【2章】戦闘神姫 第14話 青柳流ー空蝉
五人の猛者が向かい合う。
サバイバル訓練は終盤へ。
途中参戦のカグラが相対するのは、獣人《熊腕》のマクと、弓使いのユミコの連携。
イッシンの前には、特殊武器の使い手――リツコ。
(恐らく一番の曲者はこいつだ。力のマク、支援特化のユミコ、そして総合力はリツコ――)
「それでは、参りますわ」
リツコは舞いと同時に踏み込み、間合いを一気に詰める。体術か、鉄扇か――。
「どっちにしろ、避けるより迎撃だ!」
イッシンは鉄槍を構え、受けに回る。突き出された鉄扇の先を弾き、火花が散った。
「やりますわね」
「そっちこそ強いな!」
(速度はもう把握した。合わせれば捌ける……だが、本当にそれだけでいいのか?)
リツコへの勝ち筋は、すでに頭に描けている。
だが、脳裏にパラットの言葉がよぎる。
――「クロカミさんは“人間”。全力を常時回すのは、強敵相手ほど危険……です」
「……そうか。俺は“人間”だ」
槍先をわずかに落とし、呼吸を整える。一拍置き、相手を“観る”。
(まだだ。勝ち筋が見えても一〇〇%じゃない。急ぐな――全部、見極めろ)
――
「カグラ、二対一でも手加減はしねぇぞ!」
マクの啖呵に、カグラは無言で太刀を構える。
(コイツはアタシと相性が悪すぎる……ユミコのサポートが鍵だ――!?)
マクが思案するより早く、カグラが地を蹴る。
「速ぇな! だがアタシらも強くなってんだよ!」
(拳は不利。なら広範囲で――)
マクは拳を叩きつけ、石礫を弾幕のように飛ばす。
「……!」
虚を突かれたカグラだが、超反応で回避線を見出し、高く跳躍――
だが空中はユミコの間合い。逃げ場はない。
「甘いわよ、カグラ」
暗がりから矢が放たれる。マクが叫ぶ。
「ユミコ、罠だ! 隠れろ!!」
カグラは空中で矢を躱し、綺麗に着地すると、転がる礫を拾い上げる。
「見つけた。……投石は得意じゃないけど」
礫が放たれる。狙いは暗闇に潜むユミコ――だが、石はユミコを外れ、さらに奥へ消えた。
刹那、カグラは地を裂くようにスタート。狙いはマクではなく、ユミコ。
「まずい、アタシが止める!」
マクは捨て身で拳を振るう。(斬られてでも止める! やり直しは利くはず――)
だが、その拳は太刀に触れることすらできず、力を受け流される。
「私の剣は、すべてを受け流す」
カグラの流派――青柳流。大昔とある国から受け継がれる剣術。受け流しを極めた剣技であり、リュー家が継ぐ本流。姉のレイカもまた、この剣を極めている。
マクを抜き去り、一直線に暗がりへ。
「そこだね」
潜むユミコを一瞬で捕捉。
「速い……!? ウエポンズでもないのに」
「私はただの人間。だから戦う術を身に付けた。――ウエポンズに比肩する力を」
袈裟斬りが走り、ユミコが崩れ落ちる。札がひとつ、カグラの手へ。
間髪入れずにマクへ。
マクも反撃に備える。
(避けられるのは承知。斬らせて筋肉で止める。カウンターで終わらせる!)
カグラが迫り、マクが迎え撃つ
「な…消えた?!」
だが、視界からカグラの像が“消え”
刹那、マクの片腕が宙を舞う。
「――空蝉」
高速の抜けで相手に残影だけを残し、相手の目の前から姿を消し去る、青柳流の奥義
以降はカグラのペースだった。
相性の悪さも相まって、マクの攻撃はことごとくいなされる。
「参った。……降参だ」
マクの言葉とともに、もう一枚の札がカグラへ渡る。
「……凄いな、あの人」
イッシンは横目で、技・戦闘慣れ・ウエポンズに負けない戦い方を目に焼き付ける。
「わたくし相手に余所見だなんて失礼ですわ!」
「俺には、何ができる……?」
ーー
「流石、レイカの妹だな。めちゃくちゃ強えぇ」
イアは望遠鏡で戦闘を覗く
「私の可愛い妹だもん。当然でしょ?」
自信満々にレイカはカグラの事を自慢する
「さて…そろそろアタシも動くわ。後は先輩の指導だ…レミエント私にも頼む」
レミエントにより印が付けられる。
「イアは誰が勝つと思う?」
「十中八九ーー」
そしてイアは森の中へと消えていった
ーー
「カグラのような“観て刺す”戦い方……」
リツコと対峙しながら、イッシンは呼吸を整えた。
「ずいぶんと余裕ですのね」
リツコが舞う――横へ揺れ、扇を掲げ、細かく踏む。舞い終えるや、強化された踏み込みで襲いかかる。
だがイッシンはもう、二度目で動きの仕掛けを掴んでいる。
(いまのは身体強化の舞。三度目で確信した。あとは――“刺す場所”を見極めるだけだ)
「うまく避けましたわね。ですが、そろそろ限界では?」
「ああ。もう限界だ。だからこそ“訓練”で助かった。自分の限界が知れた――それに、まだ強くなれるってことも」
その瞬間、支え足がわずかに横へ滑る。
イッシンが切り出す。限界の身体とは思えない鋭いスタート。
「結局、“舞”がなければただの風扇だろ。――詰める!」
リツコの戦いは中距離で舞ってから強襲する型。
ボロボロのイッシンはあえて距離を保ち、舞いの“更新”が始まる足の合図を待っていた。
一度目、二度目の記憶どおり――足が横へ、呼吸が沈む。
三度目で、舞が完成する半拍前に懐へ滑り込む。
「やっと一発、通せる」
胸元へ一直線――しかしリツコも戦士。身をずらして致命を外し、肩で受ける。
「重い一撃……さすが、シュラ殿の部隊に入る器ですわ」
イッシンは畳みかけた。攻守が逆転し、リツコは受けに回る。互いの体力は刻一刻と削れ――
「――っ」
アドレナリンが切れ、痛みが戻る。イッシンの足が一拍だけ鈍る。
同時にリツコは得意の間合いへ退き、扇を開いた。
「お互い、次で終わりですわね」
今度の舞は、先程と違う身体強化の舞ではないーー
(強化じゃない。……決め技だ)
「参ります―― 白扇の舞・閃突」
美しい舞いの収束から放たれる一閃。今日いちの速さだ。
だが、イッシンは一瞬だけ目を閉じた。
(カグラの戦いは“常勝の位置”を取るための受け流しだ。真似して全部は躱せない。――一度だけでいい、集中しろ)
「終わりですわ!!」
(ここで――流す)
鉄扇の突きは肉を削らず、イッシンの影だけを穿つ。
「消えた!?」
「終わりだ、リツコ!」
リツコの背後に、イッシン。見せたのはカグラの技――空蝉。
そしてイッシンは槍で止めを刺した。
「残りは、あんただけだな……カグラ」
「君、すごいね。私の技を見ただけで盗んだの?」
「ああ。一度だけなら何とかいけると思った。正直、賭けだったよ。――まだまだ修行が要る」
その時、カグラの手から二枚の札が放られる。
「私は途中参加。イアさんと戦う資格はない。君が行ってきて。……それと、私も君と戦ってみたい。全快したら、ね」
「約束する」
「おう!やっぱり相手はイッシンか!」
その時、森の奥からイアが現れる
「約束通り、札を集めました。試合は何時にしますか?」
「あぁ?試合だぁ?」
その時、イアの圧が変わる
「勘違いすんなよイッシン。もうそんな事言ってられねぇんだよ」
「どういう事ですか?」
その時、イアは連絡用のトランシーバーを持ち出す
「レミエント…あいつらの容態はどうだ?」
「あぁ…残念だけどリツコは死んだよ。」
「死んだ?これは死なない術が掛けられてるんじゃないのか?」
「そうでも言わねぇと本気で戦わねぇだろ?だから嘘をついた。すまん」
その時、レミエントから真実が告げられる
「この能力はマーキングをつけた相手との殺し合いが終わるまで結界から出れない。残念だけどイアに殺されてくれ。」
レミエントの話を聞き終わりの一瞬だった
「お前ぇもだよ」
イアは油断していたカグラを一瞬で斬る
「じゃあ本番いくか…イッシン。」
この戦いはまだ続く




