文学少女はドラゴンを殺せるか
高校一年の春、文学少女はドラゴンと出会った。
少女の名前は、桜井美春。
いつも俯いてばかりの、本が友達といった内気な少女。
高校入学を控えた春、高校では友達を作ろうと、少女は長すぎる髪を整え、野暮ったい眼鏡をコンタクトに変えた。
人生初と言ってもいいほどのおしゃれな装いをして、街中の喫茶店を目指していた少女は、あまり素行が良さそうとは言えない男性に絡まれた所を、目つきの鋭い人物に助けられる。
絡まれたと言っても、いわゆるただのナンパなのだが、少女には恐怖の権化に見えたのだから、ロリコンナンパ野郎も災難である。
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少年の名前は、藤堂龍也。
正義感が強く、目つきの鋭い少年。
素行の悪い者を注意しては、喧嘩になる事があり、いつしか地元の不良達から、ドラゴンと呼ばれるようになった。
高校の入学式当日、人生初の猛勉強によって、地元から離れた高校に入学した少年は、入学式を終えて、教室にある自身の席に座ろうとした所で、隣の席に座る、口元を本で隠した小動物の様な少女に見つめられていた。
「あー……初めまして?」
少しだけ嗄れたようなその声を聞いて、見るからに動揺した様子の少女は、本で顔を隠し俯くと、直ぐに本を閉じ顔を上げ、口を開いた。
「あの! 初めまして! えっと……桜井美晴です! 好きです!」
「……は?」
なお、少女の脳内シミュレーションでは自分から話しかけて、友達になってください、と言うつもりだったようである。
殺し文句としては、悪くない先制攻撃と言えるのではないだろうか。
少女の大胆な発言は、話しかけられた事と、「初めまして」と言われ、若干キレたのが要因である。