【プロローグ】
夜になると、その図書館は目を覚ます。
白昼のあいだは、町の外れにひっそりと佇む、古びた建物。人の気配はなく、誰もその扉を開けようとしない。ひび割れた看板には「市立夜森文庫」とかすれた文字が残っているが、その名を知る者はほとんどいない。
けれど、午後11時ちょうど。
静まり返った通りの中で、扉の鍵がカチリと音を立てて外れる。
月明かりの射す閲覧室には、壁一面に並ぶ本棚。誰にも読まれぬまま眠っていた物語たちが、風もないのにページを震わせる。午前0時を過ぎるころ、本たちはそっと目を覚ます。
──「読み手を待つ物語たち」の時間だ。
図書館にスタッフはいない。代わりに、本があなたを待っている。
重たい本の香り、古い紙の匂い。かすかに聞こえる時計の音。
そこに立っているのがいつの間にか「自分」だと気づいたとき、
あなたはもう、この場所に受け入れられている。
誰がこの図書館を作ったのか、なぜ存在するのかは誰も知らない。
ただひとつ、確かなことがある。
──ここに足を踏み入れた者は、必ず「一冊の本」と出会う。
それは、自分の心の奥底にしまい込んだ記憶かもしれない。
未来の予感かもしれない。
あるいは、まだ知らぬ誰かの物語かもしれない。
そしてその本を読み終えたとき、
読み手は**「忘れていた何か」**を思い出す。
だが、朝が来ればすべてが夢だったように思える。
図書館の記憶は霧のように薄れていく。
けれど、不思議な紙の匂いや、心の奥に残った余韻だけは、確かに残る。
ようこそ、「夜の図書館」へ。
ここでは、どんな物語でも読むことができます。
ただし──ひと晩に、ひとつだけ。
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