第4話 役職≪ロール≫
紆余曲折あったものの商業系ギルド"カドゥーケ”に入団する事となったラフィーア達。
しかし面接を担当したテツヲは“身分を明かさない”事を入団時のルールとして提示した。
一方、ギルドの宴に招待されたサクルとアーシマはそこでギルド団員達のある特徴に気づくのだった。
「身分を隠してほしい…ということですか。」
「はい……ご不便だとは思いますが……何卒…。」
ギルド長のエドワードに紹介される数刻前。
発言したテツヲが深々と頭を下げていた。
年季の入った胡麻塩頭が日の射光を浴びて
鳥の羽毛のように輝いている。
「ラフィーア様やその側近のお二方が
紛れもない殿上人なのは承知の通りです…。
そして殿上人であるということは
それ自体が大きな価値になる事でもあります…。
万が一、ドルレオのような賊が
私達のギルドに王族や王族関係者が居ると
感づけば…。」
ラフィーアとアーシマはこの旅に出た時から
なるべく自分達の身分は明かさないように心掛けていた。
理由はいろいろあるが、ひとつ言える事は
人は身分によって態度を変えるという事である。
金持ちや貴族だと思われるだけなら
少しサービスが良くなり、そこにたまに嫌な視線が
向けられる程度で、差し引きプラスと考えることができる。
だがそこに王族という札がつくと、途端に厄介な事になる。
第6王女という王位継承の順位が高くない自分の
生まれであっても、その一挙手一投足で
他国すら動きを変える可能性があるのだ。
自分達ですらそのあたりは気をつけているのに
そんなものを身近に感じることなど無い
一般の人民には非常に扱いにくい、いわば
宝石のようにさえ見えてくるはずだろう。
そういう意味でテツヲが身分を隠すことを提案するのは
おかしなことではないだろう。
(最も、今まで名乗らなかったのは別の理由も
あるからですけどね…)
「…了解しました。
バレればお互いの不利益に繋がり兼ねませんしね…。
私のことはどこかの貴族の令嬢ということで
通してもらえると助かります。」
「…ご拝聴、ありがとうございました…。」
テツヲはまた深々と頭を下げた。
普段から仕事としてやっていなければ
ここまで抵抗なく頭を下げれはしないだろう。
仕事への熱心さ故か、隣で冷や汗をかく
エドワード団長への信頼からか。
アーシマも、ラフィーアも、図り損ねていた。
街のざわめきの中に一筋の風なりが聞こえた。
その風が収まった頃、サクルが切り出した。
「…エドワードさん、少し聞きたいんですが…」
「何でしょうか?」
「どうやってラフィーア様やアーシマが
王族や王族関係者だって知ったんです?」
サクルが体を少し前傾にしながら質問した。
正体を言い当てられたときにあわよくば
武器にしようとしていた簡素な木の椅子が
ギィと苦しそうに悲鳴をあげる。
「誠に勝手ながら…私の能力を使って
あなた方をつけさせて貰いました…
兵士長さんから妙な人間が居ると報告を受けたもので…」
「それにしたって普通は与太話だと思うはずですよね?
どうして信用したんです?」
(確かに……普通は詐欺師か何かだと思うはず……
というかさっきサクル私のこと呼び捨てにしました?
多分しましたよね?)
「私もそこが気になっていました…
まさかいきなり正体を言い当てられるなんて
今までアーシマと旅していて無かったので……」
今までラフィーアとアーシマは王族関係者であることを
バレないように立ち回ってきた。
普通はバレるはずがない。
どうやって確証を得たのだろうか?
エドワードは暫く黙ったあと、ポツリと言った。
「……そうですな……。
ラフィーア様も秘密を言って下さいました。
私も私の秘密を喋りましょう…。」
秘密?
全員がそう思ったとき、彼の体がぐらりと揺らいだ。
「お、おい!あんたどうしたんだ!?」
サクルが口を荒くしながら前に飛び出す。
力が抜けたように見えた彼の体はそのまま地に臥しかけた。
「あぁ…ご心配なく…すぐに戻ってきます。」
テツヲの言葉と同時にエドワードの身体から
さながら砂漠の蜃気楼のような青白い何かが
飛び出てくるのが見えた。
「こ、この青白い光は!?」
「魂……だけになっている……」
(あの優しい光………懐かしい……?)
優しい青光を放ちながらエドワードの魂は
呆然とするラフィーア達の周りを南国の楽園にいる
パランナ蝶のように一周した後、元のエドワードの
骸のように動かない身体に入っていった。
そして、エドワードの身体が生気を取り戻した。
「……見て貰えましたかな?」
エドワードは少しはにかんだように言った。
「……はい、しっかりと……」
「その技……死霊術ですか……」
「……はい。正確には技とは言えませんが……」
思えば姿を現した時もさながら亡霊のように
その身を晒していた。
何らかの魔法を使っているとは思っていたが
彼が死霊術師というのなら合点がいく。
「……本来、死霊術というものは
霊魂に働きかけることで何某かの効果を
得る魔法です……大抵の場合、働きかけるのは
契約した人や動物の死した魂に対してですが……
私の場合は、訳あって自分の魂を
身体から着脱させる事が出来まして……
その延長線上で、見えるのですよ。」
「……もしや、他人の心が?」
「……そうです……魂から続く魔経…
魔力を作り出す器官は肉体の
隅々にまで巡っております……
そしてそれらを走る魔力は感情の起伏などによって
波長を大きく変えるのです……
それを見れば感情など一目瞭然……
といった具合ですな。」
魔経。
この世の生物の殆どに走っている神経のような器官。
魔術師はこの器官から魔力を
捻出したり、空気中の魔力を取り込むことで
魔術を繰り出す事が出来る。
手練の者の魔経から漂ってくる
一種のオーラのように見える魔力は
強者が見ればその手練の戦闘力を示す
指標になりうるとさえ聞く。
「最初にラフィーア様を見たときは驚きました……
偽の名前をおっしゃるときは魔経の波長に
若干の乱れがあるというのに
本名を名乗ったときやアーシマ殿とお話している時は
微塵も魔経に変化がありません
でしたので……。」
「…それだけでラフィーア様って?」
「魔経は正直です……どれ程の詐欺師でも
こればかりはごまかせませんので……
……まぁ、私の様に波長の変化を見れる者は
早々いませんが……ね。」
魔法を主力として用いる者。
とりわけ攻撃的な術師特有のそこの知れなさを
知ってか知らずか、サクルはこの老骨から感じ取っていた。
先程土下座をしたとは思えない雰囲気。
(ここのギルドは曲者が多そうだな。)
サクルは元居た椅子に後ずさる様にして座った。
「……はてさて、質問は他にありますかな?
……無ければ、改めて言いましょう。
ようこそ!我がギルド!カドゥーケへ!!」
────────────
「ひぇ~マジかあんた!マジで不死身なのかぁ!?」
「はい、ありがたい事に
今の所死んではいないですね。」
ノオムの1(午後7時)を少し過ぎた頃。
積み上げた土のレンガの境目が分からない宿屋の壁を
背に、高黍で出来た濁り酒を
目の前の席に座った駱駝型獣人の男
ジャマル・マフ=ルードという男の軽口を肴に飲む。
ジャマルは酒の入った木製のジョッキを
手元でぶらぶらさせつつ只人と少し見た目の違う耳を
赤らめながら軽口をたたき続けていて、ときたま
濃い黒の液体をくいっと傾ける。
若干の渋みと酸味を感じさせるこの酒はブラールと
言うらしく、暗褐色の高黍の
実を発酵させて造られるらしい。
「へぇ~いるんだね~不死身なんてさぁ~
生まれてこの方死なないって自慢する奴は
見たことあるけどもホントのホントに
死なないのは見たことねぇよ~
あ、なんか食べる?ここのロホゥ鳥の丸揚げは
結構いけるよ?後このチャダ豆のピキューも
ブラールには中々……」
「ジャマル先輩、サクル君が困ってますよ?」
「そーだよー!!
新入り君だってお話したいと思ってるよ!
ジャマにい!」
茶髪を短くした女と活発そうな黒髪の少女が
ジャマルの立て板に水の喋りを制した。
茶髪の只人はクーラと
黒髪の虫人種の少女はブラカと名乗っていた。
先程軽い挨拶を済ませ、食事のテーブルに案内された
ものの、相手との距離感が測れないでいる。
下手な事を言って相手の印象を損ねれば
ギルド内での居場所が無くなるかも知れない。
おまけに厄介な事にサクル自身長い間
外界に触れていない。
何が起こるかといえばそれは
(……とりあえずラフィーア様に従ってきたけど
……そもそもギルドってなんだ……?)
……どう切り出せば……)
話題の喪失である。
そんなサクルの気持ちを読んだのか
思案をしていると、先程の活発そうな少女が
こちらをじっと見つめているのに気づいた。
「……あの、なんでしょう?」
「……気にならないんだ。
亜人種が沢山いるの。」
亜人種。
只人とは違う種族を意味する少し昔の言葉。
只人に亜ぐ種類という、只人本位の
言い方のために只人以外の種族からは嫌厭される
言葉の使い方だ。
「……?
確かに部隊を編成する時はなるべく同じ種族で
まとめるとは聞いていますけど……」
「な~んか兵隊さんみたいなこと
言うなぁ~……来た人みんな驚くんだよ?
普通ギルドってその種族ごとに
分けられてるんだもん。」
「…………そういうものなんですね。
そういう社会基盤だとかをあまり
知らないもので……」
ラフィーアもアーシマもギルド長のエドワードと
奥の石造りの卓で何かを話し込んでいる。
頼るのは申し訳ないような気がした。
すかさず短髪のさっぱりとした女が
説明しだした。
「じゃあ今のうちに説明しておこうかな。
ギルドっていうのは、個人とか団体から
依頼を受けて実行する組織の事を言うんだよ。」
サクルが質問する。
「カドゥーケはどんな仕事をしているんです?」
「依頼の種類によってやることは異なってくるけど
カドゥーケの場合は物の売り買いだとか
他のギルドの護衛だとかを依頼されるねぇ」
「仕事内容も人によって変わるんだよ!
ボクなんかは数かぞえるの苦手だけど
護衛は任せられちゃうんだもんね!」
「ま、俺はブラカと違って
積み荷の確認もできるけどな!」
「今それ言わなくていいじゃんジャマルにい!
魔物が来たら斥候の仕事だけして
逃げる癖にさ!」
「んだとぉ!?
戦略的撤退だ戦略的撤退!
ブラカの格闘家と違って
斥候は戦闘が苦手だからな!」
「先輩、ブラカに喧嘩ふっかけないで下さい。
ブラカも変に言い返しちゃ、めっだよ?」
クーラが二人の喧嘩を手慣れた具合に収めた。
(へぇ、商人みたいな仕事
ばかりじゃないんだな。)
町から街へと渡り歩く行商の仕事は、時には
危険な目にも遭うだろう。
そうなった場合に備え、用心棒を雇うというのは
当然のことだろうし、ギルド団員の戦力を
増強しようとするのも特段妙な事ではない。
サクルはそう判断した。
「なるほど……
となると自分のメインの仕事は護衛ですか?」
「……ま、多分ね。
君の腕がどれほどかにかかってるよ。」
含みのある言い方だった。
ブラールの若干の酸味が濃くなる。
「……腕試しですか?」
「ふふ、有り体に言えばそうだね。
頑張りなよ?新人君。
そこで君の役職も決まるんだからねぇ。」
「……サクル?へーい、どうした?」
「……ロールって……なんですか?」
「……マジか君。」
クーラの声は戸惑いと驚きに満ちていた。
────────────
「……なるほど、つまりそういう……」
クーラから役職を解説して貰っていた時だった。
「ヨウ、オメエラ!!
オレノ詩キキテェカァァ!!!!」
濃い赤に塗られた弦楽器を手に仙人掌型樹人の
ギルド団員が陽気に名乗り上げた。
「うおぉぉぉぉ!!!!!
待ってた、待ってたぞォォォォ!!!!!」
「いイぞカクトォォォぉ!!!!!」
「いつもの十八番サクルに
やってやれェェェ!!!!」
「相変わらず感情の振れ幅が大きいのぅ……
サバールは……」
「ウエェェェイ!!!!
行クゼェェェ!!!!港の女!!」
人種の中には、混合種という括りがある。
普段生活している中では人と殆ど変わらない
せいぜい体の一部に羽や尻尾や鱗が生えてるだとか
髪の一部が葉っぱや鉱石になっているだとか
その程度の差異しかないが、肉体を変身させる魔法の
魂率変化を使用することで
他種族が、只人が想像する荒々しい獣人や
ミステリアスな獣人、陽気な魚人、華麗なる鳥人
朴訥な鉱人の姿になるのだ。
サクルの記憶では、そういう種族の者達は
同じ種族で行動を共にするものだ。
だが、カドゥーケの面々はというと……
「あぁ~♪今日も大漁~豊漁~♪港にあいつが待っているぅ~♪
青い女が待っている~♪」
「ヒュゥ!!!イカすねカクト!!!酒もススむよ!!!
アッハッハ!!!!」
「うーむ……今だったらアメリ女史から錬金術の要訣を
聞き出し活かせるやも……」
「酒飲んでる時くらい魔導の話やめろよ狼獣人……」
「アメリさん……飲みすぎですよ……
アイテム錬成できなくなりますよ?」
眼鏡を掛けた学者のような見てくれのロンディが
紫水晶型鉱人のアメリを諭す。
「ロンディおじさん、無駄。
アメリ姐さんのざるっぷりは知ってるでしょ?
気のすむまで飲ませてやればいいじゃん。
そっちの方が面倒じゃないし~」
「イバナちゃん……ちょっと言いすぎじゃないかな……」
「ふふふ、エオラ殿。
ああ見えて素直じゃないんですよ、イバナ殿は。
本当は心配しているんです。」
「サナヱ!ち・が・う!そんな心配してないから!」
少し口調に棘のあるイバナは兎型獣人で
エオラとサナヱはそれぞれ蘆會型樹人と
鴉型鳥人だとブラカから教わった。
耳の先に生えたウサギの細かな毛も
もみあげに生える柔らかそうな棘も
額の脇に僅かに生えた黒い羽毛も
只人には見られないものだ。
「あれだな!イバナの武器は大っきい鎌だからな!
サナヱさんのでけぇ刀と違って真っ直ぐじゃねえ!
持ち主と武器は似ブベェッッ!!」
「ジャマルにい……ホントに余計な事言って
殴られるの得意だよね……」
「これこれイバナ、殴るのはやめなさい。
ジャマルも余計な事はいうでない。」
只人のオクタヴィウス……
ブラカ曰くタコ爺が胸ぐらをつかむイバナと
殴られたジャマルの両方に謝るよう呼びかけた。
渋々互いに謝る両名の顔と顔の間。
「あ、アーシマ。」
ジョッキを片手に周りのギルド団員と
酒を飲んでいる。
が、何だか様子がおかしい。
「……“アーシマ”?
今アーシマと言いましたか?」
「あ、はい。あってま……」
言いかけた瞬間彼女の体がゆらりとこちらを向いた。
ジョッキの底をを大工の使う木槌の様に
かん、と卓に置くと黒褐色の泡が宙に舞う。
サクルの発言は遮られた。
そして伏せていた両目をカッと見開くと言った。
「サクルしゃん!あにゃたにはわたひに対して
けえいがありまへん!!」
「……え?」
「おい、大丈夫かこの給仕さん。」
「だいぶ酔ってるみたいねぇ……
エオラちゃん呼んでくるかい?」
サクルはあまりにも間の抜けた返しをした。
赤くなった顔にとろんとした目。
体がゆらゆら揺れている。
アーシマは間違いなく泥酔していた。
体を震わせながらアーシマは言う。
「わたひだって……わたひだって……
それなりの立場があるんれふよ!?
それをいきなりあなたは“アーシマ?”でふよ!?」
「……えっと……それは、どういう……?」
「よびふてしゅるにゃぁ!!!!
あたひにだって立場はあるもん!!
ちゃんとお仕事してたのにぃ!!
こんなよくわかんない人と
同じ感じの括りで扱われるのやですよぉぉ!!!」
「ちょ、ちょっと?ホントに大丈夫?」
「ナぁちょっと休ンだ方がいいんじゃねェカ?
部屋案内するカラヨ。」
周りのギルド団員がざわつき始める。
当然だろう。
新しく入ってきた女が一緒に入ってきた男に対して
管を巻いているのだ。
戸惑うに決まっている。
(不味い。今ラフィーア様はギルド長殿と
その他要職を交えて別室で飲んでいる……
面倒ごとは避けなければ……)
「うぅ~……わたひお嬢様のお世話係ずっと
担当してきたんでふよぉ~……
そりゃ守れなかった時もありまひたよ……
でもそれ以外に不覚をとった事は
ないんでふからね!!?
そういう仕事をしてきたことを
もっと分かって下はい!!!」
「は……はい。」
このままだと口止めしていた事も言い出しかねない。
普段のアーシマならやらない奇行のせいで
恐らく普段はやらかさないはずのポカを
やりだす可能性を目の前の酒乱は放っていた。
(とすれば……)
サクルの頭にとあることが浮かんだ。
「なーに黙ってるんでふか!!?
ちょっとはなんかいいなはいよお!!」
「……アーシマ、さん。
役職はご存じですよね?」
「ッ足り前よぉ!
職業の神クロゥが作った仕事の事!!
中でも戦闘に関するものを言ふわ!!」
「そうですよね……
仕事……それぞれに仕事があるんです。」
「……なに?」
「例えばテツヲさんは戦闘には参加しないそうですが
交渉の席や荷車の修理などを行えます。
逆に戦闘ができても事務作業が苦手な方だっています。」
「お前、言われてんぞ?」
「ジャマルにい、余計なお世話。」
「……」
「……俺、ずっと紅玉の中にいたから
世の中のことだとか、国のことだとか
全然わかんないです。
自主的に動くのだって苦手です。
でも……剣だけは、振るえます。」
「………………」
「役職と一緒です。
ひとりひとりだと、弱点があります。
出来ないことなんて山ほどあります。
……でも、何人もいれば……
ギルドにいれば……そういうことだって
乗り越えられる……と、思うんです。」
「…………」
「だから、必要なんです。俺も、アーシマさんも。」
「…………」
「……だから、その……」
アーシマはずっと押し黙っていた。
が、口が僅かに動き出した。
「………ご」
「……ご?」
「ごめんねぇぇえぇえええええええええぇぇ!!!!!!!!」
「!?」
急な大声にサクルは反応が遅れた。
意外と立派なボディが抱きしめてくる。
「あたひ知らなかったぁぁぁぁぁ!!!!
サクルがそういうところで悩んでたなんてぇぇぇぇ!!!!」
「あ……あの……」
「……大丈夫なんじゃねえか?これ」
「別の方向で心配になってくるのですが……」
「うおぉぉぉぉ!!!!
う、うおぉぉぉぉぉ!!!!
俺も感動したぞぉぉぉ!!!!」
「ボー、うっさい。」
大の女の泣き声はさながら一つの曲のように
ひびいた。
だからなのだろうか。
「ヨウ!!オメエイイ声シテンナ!!
詩オウゼ!!」
「えぇ!!いいわよ!!
この気持ちをサクルに向けて歌うわぁぁ!!!」
「あ、あの……耳元では……」
「アッハッハ!!!あおの新人の二人いいねぇー!!
逸材よ逸材!!」
「まーたうるさいのが増えたわい……」
「まあまあ、いいでしょうあなた。
これから苦楽を共にするんですから。
明るすぎるくらいが丁度いいもんです。」
「いっくぞぉ~~!!あ、ワンツースリー!!!」
深夜。
既にイクストの1(午前0時)を回っている。
他種族が交わる宴は、大盛り上がりで幕を閉じた。
後日、サクルは初めてラフィーアから説教された。
ちびりそうなくらい怖かったらしい。