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27.相談事があるようです(1)



「今日呼び出したのは他でもない、この前現れた『靄の魔物』について話があるからだ」

「ええ、予想はできていました。それで?」

「こちらで色々と調査してみたのだが――調べれば調べるほど奇妙なんだ。おい、あれを」


 オウゲストさんがそう言うと、使用人が書類を僕の前に並べる。

 「読んでみてくれ」と言われたので手に取って読んでみると、その内容に思わず眉を顰める。

 その内容は簡潔に言うと、別固体の『靄の魔物』が現れて貴族を襲撃したという事件が二回も起きたということだ。しかも場所は王都内部。


「ここ数日で、明らかに君が倒したのとは見た目が違う『靄の魔物』に襲われたという報告が相次いでいる。怪我人が十八名。死亡者が三名。行方不明が二人――行方不明に関しては生存は絶望的だと思っているが」

「ええ、でしょうね。生かしておく理由がありませんから。しかし――これだけ急に現れて貴族ばかりを狙っているし、王都の中に現れたというのは、明らかに何者かが仕組んだことでしょうね」

「その『何者か』について君に聞いておきたい。心当たり、もしくは推測できる相手の人物像などはないか?」


 真剣な顔で若干身を乗り出しながらそう尋ねてくるオウゲストさん。

 僕は少し考えた後、思いつく限りの可能性を言っていく。


「……本当に人為的なものなのであれば、やはり一番可能性としてありえるのは特殊魔法によるものでしょう。魔物を靄に変えるなんて特殊魔法は聞いたことがありませんが、ありえる話ではあります。

 また、魔物の研究者が実験の末開発した新型の合成獣(キメラ)という可能性も捨てきれません。とはいえ、人間の魔力量と知識の限界を考えると可能性はかなり低いと言えますが」

「……人間の(・・・)、か……」

「ええ。人間の、です。人間以外の可能性でいうと、やはり一番可能性の高いのは魔族ですかね。この国を狙う理由も十分ありますし、彼らは長命ですから人間とは知識量が全然違います。人間が生み出したというよりかは、魔族が仕組んだ可能性のほうが高いですね」

「やはりそうか……君が言うのだから間違いないだろう」

「で、わざわざそれを聞くために呼び出したわけではないでしょう?」


 魔族が裏にいるかもしれないなんて少し考えればわかることだし、わざわざ僕を呼び出して確認するとは思えない。

 ならば別の目的がある……と考えるのが普通だろう。早く帰りたいし、いろいろ考えるよりも真っ向から聞いたほうが早い。


「ああ。君から見てあの魔物はどの程度だ? どの程度の魔法師なら勝てる?」

「そうですね……相性にもよりますか、宮廷魔法師ならば対処できるでしょう。新人の宮廷魔法師ならば互角程度かもしれませんが」


 僕はこの前学園で試験をした時のことを思い出しながらそう付け加える。

 あのソーレさんとかいう魔眼持ちの魔法使いなら勝つくらいはできるだろう。

 僕ら三人の時は味方に魔法を当てることを気にして『靄の魔物』に当てやすい広範囲魔法が使えなかったので手間取ったが、宮廷魔法師一人ならそういうのを気にすることもなく魔法をぶっ放せる。まぁ貴族とかが邪魔になるかもしれないが、そういう時は貴族から真っ先に逃げるので気にならないだろう。

 まぁ、広範囲魔法が苦手な宮廷魔法師でも時間稼ぎや追い払う程度はできるはずだ。


「なるほど。では騎士団や軍ならばどうだ?」

「よく騎士や兵士の実力がわからないですが……精鋭なら十分戦えるでしょう」


 僕が戦闘しているところを見るような騎士や兵士は大体が精鋭と呼ばれる者たちだ。たまに戦闘訓練の相手役をすることがあるが、それらは全員騎士団や軍内部で実力があるとされる者たちのみ。それ以外とはほとんど話すこともない。


「精鋭なら……か。残念ながら君が精鋭と呼ぶような者はそれほど多くない。本当は貴族全員の護衛を任せたいのだが、それも難しいだろうな」

「実力が足りない騎士が何人いたところで犠牲を増やすだけですから。有力な貴族は優秀な冒険者を雇うことで対処したほうがいいかもしれません」


 ぶっちゃけ対魔物の戦闘においては、国に仕える者よりも魔物狩りで生計を立てている冒険者のほうが強い。

 とはいえ普通は国の戦力で十分事足りるのだが、今回のような非常事態ではそうも言ってられないだろう。


「そう……だな。検討してみよう。そうなってくると、捜査に回す戦力も考えないといけないな」

「その辺は僕の専門外のことなのでよくわかりません」


 あくまでも僕は宮廷魔法師だから、捜査などはまるっきり専門外だ。戦闘のアドバイスや魔法の講義などはできるがそれ以外は自信がない。


「ああ。捜査は騎士団にやらせているから宮廷魔法師のチカラを借りるつもりはない。だが裏に魔族がいる場合には『勇者』だけでなく君にも協力を頼むことになるだろう」

「それが仕事ですから」


 魔族に対抗できる人間の戦力はそれほど多くない。『夜霧』のおかげで人間と敵対する魔族が少なくなったものの、そもそも人間とは強さのレベルが違うので、やはり対抗できるのは一握りだけだ。

 魔族と一対一でやり合えるのは部隊長クラスだろうし、魔族の中でも上位の戦士と戦えるのは異名が付けられる者だけだろう。

 この国だと元勇者パーティーの者たちや、騎士団長の『轟雷の騎士』、さらには宮廷魔法師の『百花』や『氷の魔剣』などしかいない。

 それと並ぶ貴重な戦力である僕は、有事になれば協力を惜しむことはできない。それをすれば国が滅びかねないからだ。魔族とは少なくてもそれほどの脅威なのである。


「ああ、頼りにしてるよ。

 そうだ。ほかにも要件があったんだった」

「要件、ですか?」


 これ以上何があるというのか。

 僕は気を引き締めると、少し前かがみになって話を聞く姿勢になった。





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