【2章】戦闘神姫 第2話 戦闘姫部隊任務開始!
シュラに連れられ、重たい扉を押し開ける。
ここに、シュラの信じた仲間たちがいる――そう思うと胸が高鳴り、少し緊張した。
「全員いるな。……新しいメンバーを紹介する」
シュラの声に、視線が一斉にこちらへ向く。
「イッシン!?」
真っ先に声を掛けてきたのは、見慣れた赤髪――アヤカだった。
「アヤカ!? お前、シュラさんの部隊だったのか……」
思えば、彼女と別れたあと何も聞いていなかった。まさかここで再会するとは。
「俺の部隊は戦闘姫が主体だ。……各自、自己紹介を」
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「私は知っての通り、アヤカよ」
【カガリ・アヤカ】
イッシンの幼なじみ。冷静に戦況を読む技巧派。赤いツインテールが目を引く。神器は太刀型【火王鬼哭】。
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「よ、よろしく……です」
【マリア・パラット】
小柄な白髪の少女。臆病で恥ずかしがり屋だが、動物を傷つける者は絶対に許さない。神器は二丁拳銃型。
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「おう! よろしくな!」
【ヨルズ・イア】
金髪ポニーテールの豪快な女性。言葉も振る舞いも男勝りだが、どこか憎めない。神器は巨大な大剣。
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「君が新人くんね! よろしく!」
【リュー・レイカ】
青髪ショートで明るく快活なお姉さんタイプ。世話焼きな性格。神器は双短刀。
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「クロエはどうした?」
シュラが名を呼ぶと――背後に影が立つ。
「私ならここに……」
「うわっ!? よ、鎧!?」
重厚な鎧姿が現れ、思わず声を上げる。
「これは趣味だ。本当の神器は、この三叉槍だ」
【サヴィーシャ・クロエ】
鋼の鎧を纏う戦闘姫。その素顔は謎に包まれている。神器は三叉槍。
「これで全員か?」
俺が尋ねると――
「僕もいるよ」
背後から軽い声。振り向けば、忍装束の少年が音もなく立っていた。
「僕の名前はフーマ。この部隊では偵察を担当してる」
【フーマ】
忍者のような装いの青年。年はイッシンと近い。【フーマ】一族という忍の家系で全員がフーマと呼ばれる。今はシュラの側近
「ちなみにフーマはずっとお前の後ろについていたぞ。気づかなかったのか?」
シュラの言葉に息を呑む。全く気づけなかった。さすがは偵察役だ。
「フッ……それと、お前よりも強い。しっかり鍛えてもらえ」
――流石は精鋭部隊。みんな俺より強い。一年で追いつく。ここで覚悟を固める。
「紹介も済んだところで、さっそく任務の話だ。
俺とイッシンは各地に散らばった神器の回収に当たる。……ただし、俺には国王護衛の任もある。そこで――お前たちには監視兼支援として動いてもらう。状況次第では俺も同行する」
シュラは要点だけを短く告げ、部隊を見渡した。精鋭揃いの彼女らなら、たとえ単独でも十分に動ける――それが前提にある。
「私は手伝うわ」
真っ先に声を上げたのはアヤカだ。
「イッシンがいなかったら、私はあの笛使いに負けてた。次は私が助ける番よ」
「新入りぃ?お前がアヤカを助けたってわけか?」
イアが前に出て、圧をかけてくる。
「助けれた訳じゃない…結果的にアヤカが助かっただけで…」
「ハッ!根性はあるじゃねぇか。気に入った、アタシも手伝うぜ」
ぐいっと肩を組まれ、アヤカの視線がちょっとだけ鋭くなる。
「私たちも手伝うわ! 今日からあなたは仲間なんだから」
レイカが場をまとめ、輪が自然と締まる。
「みんな……ありがとう」
ウエポンズですらない自分を、ためらいなく「仲間」と呼んでくれる――胸の奥が熱くなった。
「任務の詳細は後日通達する。今日は解散だ。……俺はこのあと別件がある」
そう言い残し、シュラは会議室を出ていった。
俺も隊舎を離れ、自宅へ向かわず山へ向かう。
「一秒だって無駄にしない。――役に立つ」
剣を振る。国を、仲間を守るために。
――その頃・軍司令部 会議室。
「すまん、リーガル。昼間の任務案を緩和してほしい。奪われた神器はおそらくネフィリス軍内。今攻めれば戦争だ」
「啖呵を切るのは得意だが、後先を考えない。――お前の悪癖だな、シュラ」
リーガルは短く息を吐き、頷いた。
「任務は緩和する。条件は二つ――
一つ、将軍級の力量を示すこと。
二つ、盗難分を上回る神器の純増を確保すること。……それから」
リーガルは一枚の書類を滑らせる。
「シュラ。おそらく国内に他国と通じる者がいる。接点を洗い、尾を掴め」
「了解した」
先の襲撃の“良すぎるタイミング”が、シュラの脳裏をかすめる。
「早急に対処しなければな」
――数日後・部隊施設。
俺はシュラに召集された。集まったのは俺とパラット。白髪の小柄な戦闘姫は、きゅっと拳を握る。
「情報屋から連絡が入った。神器が眠る“遺跡”が出現した」
「出現した……?」
「そうだ。何もなかった土地に遺跡や塔が突如として立ち上がる現象がある。経験上、内部に神器がある確率が高い」
シュラが地図を広げる。
「目的地はここ。先行偵察はフーマが入る。現場ではパラットの指示に従え」
パラットが小さく頷く。
「よろしく、です」
俺は戦闘姫・パラットと共に“遺跡”へ向かう。
――そして、戦闘姫たちの強さを改めて知ることになる。