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霧羽馬高校旧校舎

 あたしと穂澄(ほずみ)は懐かしい光景の前に立っていた。目の前にはベージュ色の壁と開放された真白い塗装の門扉がある。初夏を迎えた太陽に照らされた生い茂る桜の葉が眩しい。

 私立霧羽馬(きりはま)高校。創立七十年。偏差値は中の下。洒落たデザインの制服が人気のよくある私立高校だ。

 懐かしいとは言ったが、別にあたしたちは霧羽馬高校出身じゃない。単に校門の前に立つっていう学生でもなけりゃ見ない光景にノスタルジーを感じただけだ。

 校門の脇に立つあたしたちを避けるように、若々しい高校生が通り過ぎていく。当たり前だが、好奇の視線と不審げな視線が浴びせられる。

「……気まずいわね」

「まあ、仕方ねーだろ」

 人見知りが発動している穂澄は高校生の視線に耐えられないのか、あたしの影に隠れようと縮こまっている。あたしは比較的に背が高いが、流石に成人女性を隠せるほどの体格はないので、ほとんど気休めなのだけど。

「不審者扱いされる前に何とかしてほしいわ」

 今にも袖を掴んできそうな悲壮な表情で穂澄は言った。

「向こうがこの時間に来いって言ってんだから、そんなに待たされはしないんじゃね」

 女子の集団がきゃっきゃっしながら通り過ぎていく。不思議な感覚だ。ほんの数年前まであたしも高校生だったのに、あの頃のキラキラしたエネルギーはどこに行ったんだろう。その集団が会話を止めて、こちらをちらちら見てくる。

 どうしたもんか、と思いながら精一杯カッコつけた顔で、ちょっと手を振ってあげた。

「きゃー!」

 黄色い悲鳴が上がる。

 ちょっと面白い。芸能人ってこんな気分なのかな?

「何やってるの……?」

 穂澄のあきれた声が聞こえる。

「いや、なんとなく……」

「本当に不審者にされるわよ」

「手ぇ振っただけで?」

「今時、視線を向けただけでも危ういのよ」

 そんな益体もない話をしていると、登校する学生の波に逆らって、スーツ姿の若干禿げて眼鏡をかけたザ・教頭みたいなおっさんがこちらに向かってきた。

「ご足労をどうも。探偵社の方ですね?」

「はい」

「ここでは目立ちすぎますので、こちらにどうぞ、ご案内します」

 教頭(かどうかは定かじゃないが)に連れられて、あたしたちは校内へと足を踏み入れた。ますます目立ってしまったが、先生と一緒だからか、好奇の視線は少し和らいでいる気がした。

 懐かしさを感じる靴箱の並びを抜けて、学生時代は履いたこともない来客用のちゃちなスリッパに履き替える。学生の波とは別方向に歩いていく。ざわめきが遠くなり、リノリウムの廊下にパカパカというスリッパの音が響いている。

 教頭に案内されたのは応接室だった。

 応接室なんてあんまり入った経験がないけど、そこそこ立派に見えた。少なくともハッピー探偵社の事務所よりは高級感がある。

「少しお待ちください」

 教頭に促され、ソファに座った。このソファも事務所のやつより座り心地がいい。教頭が出ていくと入れ替わりで、おばちゃんが熱い緑茶を運んできてくれた。事務員か何かであろうおばちゃんの瞳の奥には好奇心が渦巻いていたが、何も言わずに応接室を出て行った。ここで好き勝手にしゃべらないだけの良識があるようだ。

「あの教頭、校長でも連れてくんのかね?」

「あの人は教頭なの?」

「あ、いや、雰囲気だけの予想」

「……まあ、わかる」

「やっぱそう思う?」

「あの容姿だとね。なんか漫画に登場する教頭みたい、とは思っていたわ」

 穂澄の口はやや軽くなっている。高校生の視線から逃れたせいか、今回の依頼のせいかはわからないけど。

「あたしだけがそう思ったんじゃなくて安心したよ」

 あたしは軽く相槌を打ちながら、熱いお茶を啜り、七篠(ななしの)のおっさんの話を思い返した。



「依頼料は三百万。君たちの取り分は二百十万だ」

「悪くないじゃん」

 いつも通り、七篠のおっさんは金の話から依頼の説明に入った。

「依頼者は私立霧羽馬高校の教員だ。二年生四名が行方不明になっている。依頼内容はその行方不明の学生四名の安否確認だ」

「安否確認? どこ探すんだ?」

「霧羽馬高校の校内だ。四名は校舎内で行方がわからなくなっている」

 こりゃまたキナ臭い話だ。高校の敷地内で行方不明ってだけでも異常なのに、校舎内で行方不明と来てるんだから、これは超常的な話だろう。

「前提確認させてくれ。警察、家、連絡は?」

「警察の捜索では学生の発見に至っていない。家にも帰っていない。あらゆる知人が連絡を試みたそうだが、一度も返事はない。メッセージも未読のままだ」

「わかった」

「二つ、重要な情報がある」

 七篠のおっさんは珍しくそんな前置きをした。あたしは姿勢を正したし、隣の穂澄の表情は引き締まった。

「一つ目。霧羽馬高校には噂話がある。『人喰いの校舎』という噂だ。旧校舎に立ち入った者は何かに喰われて殺される、という内容らしい」

「まさか……」

「そうだ。行方不明になった四人は実際に旧校舎を訪れて、行方知れずになっている」

「…………」

「二つ目。旧校舎を訪れたのは五人だった。五人のうち一人だけが旧校舎で発見されている」

「それなら」

「ただし、その一人は、非常に混乱している。原因は不明だが錯乱状態でまともに状況を説明できる状態ではない。当然、何が起こったのかもわかっていない」

「……なるほど」

「今回の君たちの仕事は、校舎内で起こった行方不明事件、その行方不明者の安否確認になる」

「……そんな危ない噂があるとこに行くなんてな」

 言うつもりはなかったが、思わずつぶやいてしまった。

 あたしのつぶやきが聞こえたのだろう、七篠のおっさんは平然と言った。

「君たちはよく知っているだろう。あの年頃が持つ危うい好奇心を。怪異に惹かれる軽率さを」

「…………」

 ああ、あんたの言う通りだ。あたしも穂澄も、嫌って程に身に染みてるよ。その好奇心と軽率さのせいで、あたしたちはこうなっているんだから。


 扉が開く音がして、意識が引き戻された。さっきの教頭っぽいおっさんとロマンスグレーの精悍な顔つきのおっさん、三十過ぎぐらいの眼鏡の女性が入ってきた。三人はあたしたちの対面に腰かける。

「ご足労ありがとうございます。校長の里見(さとみ)です」

 ロマンスグレーがそう言った。

「…ハッピー探偵社のホムラと」

「ナギサです」

 いつものように偽名で挨拶する。

「こちらは教頭の芝月(しばづき)先生と担任の芳川(よしかわ)先生です」

 若干ハゲはやっぱり教頭だった。

「早速ですが、本題に入らせていただきます」

「はい。おねしゃす。今回の件について、あらましは七篠から聞いてるんで、確認だけさせてください」

 あたしは七篠のおっさんの依頼内容を校長に確認していった。

 内容にズレはない。

 二年生が五人で旧校舎に立ち入り、一人を除いて行方不明になった。連絡はつかない。警察も発見には至っていない。どうにかして見つけなければならない。

「すでに行方不明が発覚してから五日経っています。警察は通常の手段で捜索を実施してくれましたが、手掛かりすらありません」

 五日。学校側が焦る気持ちは痛いほどわかる。五日もあれば、何が起こっていても不思議じゃない。最悪の可能性も大いにありうる。

 気持ちが(はや)るがまずは情報収集が先だ。

「具体的に旧校舎に入った証拠はあるんスかね?」

「別の学生が旧校舎方面へ向かっているのを見ています。それが最後の目撃情報です。教室でも旧校舎に行くということを話しているのを聞いた学生がたくさんいます。校門の監視カメラにも帰宅する様子は映っていません」

「了解っス。ところで、旧校舎には『人が喰われる』って噂があると聞いてんスけど、ご存じですか?」

「……それは、まあ、はい」

 急に歯切れが悪い。まあ、いい歳こいた大人がそんな噂話を信じるってのも苦痛なのかもしれない。

「噂の詳細な内容はわかります?」

「…………」

 そこで三人の教師は目配せし合い、最終的に校長が意を決したように口を開いた。

「『旧校舎の四階に、十六時以降に立ち入ってはいけない。立ち入った者は校舎に食べられていなくなる』です」

「ふむ……」

 噂話にしてはまあまあ情報が出揃っている気がしないでもない。

「ちなみにこの噂はいつごろから存在するんスか?」

「わかりません。私が赴任した時にはすでにありました。おそらくずっと前からささやかれているのだと思います」

「それは先生方の間でですか? それとも生徒の間でですか?」

「生徒の方が詳しいでしょうね。どっちからという区別はあいまいです。関係者ならばいつかどこかで聞いて、いつの間にか知っている、という感じです」

 なるほど。口伝で語り継がれる話らしい。よくある学校の怪談話と片付けてもよさそうだが、そうじゃないのだろう。あたしはちらっと穂澄に目配せする。穂澄も何か聞きたいことがあるかもしれない。

「……こういった噂が広がる理由に心当たりはありませんか? 例えば過去にも同様の行方不明事件があったとか」

「……行方不明というわけではありませんが、面白おかしく噂の栄養源になる出来事はいくつかあったと聞いています」

「というと?」

「十年前に不法侵入事件があったのですが、その犯人は捕まっていません。それが校舎に喰われたせいだとか、三十年ほど前に夜間の警備員が夜逃げしたことを、実は旧校舎に入ったんだとか」

「噂を補強するというか、牽強付会できる内容だということですね」

 穂澄が頷く。校長は一瞬のためらいのあと続けた。

「実は、旧校舎の四階は普段は立ち入れないようになっています。旧校舎の三階までは普段から部活動などで使用しているのですが」

「それはなぜですか」

「古い決まりでして。前任の校長も同じように引き継いでいると聞いています。四階は老朽化が一番進んでいるとか、部活の数を考えると四階は使用する必要がないとか、倉庫として使用するために、普段は立ち入らない、というような理由だそうです」

「…………」

 穂澄が黙り込む。あたしも許されるなら天を仰ぎたい気分だった。

 明らかに何かある。

「なにぶん、赴任前の話なので、詳細は不明です。ただまあ、四階が荒れているのは事実ですので、あえて使うこともありません」

「わかりました。行方不明になった生徒はどのような生徒でしたか?」

「こちらが行方不明になった生徒の顔写真です」

 四人分の写真が出てきた。青い背景で制服姿なので、学生証か何かに使われているものなんだろう。顔の下に名前が書いてあった。

 男が二人と女が二人。黒髪で目つきの悪い男、権藤空斗(ごんどうからと)。金髪ツーブロックでごついピアスの男、国広祥(くにひろしょう)。濃い茶髪でねめつけるような鋭い視線を向けてくる女、伊茨城麗(いばらぎれい)。金髪ショートカットで化粧が濃い女、伏木姫(ふしぎひめ)

 こりゃ時代錯誤みてーなヤンキーじゃないか。見た目で判断したらダメとは言っても、これはどう見てもヤンキーだろう。やんちゃやら無茶やらをしそうなタイプ。校則なんて知ったことか、ルールは破るためにある、とでも言いたげな雰囲気が見て取れる。

「この生徒たちは怪談や噂話が好きなタイプだったのですか?」

 穂澄が写真に目を落としながら訊ねた。

「あまり聞いたことはありません。どちらかというと信じていないような雰囲気でしたね」

 校長に代わり、担任だっていう女の先生が話し始めた。

「どちらかと言えばやんちゃな子たちだったので、お遊び半分の度胸試しのつもりだったんじゃないかと思います。肝試しに行くような感覚だったのではないでしょうか」

「なるほど」

 今となっては愚かな行為だと痛感するけど、普通なら肝試しをしたところで何の問題もない。行方不明の生徒は運悪く、アタリを引くことになったのだろう。

 穂澄が目配せを返してきた。とりあえず、聞きたいことは聞けたらしい。

「じゃあ、さっそく調査に入ります。校内って自由に歩いても大丈夫っスかね?」




 里見校長は私たちに「生徒には正体を明かさないように」とだけ伝えると、校内を自由に調査する許可をくれた。入校許可証と旧校舎の鍵束までつけてくれる大盤振る舞いだ。

 行方不明の生徒を見つけ出すのに、なりふり構っている暇がないってことね。

「どうみる?」

 燈火(とうか)と連れ立って旧校舎を目指しながら歩く。授業中の校内は意外なほど静かだった。

「……まずいでしょうね」

「だよな……」

 旧校舎には『なにか』あるのはほぼ確定していると見ていい。そこにむやみに踏み込んだ以上、ただでは返されないはずだ。

「たぶん、あの先生たちがいない時代に何か、決定的なことがあったはず。そこから四階を使うことを制限してるんだと思うわ。あの四階を使わないフワッとした理由の羅列は、事実をそのまま伝えられないけれど、制限をかけたい気持ちの表れでしょう」

「なんで事実をそのまま伝えなかったんだろうな」

「想像するしかないけれど、校舎で人が消えたからなんて言っても、誰も信じてくれないと思ったとかでしょうね」

 旧校舎は敷地の一番奥にあった。外観は普通の校舎だ。四階建てで、校舎としては小さい方だろう。旧校舎だけあって相応に古びている。少し曇ったガラス窓が並び、外壁は黒ずみやヒビが目立つ。外周に近く外からの目隠しのつもりなのか、校舎の周囲には桜の木がたくさん植わっている。木々のせいで日当たりが悪くなっており、外観と相まって不気味さが増していた。

「どうだ?」

「特に何も」

「あたしも反応はない」

 燈火が立てた指先を見ながら言う。

「たぶん、反応はないはずよ。噂が確かなら、ここは十六時にならないと何も起こらないはずだから」

「ま、警戒はしておくよ」

 燈火とともに旧校舎の中に足を踏み入れた。

 いたって普通の見た目だ。廊下は土足でいいらしく、靴箱の類は見当たらない。目の前には階段があり、廊下の方には教室が並んでいて『文芸部』や『工作部』というプレートが見えた。

「部活で使ってるって言ってたけど、文科系の部室棟ってとこか」

 チクリと胸の奥が刺激された気がした。高校生だったころの記憶が蘇ってくるようだった。あの頃は、部活動と称して燈火やみかんと延々と駄弁っていたのに。

 おっといけない。思い返すのはいいが、今は集中しなければ。舞台が舞台だけに、自分の後悔と苦悩に引っ張られないようにしないと。

「とりあえず、上がってみるか?」

「そうしましょう。四階以外は噂に関係ないしね」

 無言で階段を上る。三階を越え、四階へと続く階段の踊り場にたどり着いた。

「こりゃ、なんとも雑な封じ方だな……」

 燈火が嘆息している。

 踊り場を越えて四階へ向かう階段には机が重ねられており、それが人の行き来を阻むようになっていた。隙間は多いし、通行を封じるには数が足りていない。

 多少危ないけど、乗り越えることもできそうだ。安全を考慮するなら通れるようにどけてもいいだろう。

「倉庫として使ってるって話だったから、簡易的なのかもしれないわね」

 超常に対する意識としては落第だけど。

 一応の警戒として、机の壁の前で耳を澄ませる。何の音も聞こえない。

「聞こえないわ」

「あたしの方も反応なしだ……じゃあ、ちょっとどかしてみるか」

 燈火と二人で一人分ぐらいの隙間を作る。十分もかからずに通れそうな隙間が出来上がった。

「あたしが先でいい?」

「隙間を通るのはね。でも四階に踏み込むのは一緒で。万一、一人で閉じ込められたりしたらダメだから」

 燈火が腕を上げ、指先を突き出しながら机の隙間に体を滑り込ませる。指先に変化はない。私もすぐに続いた。

 最後の一段、四階の廊下と連なる部分に足をかける前にもう一度、耳を澄ませ、指先を確認したが、はやり異常はなかった。

「大丈夫そうね」

「だな」

 四階に到着した。構造は階下と違いはない。直線の廊下にガラス窓、対面に教室が並んでいる。違いと言えば教室のプレートに何も書かれていないことぐらいか。

 ずっと閉め切られているせいか、少しだけ埃っぽい。

 廊下にはうっすらと埃が積もっている。階段口の周りには足跡が目立った。

 燈火と一緒にゆっくりと廊下を歩く。微かに積もる埃に、薄い足跡が残った。どの教室も鍵がかかっていて、扉は開かない。いくつかの扉には、誰かが蹴りつけたような跡が残っていた。

 貸してもらった鍵束で鍵を開けて中を覗き込んだが、雑多な荷物やら埃をかぶったダンボールが乱雑に置かれているだけだった。

「家探しされたみたいな荒れようだな」

「実際されたでしょうね。警察の捜索が入っているはずだから、何か証拠を求めて、ひっくり返すように探したはず」

「あ、そっか」

「この荒れようだと、行方不明になった学生の痕跡を探すのは無理ね。まあ、警察が何も見つけていないなら、素人の私たちが見つけられるはずもないけど」

 廊下の足跡も大多数が警察のもののはず。

 そうやって一つずつ教室を見ていったが、目新しい発見はなかった。廊下の突き当りまで調べたが、怪異の兆候などはない。

 辿りついた端にも階段があって、こちらも同じように机のバリケードがあった。

「何もない」

「そうね」

「やっぱ時間か。次は十六時に調べないといけないな」

「リスキーだけどね……怪異の発生が高確率なのはわかってるから」

「でも、調べるだろ」

「ええ。仕事だし、少しでも助けられる可能性があるなら」

「ああ、頑張ろう。で、これからどうする?」

「そうね……」

 時計に目を落とす。まだ十時を過ぎたところだ。

「唯一の帰還者との面会が十四時からだから、それまでは二手に分かれましょう」

 七篠さんの情報によれば、帰還者は現在入院中らしい。この高校にほど近い、精神科病院に搬送されたという。七篠さんがどんな手管を使ったのかはわからないが、あの人は面会をセッティングしてくれている。

「二手って、どういう配分で?」

「燈火はここに残って、里見校長たちに中間報告してくれる? 十六時にもう一度、ここへ来るってことも伝えて。あとは休憩時間でもいいから、生徒から情報収集してほしい。私にはちょっと荷が重いから」

「おっけ。了解だ。穂澄はどうする?」

「私は図書館に行ってくる。過去の事件と来歴なんかを調べてみる。何かわかるかもしれない。それから病院に集合しましょう」

「わかった。こっちはうまくやっとくよ」




 穂澄と別れ、校長に報告を済ませた後、あたしは霧羽馬高校の図書室の奥に陣取って、霧羽馬高校の歴史資料を読み漁っている。生徒からの情報収集をしようにも高校生の休憩時間は短い。話を聞くなら昼休みみたいなまとまった時間が必要だ。

 穂澄と役割分担したってのに、同じようなことする羽目になるとはね。こういう資料あさりは穂澄の得意分野なんだけどなぁ。

 霧羽馬高校は意外と長い歴史があるっぽかった。今年は開校七十年記念イヤーらしい。輝かしい学校理念とか、初代校長のダレソレの言葉やら、部活動の活躍やらが延々と書かれている。

 来歴の記録だけあって、いいことばかり書いてある。後ろ暗いことや不穏な記述はない。今のあたしが求めているのは、不穏な事件や奇妙な出来事なわけだが、そんな描写は一切なかった。こっちの情報は穂澄に期待した方がよさそうだ。

 唯一、有益かも知れない情報は、さっき調べていた旧校舎ができた時期ぐらいだ。旧校舎は設立当初からある。今の校舎がある場所も昔は同じように古い校舎があったらしい。新しい校舎に建て替わったのが二十五年前。残っている旧校舎は建て替えられずにそのまま今に至っている。

 これが何を意味するのか。

 もしかすると壊せない理由があったのかもしれない。例えば四階のせいとかで。

 あくまであたしの想像だけど。

 疲れた目を休めるために眉間を揉んでいると、チャイムが聞こえた。どの高校でも同じ音が鳴るらしい。

 昼休みだ。

 ちょっくら行ってみようじゃないか。

 司書の先生にお礼を言ってから、図書室を出た。昼時に学生が集まる場所、食堂へ突撃しようかと思って、中庭に出るといきなり叫び声が聞こえた。

「あーっ!」

 声の方向へ顔を向けると、女子高生の一団が芝生の上でお弁当を広げているところだった。

 どっかで見た記憶が……あ、今朝、あたしが手を振った一団だ。五人がこっちを指さして、驚き顔でこちらを見ている。

「朝いた人!」

「やあ、今朝ぶりだね」

 様子からして避けられているわけじゃないと判断し、フランクに声をかける。歩み寄っても怖がられている雰囲気はない。

 あたしは比較的、年下の女子受けがいい。昔、みかんから「女子校でモテるタイプ」と言われたことがある。

「お姉さん、何? 実習生?」

「えー実習生? こんなまだら頭の先生いないだろ」

「じゃあ、何者なんですかー? 薄ハゲ眼鏡と歩いてたよね」

「薄ハゲ眼鏡……教頭のこと?」

「そうでーす。はじめ不審者かと思ったけど、薄ハゲ眼鏡に案内されてたから、関係者なのかなって」

「関係者というか……」

 さて、どう説明したものか。先公たちには正体を明かすなと言われているし、学校関係者に見える見た目でもない。

「あたしはホムラ……動画配信者だ。まあ、なろうとしている」

「ヨーチューブとかの?」

「ま、そんなとこ。今朝もう一人いただろ? あいつとコンビでやりはじめてるんだよね」

「え、なんて名前⁉ 見たい! なんてチャンネル⁉」

「まだ、配信は始めてないんだけど……コンビ名? えっと」

 はは、適当こきすぎて、何にも考えてなかった!

「ファイヤー&ウェーブ! あたしがファイヤーね」

 あたしの勢いに女子高生たちは吹き出したが、頭の中の穂澄が「ださい」と言っているのが聞こえた気がした。

「どんなジャンルなんですか?」

「占い、怖い話、オカルト」

「え! じゃあ、ウチの高校ぴったりな話がありますよ!」

「お、知ってる? 実言うと、その噂を取材しにきたんだよね」

 思ったよりも簡単に誘導できた。

 あたしが取材と言うと、女子高生たちは色めき立って口々に話始めた。

「勢いはありがたいんだけど、順番にいこう。聖徳太子じゃねーから聞き取れないわ」

 あたしは苦笑いで続けた。

「一応、取材だからさ、録音してもいい? みんなの声は絶対動画で流さないし、プライバシーは保証する」

 みんなが笑顔で頷くので、あたしはスマホの録音を起動する。

「旧校舎の話ですよ。『午後四時から午前四時の間に、旧校舎四階に足を踏み入れた者は校舎に喰われる』」

「ずっと昔から言われてるんですよ。あたしがきいたのは部活の先輩だけど、その先輩たちもずっと先輩から教えられてきたんですって!」

「音も葉もない噂じゃないんです。十年前ぐらい前に盗撮犯がいたんですけど、警察には捕まっていなんです。それは旧校舎に入ったせいなんです。喰われたんですよ!」

「そうそう、大昔は警備員とかはたくさん行方不明になってたらしいです。あまりにも行方不明者が多いから、警備員は廃止されたって聞きましたよ」

 先公から聞いた話とは細部が異なる。尾ひれがついているってことか、もしかするとこっちが正しいのかもしれない。

「いいね。生の情報はリアルで助かるよ。いい動画が出来そうだ。ちな、みんなは行ったことある?」

「えーないですよぉ。旧校舎に用事ないし。ウチらバスケ部なんで、部室から遠いし」

「四階は倉庫で立ち入り禁止だし、掃除してないだろうし、埃っぽそう」

 立ち入らない理由が現実的で、笑いが出そうだ。でも、実際そういうものなんだろう。

「そういや、噂で、最近行方不明者が出たってきいたけど、なんか知ってる?」

「…………」

 急に静かになる。こうなるかもしれないと思ってぶっこんだわけだけど、こうも落ちるか。

「ああ、権藤たちのことでしょ?」

「権藤? あたしは具体的には何も知らないんだけど」

「旧校舎に行くとか言ってたらしいですけど」

「別にどっか行ってるんだと思いますよ。家出とか。警察来てたし、どっかで事故ってんじゃないかって話です。とにかく迷惑な奴らだったから、いなくても困らないし」

「むしろ、いなくて助かる」

「校舎に食べられてても全然いい」

「校舎が食べてくれてたらいいのに」

 いっそ清々しい顔で女子高生たちは言った。

 おっと、これは意外な情報だ。先公は『やんちゃな子』という言い方だったが、だいぶオブラートに包んだ言い方だったようだ。この子らの反応を見る限り、相当嫌われている。もしくは先公たちは実像を正確に把握していないのか。不良、ヤンキーというような言い方ですらない。よほど、人様に迷惑をかけていたのだろう。高校生が同級生に向かって言うセリフにしては棘がありすぎる。

「めんどくせぇ奴らだったんだな」

「ほんとにですよ! ずっとうるさいし、カツアゲとかいじめられてる子もいたんですから!」

「なんで退学にならないのか不思議なぐらいです」

 口々に愚痴が出てくる。本当に嫌われ者集団だったようだ。

「大変だね」

 もう少し、ここをつついてみたいけど、流石にこれ以上は怪しまれそうだ。この子たちにとって、あたしが取材するべきは旧校舎の噂であって、行方不明者についてじゃないからな。

 それにあの言い方だ。たぶん、生徒たちには行方不明者の詳細は伝わっていないんだろう。いなくなっていることは知っているが、それが完全に行方不明ってことは原因を含めて、何も知らない。

「旧校舎に関係ない行方不明は置いとくか。他に何か旧校舎の話で知ってることない?」

 あたしが水を向けると、女子高生たちの表情がパッと明るくなり、また口々に事実とは思えない、尾ひれ胸びれ背びれが付きまくった噂を話してくれた。



 病院の正面玄関の前でたたずんでいると、一台のタクシーから穂澄が降りてきた。

「領収書を。はい『ハッピー探偵社』で」

 運転手とやり取りしてからこちらへ歩み寄ってくる。

「よっす」

「燈火、首尾はどう?」

「ぼちぼちだな」

 あたしは簡単に調査結果と穂澄に伝えた。旧校舎の噂と行方不明者の実像を。

「なるほど。生徒の間ではかなり尾ひれがついているようね」

 穂澄は行方不明者の悪行には触れなかった。予想していたのか、助けるという目的には関係ないからなのかはわからないが。

「で、そっちは?」

「ぼちぼちね。過去の新聞をさかのぼってみたけど、確かに侵入者があって捕まってなかったり、警備員の失踪事件もあった。詳細は噂の域を出ない内容しかなかったけど。それと、あの土地は霧羽馬高校が建つ前は病院だったみたい。病院自体は火事で無くなっていたわ。曰くと言えば曰くね」

「ふーん」

 確かに、焼け跡には怨念のような何かが巣くうこともある。

「後で詳細な意見交換をしましょう。今はアポを優先しましょう」

「だな」

 折加瀬(おりかせ)病院と掲げられた扉をくぐり、受付に話しかける。

「十四時から徳鳴先生と約束がある七篠です」

「はい。七篠様ですね。徳鳴(とくなき)先生にご連絡いたします」

 営業スマイルを張り付けた受付が受話器を取り上げる。穂澄とともに待つこと数分。ひょろ長い白衣の男がひょこひょこ歩いて来た。

「あ~連絡どうも、尾渡(びわたり)さん。ああ、ようこそ、七篠さん。こっちへどうぞ」

 ひょろ長の男の案内で、小さな部屋に通された。

「どうぞ、座ってくださいな」

 あたしたちは対面で座った。

「僕は徳鳴といいます。この病院でしがない精神科医をやってます。お名前は……ああ、いや結構。七篠の関係者でしたね。深入りはしませんよ」

 徳鳴先生は顔の前で両手を振った。

 この反応……まさか、七篠のおっさんの知り合いか? 初めて見た……。

 結構と言われたけれど、ずっと『七篠の関係者』と呼ばれるわけにもいかない。

「一応、ホムラっス」

「ナギサ」

「どーも」

「早速で申し訳ねんスけど、面会の方させていただけるっスかね?」

「まあ、そういう約束ですからね。致し方ありませんが、僕の言うことには絶対に従っていただきますよ?」

「そりゃもちろん」

「わかっているかと思いますが、この面会は特別に許可されたものだということをご理解ください。この件は他言無用です。本来であれば、部外者の面会など許可できませんが、七篠の案件ですからね……まだ行方不明者もいるこの状況……一助になる可能性を鑑みた結果です」

「はい」

「この面会のルールをお伝えしておきます。第一に。面会は短時間です。患者の精神状態は非常に不安定なので。第二に。面会は僕が同伴します。第三に。僕が止めた場合、面会はそこで終了です。食い下がることは許可しません。理解されましたか?」

「わかりました。遵守するっス」

 七篠のおっさんがどんな交渉をしたのかは知らないが、これが徳鳴先生の医者として譲歩できる最大なのだろう。あたしたちはそれを破ろうとは思わない。

「結構です。では行きましょうか」

 ふにゃけた笑みを浮かべながら徳鳴先生は立ち上がった。

 先生の後に続いて、病院を歩く。時々、他の医療従事者に不審げな目で見られたが、徳鳴先生が軽く会釈すると、みんな一様に納得した表情を浮かべて歩き去った。もしかしてこの人、奇矯な人で通ってるんじゃないか。

「静かに」

 先生はとある個室の前で立ち止まり、あたしたちに指示を出した。元より声は出していないが、意識的に口をつぐむ。

「やあ、白窯(しらかま)さん」

 徳鳴先生は朗らかに声をかけながら病室へ足を踏み入れた。あたしたちは静かにそのあとに続いた。

 小さな個室だ。薄いグリーンで統一され、床はクッション性が高い。格子はないが、人が通れないような小さめの窓。部屋に存在するすべてが角がなくなだらかな曲線を描いており、物を引っ掛けられるような出っ張りは皆無。出入り口やトイレらしき場所の扉もすべて引き戸だった。

 真っ白なシーツが敷かれたベッドの上に、布団にくるまった人間がいた。頭まですっぽりと布団で覆い隠されている。こちらに背を向けているので、表情も体格も読み取れない。

「こんにちは、白窯さん」

 徳鳴先生は、片手であたしたちに静止を促し、ベッドに近づく。

「白窯さん」

 徳鳴先生がゆっくりと優しく声をかける。

 布団にくるまれた背がびくりと震え、何かを確認するかのように素早くこちらを向いた。

 素早い動作によって布団がふわりと広がる。頭までかぶっていた布団が落ちて、唯一の帰還者の顔が見えた。

 目を見開き、荒い呼吸を繰り返しながらこちらを見ている。恐怖が張り付いた顔の頬はこけ、見開いた目の下には濃いクマが滲んでいる。明るい金髪が無残なまでにくしゃくしゃになって輪郭を縁取っていた。

 痛々しいほどに憔悴している。

 怯えた視線が、あたしたちと徳鳴先生の間をさまよう。布団の端っこと一緒に両手で何か小さな物をきつく握りしめている。

 この子が唯一発見された子か。確か、白窯(しらかま)奏楽(そら)とかいったはず。

「こんにちは、白窯さん」

「ハァッ、ハァッ……」

 短い断続的な呼吸音。これ以上進行すれば過呼吸になりそうな危うい呼吸だった。

「ゆっくりと息を吐いて。君を傷つけるものはなにもないよ」

 穏やかな徳鳴先生の声。白窯には不必要に近づかず、ゆっくりとしゃがんで視線だけを合わせる。

 少しずつ呼吸が落ち着いていく。

 しかし、次の瞬間、振り向いたときに広がって、ベッドの淵に引っかかっていた布団が彼女の背後でするりと落ちた。

「ひっ!」

 彼女はかすれた悲鳴を上げて振り返る。布団が落ちた音も聞こえないレベルだったのに、彼女は過敏に反応する。

 そして、震える自らが立てる音で、またびくりと震え、悲鳴を上げながらこちらを振り向いた。

「あぁっ!」

 手の中の何かにすがるように、顔をうずめる。

「やめて許して、もうやめて……みんないなくなる……振り向いたら怖い、何かいる……はぁ…はぁ…ハッ…ハァッハァッハァッ!」

 うわ言のように呟きながら、また呼吸が断続的になっていく。

「白窯さん、白窯さん。僕の声が聞こえる?」

 本当に聞こえているのかは定かではないが、白窯は激しく頷いた。

「僕の声だけ聞こうか。聞こえるかい? 息を止めて、大きく吐いて。ゆっくりね。そうだ。上手だ。そうそう、ゆっくり吐いたら、ゆっくり息を吸おう。慌てなくていいよ。僕の言う通りにしてみよう。大丈夫、できているよ」

 また呼吸が安定してくる、と思ったら白窯は後ろにひっくり返った。

「なっ」

 慌てたが、徳鳴先生に制止をかけられた。

 先生はそのまま白窯の状態を確認している。

 ……これはだめだ。面会なんて言ってる場合じゃない。会話どころか、話を聞くことも無理だ。面会できると聞いていたので、こんなにひどい状況は予想していなかった。七篠のおっさんは本当に無理を言って、この面会をセッティングしたみたいだ。

 穂澄に肩を叩かれて振り返ると、愁いを帯びた表情で首を振っていた。あたしは声も出せずにただ頷いた。

 白窯の状態を確認し終えたのか徳鳴先生が立ち上がる。あたしたちの方へ向き直り、首を横に振った。

 話が出来てないなんて、食い下がることなど思いもしない。あたしたちはゆっくりと頷いた。



「あの子は大丈夫なんスか?」

 聞いてみてから自分でも馬鹿だと思ったが、聞かずにはいられなかった。

「倒れたことなら心配はいりません。眠っているだけです。今の彼女は何かに怯え、眠気が限界に達して、気絶するまで眠れないのです」

 あたしたちは最初に案内された部屋まで戻っている。

「予想通りではありますが、ほとんど面会らしいことはできていませんね。しかしまあ、僕が口で説明するよりも、彼女の状況を理解してもらえたでしょう」

「それは、はい」

「白窯さんとは話せなかったので、必要であれば、僕の私見と、可能な範囲で質問に答えますが、どうですか」

 病室での真面目な表情とは打って変わって、ふにゃけた穏やかな笑みを浮かべて徳鳴先生は言う。

「それはありがたいっスね」

 ちらっと穂澄を伺う。

「……では。彼女の状況は入院当初と比べて変わりませんか」

「いいえ。あれでもだいぶ落ち着きました。運ばれてきたときは錯乱状態で、鎮静剤も効きが悪いほどに恐慌に駆られていましたから」

「彼女はどのようなことを言っていましたか?」

「ほとんどがうわ言です。聞き取れる範囲であれば、だいたい先ほど聞いた内容と同じような言葉を繰り返しています」

「徳鳴先生から見て、彼女は何に恐怖しているように思いますか?」

 穂澄の質問に、一瞬だけ徳鳴先生の眼光が鋭くなったように感じた。

「……背後、ですね。背後からの物音、何もなくても背後への恐怖が拭い去れない、という印象を受けます」

「白窯さんは何かを握りしめていましたが、あれが何かご存じですか?」

「ジッポライターです。親御さんに確認したところ、亡くなった祖父からお守りとして貰ったものだということです。煙草を吸っていたわけではなく、小さな頃から祖父のライターが好きだったそうです。彼女はあれを手放そうとしません。意識あるかぎり握っていますね。理由は定かではありませんが、今の彼女にとって、ライナスの毛布なのでしょう」

 ライナスの毛布……?

「不安感を和らげ、安心感を得るために持ち歩いている小物のことを指します。ブランケット症候群と呼ばれているものです。毛布やぬいぐるみなどが多いのですがね」

 あたしの疑問に気づいたのか、徳鳴先生は補足してくれた。

「ありがとうございます。……ここからは白窯さんには関係ないことなのですが、いくつかご質問してもよろしいですか?」

「どうぞ。僕にわかる範囲でよければお答えしましょう」

「この病院はかなり長い歴史があります。創立から百年近い」

 急に何の話かと思ったが、穂澄はいたって真剣だし、対する徳鳴先生も少しだけ表情が締まっている。

「ただ、ずっとここにあったわけではなく、一度火事があって、移転してきたものですよね。元々は今現在、霧羽馬高校が建っている場所にあった」

「そうですね」

 あ、穂澄がさっき言ってた霧羽馬高校の前身の病院がここなのか?

「その病院について、詳しくご存じですか……多少なりとも知っていると踏んでいます。あなたはこの病院経営に携わる一族の一人ですよね」

「……よくご存じで」

「病院のホームページに載っていました」

 平然と穂澄は言う。徳鳴先生は天井を仰ぎ、大きく息を吐いた。

「ふー……流石、というべきなんですかね。七篠の関係者なだけはある」

 まるで、それが重大なことであるかのように、徳鳴先生は嘆息した。

「いいでしょう。僕が知りうる全てを話しておきます。まず、最初に。確かに僕はこの病院長の系列の人間です。末席にかろうじて座っているだけですがね。異端児ですよ」

 徳鳴先生はこちらに向き直って、自虐的に笑った。

「1919年。精神病院法が制定されました。その四年後にこの病院は設立されています。その頃の精神医療は未発達もいいところ、『医療』と呼ぶことすらも憚られるような状態です。まともな分類もなく、精神疾患は偏見と差別に見舞われていました。患者は家督の恥と考えられ、私宅監禁されるような状況です」

 急に講義めいたものが始まったが、黙って続きを待った。

「そんな中、この病院は精神疾患患者の受け入れを行っていました。いいことのように聞こえますが、要するに監禁場所が自宅から、病院に変わるだけです。ただし、評判はすこぶるよかったと言われています。折加瀬病院にいけば、気狂いは治るとまで言われていたようです。僕は小さな頃から、医者であった祖父から自慢げにそう聞かされてきました」

 徳鳴先生は吐き捨てるように言った。

「確かに火事で失われなかった数少ない古いカルテを漁れば、退院したという記録が多い。はるか昔の記録から、祖父の代であった七十数年前の記録でも、退院記録が多い。しかし、あの頃の治療とも呼べない蛮行で、退院などできるはずがありません。祖父の代ですら、おかしい。治療の質はいくらかマシになるとはいえ、祖父の時代、精神疾患は何十年という入院期間が普通の時代なのです。折加瀬病院の退院の多さには、何か別の理由があるはずだと僕は考えました」

 穂澄は真剣な表情で話を聞いている。あたしはこの話がどこに着地するのかわかっていないけど、穂澄には何か見えているのかもしれない。

「調べていくうちに、僕は気づきました。退院件数はこちらに移転してきてから激減している、と。経営の主体が祖父から父の世代に移り変わるころです。僕は昔の病院で、祖父が何か行っていたのだろうと推測しました。それが何かは結局わからずじまいでした。その後、年老いて認知症になった祖父がここで入院する機会がありました。その時、祖父は四階の病室に入ることをかたくなに拒みました。当時は理由はわかりませんでしたが、今回の事件を経て、僕はある突拍子もない考えを抱いています」

「それは、旧折加瀬病院の四階に入院した患者が行方不明になっていたのではないか、ということですか」

「その通りです。我が一族は旧折加瀬病院の四階に巣くう『なにか』を利用して、退院と見せかけて入院患者を行方不明にしていたのではないか、そう考えています。行方不明をうまく処理すれば退院とすることはできなくはありません。おそらく家族の同意のもと実施されていたでしょうしね。騒ぐ人間が誰もいなければ、それは発覚しない」

「…………」

「突拍子もないでしょう。同じ土地に建っているから、同じ現象が起こっているとは限らないのに。しかし、四階を恐れていた祖父、多い退院、移転してきてからの状況……すべてを鑑みると、こうではないかと考えてしまうのです。そして、僕は知っている。もちろん、あなた達もよくご存じでしょう……この世にはそういう『なにか』が存在すると」

 徳鳴先生の表情からは笑みが消えて、ひどく真剣な表情になっていた。あたしも穂澄も返事はしなかった。

「……ありがとうございます。とても参考になりました。もう少しだけ」

「なんでしょう」

「病院の移転のきっかけとなった火事の原因はご存じですか?」

「患者のたばこの不始末だと聞いています。当時の火元は四階で、入院中だった患者の一人が煙草を隠し持っていたのだろうと推測されています。幸いにも避難がスムーズで死者はいなかったと聞いています。奇跡的な幸運だったと思います」

「わかりました。最後に一つ」

「はい」

「病院が移転した理由はなんですか。焼け跡に再建しなかった理由は」

「父の世代が再建に、猛烈に反対したからです。きっと思うところがあったのでしょうね。こちらに移転してきてからは、時流もあり、いたって健全な病院になっています。過去にどのような所業があったとしても、もはや証拠はありません。どうしようもない」

「……私の質問は以上です。ありがとうございました」

 穂澄は少し迷っていたようだったが、結局それは飲み込んだらしく当たり障りのないことを言った。

 徳鳴先生は穏やかな微笑みを取り戻していた。

 先生に見送られて部屋を出る前に、あたしは個人的に気になっていたことをぶつけてみた。今回の件とは関係ない話だったので、迷っていたのだが、好奇心が勝った。

「徳鳴先生、七篠のおっさんとはどういう関係なんスか?」

「ただの腐れ縁です。高校生の頃、同じ学校に通っていただけです」

「七篠のおっさんの高校生姿が想像できない……」

「見かけは普通でしたよ。話しかけるとまあ、気難しい感じでしたけど……七篠と関わってから、自分が思っているよりも、世界は広く、深く、暗いのだということを思い知らされました。今回の件で連絡があったとき、とても驚きました。正直な話、さっきの突拍子もない説は、七篠の連絡があって確証を得たようなものです。元気でやってるのかという思いと、連絡なんてしてくるな、という気持ちも少しはありましたが……」

「……なんか、文句言っときます?」

「いいえ。電話口で散々伝えたので、もう十分です」

 徳鳴先生は、腐れ縁を感じさせる苦笑いを浮かべながら言った。






 私たちは折加瀬病院を後にし、霧羽馬高校旧校舎に戻って来ていた。三階と四階の間の踊り場で、四階への侵入を阻むバリケードを眺めていた。

 現在時刻は十五時四十五分。

 噂が本当なら怪異の発生時刻まであと十五分だ。私たちはその発生を待っている。

 怪異が出る場所にのこのこ足を踏み入れるつもりなのである。

「はあ……リスクが高すぎる行動だわ」

「でも、仕方ないだろ。ここまで来たらもう突っ込むしかないじゃん。穂澄の推測通りなら勝算はあるだろう?」

「私の推測ってところがネックでしょうに」

「別にいいよ。あたしは穂澄の推測に全幅の信頼置いてるから」

「……それはありがたいけど」

 確証がないのがつらい。ただ、私たちにはいつも確証なんてない。どこかでリスクを踏まねばならない。それでも、私の推測が間違っていたら、私だけでなく、燈火まで危険にさらしてしまう。

「大丈夫だよ。必要な情報は集めたし、必要な準備もした。あたしらは今、できる限りを尽くしている」

「……そうね」

「それに、行方不明の生徒を助けるなら、一刻も早い方がいい」

「……そうね」

 燈火は希望を捨てていないのだろうか。いや、希望は捨てるべきじゃない。今から助けにいこうとしているのだから、最悪ばかり想像してもいいことはない。

 病院で見た白窯の姿が脳裏をよぎる。彼女が正気を取り戻し、周りに友人がいないと知ったときの気持ちは想像に難くない。ひどい後悔と苦悩にさらされるだろう。

 彼女たちがどんな思惑で旧校舎を訪れたのかは知らないけれど、遊び半分の軽率な行為で友人を失うなんて、そんな体験はしなくてもいい。

「っし。そろそろだな」

 燈火が大き目のリュックを背負いながら言った。

 すでに机のバリケードには私たちが入れるように、隙間を作っている。

 借りてきたカラーコーンを踊り場に並べ、立ち入り禁止を書いた紙を張り付ける。私たちが通ったあとに、好奇心で入り込む輩を防ぐための予防策だ。まあ、今回の件で旧校舎は全面的に立ち入り禁止になっているのだけれど、念には念をだ。

 腕時計を見ると猫とネズミが四時を指している。

「時間よ」

「よし、行こうか」

 踊り場に変わった様子はない。バリケード越しに見える四階にも変化はない。ここから見ていると噂が嘘だったのかもしれないと思うほどに、変わらぬ風景が広がっている。

 命綱代わりのビニール紐をバリケードの机の脚に括りつけて、私たちは隙間を通りに抜けた。これが役に立つ場合もある。もちろんない場合もある。

 四階の一段手前で立ち止まる。未だに変化はない。

「じゃあ、一緒に」

「ああ。いち、にの、さん!」

 燈火とタイミングを合わせて四階に突入した。

 燈火は私の右手を注視している。

「うっ」

 四階の廊下に両足が付いた瞬間、甲高い耳鳴りがし始める。すぐに右手を上げる。

「おっけ。警戒する……紐はダメだ。切れた」

 燈火が握っていたビニール紐が宙ぶらりんになっている。

「戻れない」

 階段の方へ手を伸ばすが、見えない何かに阻まれてそれ以上進めない。バリケードは見えるが分厚いガラスを通しているかのように歪んで見える。

 耳鳴りは継続している。悪意を持った何かがいる。

「空間を途絶するタイプね」

「逃げられないわけだ」

「行きましょう。手を離さないで」

 燈火を手を握る。燈火も強く握り返してくれる。これが私たちの命綱だ。

「外の色がおかしいな」

 燈火が窓の方を見ながら言う。確かに、夕焼けの光景が広がっているはずの窓の向こうは薄墨を撒いたかのように濁った灰色になっていた。

 そして、廊下には生ごみが腐ったような饐えた臭いが微かに漂っている。

「微妙に生臭い……あと、あたしたち以外に音がしねぇ。痛いぐらいの静けさだ」

 私は耳鳴りが続いているので、その感覚はわかりづらいが、確かに物音はしていない。

 廊下の様子を観察する。薄暗く妙に視界が悪い、おかしなところはないように見える……いや、違う。あの消火栓の近くに落ちているのは……

「制服ね」

 男子生徒用の制服がくしゃくしゃになって放り出されている。中身は見当たらない。Tシャツから下着、財布やスマホまでそろっている。

「……持って行きましょう」

 燈火が無言で落ちているものをリュックに詰め込んだ。

 あれを着ていた子がどうなったのかはわからないが、少なくとも姿形は見えない。

「……一回だけ叫んでもいいか?」

「大丈夫、なはず。今もしゃべっているけど、変わりはないし……」

「よし……誰かいないか‼ いたら返事しろ‼」

 燈火が腹の底から叫んでいる。この大きさなら四階の端まで届いたはずだ。しかし、その声に対する反応はない。

 声の反響も吸い込まれるように消えていき、また無音に戻った。もちろん、耳鳴りはしているけど。

「……だめか」

 再度、歩き出そうとした瞬間、左耳に猛烈な耳鳴りが響いた。

「燈火っ! 前に飛んで!」

 すぐに燈火が動き出す。廊下を蹴って前に飛び出しながら、私を強く引き寄せてくれる。引っ張られながら後ろに首を捻る。

 はっきりとは目に見えない何か生暖かいものがさっきまでいた場所を通りぬけた。

「なんだ⁉」

「たぶん、あれがここに巣くう怪異。何かわからないけど」

 耳鳴りは音量が下がっている。また襲ってくるときは瞬間的に上がるはず。感覚の問題だけど、大まかな方向はわかる。

「あれに喰われるってわけか」

「早く見て回りましょう」

 教室の扉は鍵がかかっていて開けられなかった。扉の前にはまた男子の制服が落ちていた。それを回収して、扉を見やる。扉には今朝みつけた蹴った跡が残っている。

 ……逃げようと蹴破るつもりだったのかもしれない。生々しく残る跡が痛々しい。

 また耳鳴りがした。

「上から‼」

 叫んだ瞬間、また燈火が前に飛ぶ。なんとか避けている。

「縦横無尽かよ!」

 着地した先にまた制服が落ちていた。今度は女子用だ。これで三着目。

 耳鳴り!

「右後方‼」

 次の攻撃が早い。燈火が飛ぶ直前、私は何とか手を伸ばして制服を回収した。

 せめてこれぐらいは……!

 饐えた臭いが強くなる。周囲の暗さもなぜか増していく。廊下の奥に進めば進むほど臭いが強くなり、辺りが暗くなっていく。

 もうすぐ廊下の突き当りだ。

「嫌な感じだ。避けてはいるけど、誘導されてる感じだ。コーナーに追い詰められてる感覚がする」

 ボクサーとしてのカンだろうか。油断なく辺りを見回している。

「だめだ。あたしには感じ取れない。あの子が背後に怯えるのもわかる。穂澄の耳だけが頼りだ」

「今は大丈夫。でも注意して、耳鳴りがどんどんひどくなってきてる」

 攻撃のスパンが読みにくいが、耳鳴りに気を付けていれば大丈夫なはず。

 廊下の突き当りが見えた。その手前に最後の制服が落ちていた。

「……全員か」

「……そうね」

 燈火が制服を取り上げようとしゃがみ込んだ。

 耳鳴り! 

 っ! しまった! 制服はエサだ!

「伏せてっ‼」

 突き当りから何かが飛び出してきた。這いつくばるようにして身を投げ出す。燈火も小同じように伏せている。視界の端にちらっと汚らしい灰色の乱杭歯のようなものが映った。

「無事⁉」

「髪にかすった気がするけど、大丈夫だ!」

 耳鳴りが少し弱まった。

「直線移動しかできないのか……」

「それに助けられたわ。燈火」

「もう回収した」

 燈火がリュックに制服を詰め込んでいる。

「うああっ!」

 頭が割れそうな耳鳴り。

 こちらに向けられる害意に耐えられない。しゃがみ込む。

「穂澄っ!」

「とうか、火をっ……」

 燈火の指先に火が灯る。耳鳴りがわずかに弱まった。

 燈火に抱きかかえられながら、私はその指先めがけてフラッシュペーパーを投げつけた。

 炎が燃え上がる。一瞬で消えていくが、かまわずに投げ続ける。

 廊下全体が激しく揺れ始めた。耳鳴りが激しさを増していく。あの化け物の怒りを感じる。

「うぐぅ」

 耳鳴りに耐えながら歯を食いしばって、握りしめたフラッシュペ―パーの束を燈火の指先に持って行った。 ひと際大きく炎が上がる。

 廊下の揺れはますますひどくなって、何か咆哮のような音が聞こえた瞬間、ぴたりと振動が止まった。

 同時に耳鳴りも止んだ。

「はぁ……はぁ……」

「イケたか」

 燈火の指先の火は消えている。

「こっちも……止んだわ」

「ふう……」

 私を抱いていた燈火の腕から力が抜けた。

「助かった……大丈夫か?」

「少しだけ火傷したかも。燈火は?」

「こっちは大丈夫だ。毛先が持ってかれただけ」

 ゆっくりと立ち上がる。廊下は薄暗さもなく、饐えた臭いもしなくなっていた。窓から見える景色も……夕焼けじゃない?

「朝になってるわ……」

「はあ⁉ マジか!」

「時間の流れが違ったみたいね……今は、午前四時は過ぎているんじゃないかしら」

 噂では午後四時から午前四時までが怪異の時間だったから、それが終わっているということは時間外ということだろう。

「まあ、いいか。たまにあるしな。今回も何とか無事に終れそうだ」

「そうね」

 窓の外で、朝日が顔を出し始めていた。

 旧校舎の四階は何事もなかったかのように、薄明りに照らされていた。



 私たちは行方不明になったと思われていたらしい。出勤してきた校長たちを出迎えたとき、向こうは大慌てだった。一晩連絡がなかったのだから仕方ない。

「こちらを」

「これは……」

 校長と教頭の前に回収した制服を差し出す。一応、学生証などで持ち主の確認はしている。

「行方不明になった生徒四人の物です」

「こ、これをどこで⁉」

「旧校舎四階です」

「警察は何も見つけられなかったのに」

「我々のアプローチは警察と異なります」

「それで、四人は……?」

「残念ですが、発見できていません。おそらくもう見つかることはないでしょう」

 できる限り冷静に、事務的に伝えるようにする。

「旧校舎の噂は本物です。あの場には『何か』が巣くっている。それも遠い昔から」

「そんな馬鹿な……」

「四人ともその『何か』に襲われたと思われます。四階には回収してきたもの以外、何も見当たりませんでした」

「そんな馬鹿な! どう信じろというんですか!」

「……調査結果をお伝えしているだけです。信じるのはそちらにお任せします。我々の仕事はこういうことの調査なのはご存じでしょう」

 淡々と言葉を紡ぐ。私にできることはそれだけだ。

 笑みもなく、ただ校長の顔を見つめる。校長は苦虫を嚙み潰したかのような表情で黙り込んだ。

「詳細な報告書は探偵社の方から後日届くでしょう」

「……分かりました」

「校長先生⁉」

「どうしようもありません。警察と保護者に何と説明すればいいのか……」

「……最後に調査結果を踏まえてお伝えしておきます。旧校舎の四階は完全に封じた方が賢明です。二度と使えないようにした方がいいでしょう。そして校舎を壊すときは慎重に行ってください。あそこに巣くう何かがどうなるのかわかりません。また新しい校舎を建てたとしても、四階は封鎖してください。それが一番安全です」

 私たちは立ち上がって部屋を後にした。



「助けてやりたかったな……」

 校門を出たところで燈火がポツリと呟いた。

「嫌われ者で、自業自得だけど、それでもあんな死に方はないよ」

「どうすることもできなかったわ。力は尽くした。どうしようもなかった。でも、あの子たちがいた痕跡だけは見つけてあげられた」

 いつの間にか握りしめていた拳の力を抜く。

「少なくとも、これからの悲劇を防ぐことはできたはずよ」

 あれだけのことがあったのだから、どれだけ頭が固かろうが学校側は対策を取らざるを得ないでしょう。

「……それでよしとするしかない、か」

 燈火が旧校舎の方へ顔を向ける。ここからは建物の影も見えないが、つられて私もそちらを向いた。

 この平和な景色の向こう側に、得体のしれない何かが潜んでいる。怪異はいつも私たちの隣にいる。

「……行きましょう」

「ああ」

 私たちはその場を後にする。

 背後からは何も感じなかった。




〈ハッピー探偵社調査報告書(保管用 №506)〉

 名称:喰い檻(仮称)


 カテゴリー:生物(仮定)




 危険度(S~D):平時Ⅾ 活性化時C


 報告:霧羽馬高校旧校舎の四階に存在する不可視の怪物。午後四時から翌午前四時までの期間、旧校舎四階に出現する。当該時間内に侵入した者に対し、四階を何らかの方法で封鎖し、逃走を阻止したうえで襲い掛かってくる。行方不明になった学生四名の制服を含む持ち物は回収できたが、肉体については発見には至らず、血痕なども見つかっていない。行方不明になった学生四名は『喰い檻』に喰われたと思われる。


推察:『喰い檻』のテリトリーである旧校舎四階については、時間外では何の痕跡も発見できなかったことから、時間内の侵入者は通常と異なる空間に囚われている可能性が高い。調査員によれば時間の流れや景色も異常であったと報告されている。長年の存在が推測されており、固定された場所に巣くうタイプと考えられる。火を苦手としているようであるが、理由は不明。推論を重ねるならば過去に火事で居場所がなくなっていることがあげられる。また、学生唯一の帰還者と本件調査員も火を起こすことができる状態だったことを補足しておく。


対処:四階の封鎖。午後四時から午前四時に四階に侵入しなければ無害である。万が一時間内に侵入する場合は火を起こせる道具を携帯しておくこと。


 特記:反射で襲い掛かるだけでなく、侵入者に対して獲物を追い詰めたり、罠をしかけたりする知性がある可能性がある。


調査担当:伊刈燈火。御崎穂澄


依頼:完遂にて終了。

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