表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘神姫  作者: 柳井
18/32

【2章】戦闘神姫 第7話 獅子王の焔の騎士アルギエラ

扉を開けた先に待ち受けていたのは、ハンター一味の頭だった。

「た、助けてくれぇ!」


怯える男をイッシンが押さえる。だが、パラットの目つきが冷たく変わる。


「一体、何があった?」

イッシンが問いかける。


「こ、このダンジョンはレベルが違うんだ! 俺たちの推測は難易度“B”。でも、中階の蜥蜴人から明らかにおかしくて……!」


「つまり、仲間を置き去りにしてでも先へ登り、ボスだけ倒せると踏んだ……ですか」


パラットの銃口が、男に向く。


「そ、そうだよ! 人数さえいればボスなら――」


パァンという音が鳴り響き氷弾が男の足元を穿ち、床が白く凍る。

「ひぃぃっ!」


「偉そうに喋るな……です。質問にだけ答える、です。――どこの依頼を受けた」


脅しより冷たい、無機質な声だった。


「お、俺たちは“黒猟会(こくりょうかい)”に入りたくて……手土産に神器を渡そうとしただけなんです!」


「その黒猟会に、“赤黒い瞳”の男はいる、ですか」


男は逡巡し、首を振る。

「何度か黒猟会と仕事はしたが、赤黒い瞳の男は見たことがない……知ってるのは、それだけだ。許してくれ……ただ――」


言い終える前に、扉の奥から豪炎が噴き上がり、部屋を呑み込んだ。

「な、なんだ!?」


炎の帳の向こうから、人影が歩み出る。

「人……なのか?」


「クロカミさん、避ける……です!」


炎を帯びた腕が空を薙ぐ。イッシンは紙一重で躱した。

「腕から炎……!?」


「こ、こいつに仲間は皆やられたんだ……!」


姿を現したのは、灼熱を纏う鎧の騎士。

「我は獅子王より生まれし焔の騎士――《アルギエラ》。この宝を護る守護者なり」


「こいつが……守護者……! わかる、オーラが違う……!」


蜥蜴人とは比較にならない圧。熱と威圧が背を撫でる。

「“話す”守護者なんて、ほとんど聞いたことがない……です」

パラットは白銀を思い出す。意思を持つ守護者――それは白銀と同格の異質さ。


その時、ハンターの頭が背を向けて叫ぶ。

「お、お前たち! 後は頼んだぞ!」


言い捨て、扉へ逃げ出した。

「愚か者。この聖域から出られると思うな」


直後、塔全体が轟音で震える。

「この塔の入り口を塞いだ。出たくば、我を倒すしかない」


「た、助けてくれ! 無事に出られたら、何でも協力する!」


イッシンは短く息を吐いた。

「仲間を置いて逃げるお前を助ける義理はない。……けど、俺たちに後退はない」


「パラットちゃん、改めて言うよ。後ろは任せた!」

イッシンが剣を構える。呼応して、パラットも銃を上げる。

「援護は任せる……です!」


戦いの口火を切ったのは、パラットの速射だった。

二丁の銃口から連ね撃ちされた氷弾が、騎士の焔を削り取る。


同時、イッシンが鋭い踏み込み。

「はぁッ!」

落雷のような斬撃がアルギエラを襲う。


「甘い――!」

火花。斬撃は騎士の剣に弾かれた。


「中々の連携だ。小僧も小娘も、よく鍛えられている」


アルギエバは微動だにしない。挑戦者を待つ門番のように、位置を崩さない。

「……つまり“挑戦者”ってわけだ」

イッシンの口角がわずかに上がる。鎧を包む炎が、再び勢いを取り戻す。


「やはり……です」

パラットは“炎の特性”を読んでいた。

――鎧の内から発される焔が外殻となり、纏っている間は打撃が通りづらい。


「炎の相手なら、私が一番知っている……です」

氷弾の連射。命中の瞬間、鎧の焔がしぼむ。

「クロカミさん、今……です」

「わかってる! 今度は受けさせねぇ……!」


パラットの速射に合わせ、さらに速い踏み込み。

「まずは、その鎧を――!」

袈裟の刃が装甲を確かに捉える。だが、あと一歩。破断に届かない。


「くっ……あと少し……!」

「それで充分……です」


斬撃の余韻、その死角からパラットが滑り出る。

白虎烈刃びゃっこれつじん


一発の“牙弾”が亀裂へ食い込み、獣の爪のように鎧を切り裂いた。


「すげぇ……これがパラットちゃんの神器……!」


【神器:氷牙銃ひょうがじゅう虎白こはく

神獣・白銀より授かった二丁拳銃。

放つ氷弾は周囲の水分から補填可能。威力は使用者の気力で可変。


「弾かれずに切り裂くなんて……神器ってすごいな」

「クロカミさんが亀裂を入れたおかげ……です。さすがに連発は無理……です」


その時、アルギエラの鎧が再び燃え上がる。

「鎧が……再生していく……?」

切り裂かれた装甲が、焔に包まれ元通りへ。


「今のは肝を冷やしたぞ。よかろう、我も本気を出そう」


先ほどよりも重い熱が広間を満たす。

「クロカミさん……腹を括ってください。おそらく、DA(ディストラクションアームズ)DB(ディストラクションビースト)、クロカミさんが戦った神器使いよりも実力は上……です」


パラットは冷静に分析しつつ、内心は焦っていた。――イッシンには荷が重いかもしれない。

だが、イッシンの顔を見て、その不安は払拭される。


「心配はなさそう……ですね」

「ごめん。さっき叱られたけど、心が燃えてる。こんな敵、見たことがない」


「……お前ら、化け物かよ」


イッシンたちはまだ知らない。

アルギエラの本当の強さを――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ