【2章】戦闘神姫 第12話 イアのサバイバル訓練開始
「アタシが鍛えてやるよ」
イアからの提案は、思わぬものだった。
「強くなりてぇんだろ? お前に足りねぇ物を探せばいい。三日後、国から北にある森に来い。そこで修行だ」
「わかりました。よろしくお願いします、イアさん」
俺は二つ返事で応じる。
「おう。やるからには、お互いの成長のため有意義にいこう」
そう言い残して、イアは病室を後にした。
「俺の実力、戦闘姫相手にどこまで通用するかな……」
(クロカミさん……)
パラットはわかっていた。イッシンの弱点――いや、これからの戦いで“知らなければならないもの”の正体を。
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三日後――。
「おう、逃げずに来たな!」
ノヴァリス王国の少し北。緑が生い茂る森だ。
「国の近くに、こんな森があったなんて……」
「体は万全みたいだな。じゃあ、今回の“特訓相手”を紹介する」
イアの背後から三人の女が現れ、さらにその隣に杖を携えた女性が立つ。
「ちょっと待ってくれよ。イアさんが指導してくれるんじゃないのかよ」
「アタシが鍛えてやるとは言ったが、“アタシが直接"鍛えるとは言ってない」
イアの無茶苦茶な発言に俺はわかりやすく肩を落とした。
「話を最後まで聞け。お前に見どころがあるなら話は別だ。この三人に勝って証明しろ。その後、アタシが稽古でも何でもつけてやる」
「わかりました。ぜひお願いします。ところで、なぜ森なんです? 戦うだけなら戦闘場でも……」
「それこそがアタシの修行だ。今からルールを伝える――」
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特訓開始後、森の中――。
「ぐっ……また弓矢か」
矢が肩をかすめる。間一髪で躱したが、完全には避けきれない。
「ほら……隙だらけ!」
女の拳が腹を狙って突き込まれる。だが既ん所でガードに成功。痛打は避けたが、ダメージは大きい。
「クソッ……それぞれが未知の武器で連携してくる。厄介だ。――でも、笛使いのオッサンやアルギエラよりはまだ弱い! どう切り抜ける……?」
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その頃、森の入口では――。
「おう! パラット、お前も来たのか」
「当然です。仲間です……から」
パラットの視線は、イアの隣の女性へ向く。
「彼女、相変わらず凄い能力……です」
「あぁ。こいつの神器はちょっと特殊でな。戦闘訓練には打ってつけなんだよ」
「お久しぶりです、パラットさん。私は戦闘は得意ではないので、力になれているなら幸いです」
彼女の名はレミエント。王国の戦闘場の管理人だ。
【神器:戦場ノ杖】
レミエントの杖は、指定した相手同士の殺傷結果を無効化し、「誰も死なない」結界を展開する。最大十人まで対象にできる。
「パラットはわかってんだろ? アイツの直したほうがいいところ」
イアの問いに、パラットは静かに頷く。
「イアさんの直感は流石……です。クロカミさんは強い。恐らく鍛えれば、シュラさんも越える器はあると思う……です。――でも」
「ーーだろ?」
イアはパラットの答えを言い当てる。
「あれでは、命がいくらあっても足りない……です。だから今、気づくべきなんです」
「変わったな、パラット。昔のお前ならアドバイスすらしなかったぜ。――イッシンは特別か?」
「はい。“イッシンさん”は特別です」
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時は少し遡り、訓練開始前。
「ルールを説明する。ここにいる全員に札を配る。その札を“すべて集めた一人”に、アタシと戦う権利をやる」
内容は単純明快。全員から札を集めるサバイバルだ。
「サバイバルルールか……徒党を組むのもアリってわけだな」
「一応メンバーを紹介する。こいつがイッシン。右から、マク、ユミコ、リツコの三人」
「イアさん、この人たちは?」
「アタシの元チームのメンバーだ。強さは折り紙つきさ」
さらに俺は杖の女へ視線をやる。
「あの人も訓練に参加するんですか?」
「初めまして。私はレミエント、ノヴァリスの戦闘場の管理人。今日は君たちの訓練の補助をする」
「挨拶はここまで。レミエント、頼む」
「では皆、私の近くへ」
四人がレミエントを囲む。杖が地面に突き立てられ、同じ紋章が刻まれた。
「なんだこれ!」
焦る俺に、レミエントは淡々と告げる。
「これで全員、心置きなく“殺し合い”ができる。結界内で致命傷を負っても、痛みは伴うが死なない」
「よし! お前らは先に森に入れ。――イッシン、お前は武器を選べ。三人を相手にする武器を」
倉庫から運ばれた道具と、剣・槍・銃が一通り並ぶ。
「なら、俺はこれを……!」
「戦闘は一時間後に開始。合図と同時に“何でもアリ”のサバイバルだ」
そして俺も、森へ入った。
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森に入った俺は、すぐ散策を始める。
使えそうな物、逃げ道、地の利――。
「ある程度、道は把握した。あとはどこで戦うか、だが……」
その時、甲高い音が森に響く。戦闘開始の合図だ。
同時に矢が飛ぶが、冷静に回避する。
「やっぱり狙ってきたか……でも弓の位置が割れれば終わりだ」
暗がりから、もう一人が飛び出す。
「ユミコ、前衛は任せな。後ろから狙ってろ」
現れたのはマク。俺を挟む形で、マクとユミコの二対一。
「恐れていた展開が現実になったか。……これがサバイバル」
「卑怯とは言わせねぇぞ、兄ちゃん。アタシらもイアさんと戦いてぇんだ」
マクの腕が獣の形に変わる。
「アタシの二つ名は“熊腕のマク”。死なねぇらしいから、思いっきりいくぜ!」
一撃で地面が大きく割れる。人を軽々と粉砕する威力。
「なんて力だ……それに――」
マクを躱した直後、背後から矢。俺は読んでいたかのように転身して回避する。
「この連携が厄介だな……まずは分断だ」
イッシンは懐に手を入れ何かを掴む、間合いを測る。
(次の動作に入る“その瞬間”――)
マクとユミコが同時に構えへ移る刹那、イッシン何かを叩きつけた。
「一旦、視界もらうぜ!」
白煙が爆ぜ、周囲を覆う。
「くそっ、煙玉か! 見えねぇ!」
「攻撃のモーションに合わせて来た……あの人、戦い慣れてる」
煙が晴れた時、俺の姿はもうなかった。
「そう遠くへは行ってない。だが、この暗さじゃ手間だな」
「大丈夫、マクちゃん。……忘れてない? 私の“本当の武器”」
「そうだったな。頼むぜユミコ」
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「はぁ……はぁ……撒けたか?」
暗い森を全力で走り、なんとか二人を振り切る。呼吸を整え、状況を整理する。
「現状、“弓使い”と“獣化する腕”。近接をまともに食らえば致命だ……でも捌けないわけじゃない。問題は弓――」
二人相手ですら厳しいのに、まだ三人目の姿が見えない。最悪、三人同時の可能性がある。
「一人ずつ倒す術があれば……」
その時、肩に鋭い痛み。矢が深く突き立った。
「あの距離じゃ肩が精一杯…か」
「ナイスアーチだ、ユミコ!」
茂みの奥からマクとユミコが現れる。
「なんで……この場所がピンポイントでわかった?」
逃走経路は読みにくいルートを選んだ。普通なら追いつけないはず――。
「私の“本当の武器”は弓じゃないの……この探知機」
ユミコの片眼鏡が、淡く光る。
「なるほど。俺は勘違いをしてたってわけだな」
「第二ラウンドといこう、兄ちゃん。ユミコ、後ろは任せた」
ユミコがマクの背後に回り、闇へ沈む。
「今度は逃がさねぇ! ここで終幕だ!」
マクが地面を殴り、飛礫の波が襲いかかる。
(広範囲――これは躱せねぇ。なら)
イッシンは背中から鉄槍を素早く構える
その鉄槍を回転させ、飛礫の大半を叩き落とす。だが、すべては捌ききれない。
「槍をそんなふうに使う奴がいるとはな」
「あんたのその腕の武器も大したものだな」
マクの顔がわずかに曇る。
「これは“武器”じゃねぇ。紛れもないアタシの体の一部――アタシは獣人さ」
「獣人、だって?」
獣人は古くからいる人間と獣のハーフ。人を凌駕する力を持つが、その容貌から迫害も受け、今は数少ない。
「アタシは血を継いでるだけで、普段は普通だ。けど怖がられることは多かった……でも、イア姉さんは違う。あの人に差別はねぇ。だから認められたい――この訓練でお前に勝って、姉さんに勝負を受けてもらう!」
再び地面を打ち、飛礫が弾ける。
「それはもう見た!(ダメージは喰らうが弾き落とす)」
鉄槍で飛礫を落とす。だが終わり際――闇から矢が飛ぶ。
「ぐっ……また弓矢か。やっぱり位置を正確に把握されてる」
「ほら……隙だらけ!」
二人の連携は止まらない。マクはイッシンの懐に一撃を繰り出す。しかし既んでの所でガード
痛手は避けたがダメージは大きい
「クソッ……連携が止まらない。どう崩す……!」
――サバイバル訓練は、急展開で幕を開けた。
今回からイア編になります。
急遽話の内容が変わったため変な表現があるかも知れないですが温かく見守ってください




