【2章】戦闘神姫 第10話 星と赤き欠片
パラットの放たれた一撃は、通った道を破壊し凍り尽くした。
「見事だ……」
パラットの切り札である《氷牙重砲ひょうがじゅうほう・熊砲ゆうほう》は、アルギエラの上半身だけを残し、すべてを喰らい尽くす。
まるで、冬眠から目覚めた熊のように。
「やった……勝った……」
安堵した瞬間、体から力が抜け、膝から崩れ落ちる。
その時、ダンジョンが大きく揺れ始める。
「クロカミさん、もうすぐ塔が崩壊します……急ぎましょう。」
ダンジョンの守護者がいなくなった時、ダンジョンも姿を消そうとしていた。
「小僧……見事だった。最期に名前を聞かせてくれ。」
アルギエラは最後の命を振り絞り問いかける。
それは一人の戦士として――。
「クロカミ・イッシン。……ノヴァリス王国の戦士。」
「イッシン……?」
イッシンの名前を聞いた時、アルギエラはあることを思い出す。
ーーー
「もし、イッシンという男に出会い、お前がもし負けるようなことがあれば“コレ”を渡してくれ。」
男はアルギエラに赤い欠片を渡した。
「これは何かの宝石か?」
「あぁ……俺からの試練だ。
ただ、やるからには全力で倒せよ、アルギエラ……」
そしてアルギエラは、その欠片を飲み込んだ。
ーーー
その時、アルギエラは自らの胸を素手で貫く。
「お前、何してるんだよ。」
「持っていけ、イッシンよ……主はお前にこの石を渡すように伝えた。」
イッシンは赤く輝く欠片を受け取った。
「さらばだ、イッシン……楽しかったぞ、お前との戦闘は。」
アルギエラは目を閉じた。
「なんなんだよ……この欠片は……」
塔が激しく揺れ出す。
もうすぐ崩壊の合図だということは察した。
「クロカミさん、急ぐ……です!」
「おい! クソガキ、早くしろ! 生きて帰るんだろ!」
イッシンは謎の欠片を手に、塔の出口を目指した。
大きな音と同時に塔が崩れ落ちる。
三人とも辛くも無事、脱出に成功した
「さて、戻ろうか。シュラさんに報告しなきゃな……」
イッシンは少し肩を落として話す。
「そうですね。私も気がかりな点がありますし……それと、なんでガッカリしてるんです?」
パラットは単刀直入に聞く。
「あぁ。今回の任務はあくまでも“単独でのボスの撃破”だったろ?
俺には無理だったよ……」
「クロカミさんは、あくまでBランクのボスの単独撃破……です。
守護者はそれ以上でした。
それに……貴方がいなければ、私たちは死んでました。
自信を持ってください。私が保証する……です。」
パラットの評価は、イッシンの心の支えになった。
「じゃあ俺はここで失礼するぜ。」
「あぁ、結局オッサンには助けられたな……って、抜け目がないな。」
ハンターはしっかりと宝を持ち出していた。
「いずれ、黒猟会こくりょうかいに入るために貢献しなくちゃならねぇからな。
その時は依頼を格安で受けてやるよ。」
「あぁ。頼むことは無いと思うが、元気でな。」
ハンターの背中を後に、俺達もノヴァリス王国に戻り始める。
ーー
塔の崩壊の少し前……
「我が魂の騎士アルギエラよ、逝ってしまったか……」
アルギエラの目の前に謎の男が立っていた。
「今までよく闘ってくれた。安らかに眠ってくれ。」
「……様。塔が崩壊します。離れましょう。」
「あぁ。行こう。」
(サヨナラだ、我が星よ。
その時が来るまでの別れだ。)
いつも読んで頂いてありがとうございます。
パラット編っていうのも違うと思いますが今回でパラットとの物語は一旦終了となります。次回以降、新たな戦闘姫達が活躍すると思いますので引き続き読んでいただければと思います。今回短くてすいません




