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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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「僕って悪ですか」

作者: 風間新儀

 晴天の昼過ぎ。

 僕はスクランブル交差点の横断歩道で立ち止まった。赤く光っている歩行者信号をぼうっと眺める。ここは世界的に有名で大きなスクランブル交差点。日曜日の今日は多くのカップルや子連れの家族が多い。僕はその人混みの中の一人。そして僕の右側には警官が立っている。近くに交番があり、昼頃になると警官が昼食を買いに出歩いているのだ。この辺にはコンビニがあるので、そこまで行くのだろう。

 歩行者信号が青に変わる。僕の周りの人混みが横断歩道を渡り始める。すると左側から大きな鈍い音がした。目を向けるとプリウスが車体の左側をガードレールにこすりつけて停止していた。僕の隣に立っていた警官がプリウスに近づく。運転手は老父。高齢ドライバーの交通事故を最近ニュースでも見たなぁ、と思っていると、プリウスは急発進し警官を撥ねた。警官は地面に倒れこむ。多くの歩行者が悲鳴を挙げた。そしてプリウスは右前方に停止していたベンツに車体の右側をぶつけて停止した。いや、タイヤは回転している。運転手はアクセルを踏み続けているらしい。今はベンツがプリウスの動きを抑えているが、ベンツは徐々にプリウスに押しのけられていく。ベンツがこのまま押しのけられてしまうと、プリウスはスクランブル交差点に突っ込み、多くの歩行者を撥ねることになるだろう。交差点の中は人がごった返し、突っ込んできた車を避けることは難しいだろうし、ベビーカーを押している母親なんてなおさらだ。

 僕は倒れている警官に駆け寄り、腰のホルスターから銃を取り出した。警官は銃とホルスターを吊り紐で繋いでいる。僕は吊り紐のボルトを回す。この間にも徐々にプリウスは前進している。心臓が跳ね上がる。これが現実だという実感が湧かない。早く外せと自分に言い聞かせる。ついにボルトを回し切り、銃を吊り紐から外す。そして銃を片手にプリウスのボンネットに飛び乗った。運転手の老父と目が合う。老父はパニック状態だった。僕は老父に銃口を向け、引き金を引いた。フロントガラスにひびが入る。そして銃弾を頭に食らった老父は衝撃で体を背もたれにたたきつけられ、その反動でアクセルペダルから足を外した。助手席には老母が乗っていた。



 多くの歩行者と一人の老父を天秤に掛け、僕は老父を犠牲にすることを選んだ。

 今は拘置所の中。これから裁判だ。僕は裁判官に聞きたいことがある。

「僕って悪ですか」


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