞いたっすよ」

「イアさん。本当なら、私たちも加勢いたします」

二人はカグラとの戦闘で重傷を負いながらも、命は繋いでいた。


「――《風柳飛斬ふうりゅうひざん》」


続けざまに、鋭い風の斬線がイアを襲う。


「ちっ、次から次へと……!」


切っ先のいく筋かが防御を抜け、赤い飛沫が散る。


「私も、まだ負けてない。そういうことなら――“倒す”だけ」


イアに斬り伏せられたはずのカグラも立ち上がり、刀を構える。


戦闘姫ひとりに対し、四対一。状況は一変した。


「すまねぇ、みんな。俺のせいで巻き込んじまった」


「気にすんな。“まだ”誰も死んでねぇ。姉さんを倒して、全員で生き残る道を考えようぜ」


その時、イアが不気味に笑う。


「フフ……予想外だねぇ。何人来ようが関係ねぇよ。それ以上の力があるのが戦闘姫ってもんさ。いいじゃねぇか、熱くなってきた」


――

「ふぅ。バレてはいなかったようだね」

レミエントとレイカが、遠見の地点で囁く。


「迫真の演技だったわ。貴女もだけど、イアは役者ね」


「それより、妹が大好きな君がこの状況を許したのは意外だったわ」


「本当に“そう”なるなら、私はイアを斬らなきゃならない……」


「私的にはそっちの方が気になる。現“最強候補”の貴女と、“最狂”の戦士イアの勝敗が、ね」


――


(イアさん相手に選んだ鉄槍は、リーチでチャンスがある。躱して、隙を突く!)


「サポートはいたします。前衛はお願い」


ユミコは闇に沈み、援護の位置へ――のはずだった。


「お前らのやり口は、アタシが一番知ってんだよ!」


イアは足元の礫を拾い上げ――


(まずい!)


「ユミコ、横に跳べ!」


イッシンは懐の最後の煙玉に火を付け、イアの投擲直前に煙幕を張る。礫は弾丸のように煙を裂き、背後の樹に突き刺さった。


「直前で、よく張ったな。おかげでユミコは助かった。――現状、いちばん“いい形”だ」


イアの目が、少しだけ愉悦に細まる。


(これで前衛三、後衛一の攻撃布陣。いかに戦闘姫相手でもこれなら闘える……!)


静寂に包まれる中、動いたのはマクだった


マクは地面に拳を叩きつけ広範囲の攻撃を繰り出す。先程と同じくイアは大剣で体を守る


だがマクの狙いは違った


「その技はアタシが教えた。対処くらい容易い――ほう?」


礫は囮。大剣の死角から、イッシンとカグラが同時に抜ける――。


(右のイッシンと左のカグラか……迷う必要はねぇ。横薙ぎで両断だ!)


「やっぱり両方潰しにくる横薙ぎだよね。今の俺なら躱せる。――もちろん、カグラ。お前も、だろ」


イアの横薙ぎは二人を捉える――はずだった。


『《空蝉うつせみ》』


イアの眼前から二人の姿が消え、残影だけが裂かれる。

その刹那を、暗闇に潜むユミコは見逃さない。


(放て、ユミコ。戦闘者なら、ここは“狙ってる”よな)


「一ミリも外さない。――人間の急所」


ユミコの集中は極点に達する。打ち合わせなどない。

ここにいる全員が各々の最善を選び、戦場で噛み合う。四人の連携は、まるで熟練のチーム。


闇から放たれた一矢が、イアの顔面へ一直線――


「しまっ……!」


(眼は流石にまずい。無様でも――躱す)


ぎりぎりで軌道を外す。しかし完全には避けきれず、眉際が裂けて血が伝う。


「そのタイミングで避ける……!?でも。気はそらしたわよ。」


「甘いよ、イアさん」


《空蝉》は終わっていない。二人は矢が外れる可能性も織り込み済み。

背後へ回ったイッシンとカグラが、体勢を崩したイアへ同時に襲いかかる。


「くそっ……そりゃ、まずいな」


二条の斬線が背へ十字に走る。


「ぐはっ……!」


激しい吐血。傷は深い――それでも、イアは口角を上げた。

“最狂”の所以。イアは戦闘を最も好む戦闘姫だ。


「もう手加減はしねぇ。一人ずつ、確実に殺す」


大剣が叩きつけられる。地が爆ぜ、礫が弾雨となって全員に襲いかかる。


イッシンとカグラは武器で致命を払う。

「なんつう威力っすか……!」

マクは獣化した腕で急所を庇い、視界が塞がる――その瞬間を、イアは見逃さない。


「まず一人目。格上相手に“視界を切る”は、すなわち死だ」


イアの凶刃がマクを切り裂く――激しく血飛沫が舞い、マクは倒れる


「マク!!」

(なんて速さだ……一瞬の隙で、あそこまで詰めるのかよ)


一瞬だった。イアは面制圧の一撃のあと、わずかな綻びも見逃さない。

「次」

振り返りもせず、森の奥へ消える。


(ユミコの射程はこの辺り。サポートは先に潰す)

イアは大剣を横に払う。幹は音も軽く薙ぎ倒されていく。


「ここらだろ、ユミコ!」

木が裂けた瞬間、空中にユミコの姿が跳ね出る。彼女は既に弦を引き切っていた。

「一矢、報います」

「空中に出た時点で、お前の負けだ」


イアは大剣を手放し、迫る矢を素手で掴み取る。

「嘘……この距離で、掴んだ?」

落下するユミコの前に踏み込み、拳を合わせる。

鈍い衝撃音が森に響き、ユミコの頬が歪む。

「二人目。顔をやられたんだ。お返しは同じところだろ」


――

「カグラ、まだやれるか」

「まだ戦える。それに……約束したから」


イアとの戦闘前に交わした約束。それはイッシンと戦う事

 

「はは。こんな時に戦うこと考えてんのかよ。カグラも十分狂人だな…なら倒すしかない……イアさんを」

「全力で迎え撃つ」


「おう、待ったか?」

「マジかよ……速すぎるだろ」

イアがユミコを肩に担いで戻ってくると、そのまま横たわるマクの傍へ放り投げる。


「残りは二人。分かったか、イッシン。これが多対一のやり方だ。圧倒的な力があれば、数は関係ねぇ。——さぁ、楽しませろ。死に際まで諦めんな」

「絶対にアンタを越えてみせる。勝負は、ここからだ」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ