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23.実は武闘派



 僕に慈悲と言うものがなければ今すぐ護衛もシファ様もまとめて灰燼に帰すところだったが、これでも肩書も一応の実力も持つ魔法使いだ。ぐっとこらえ、脳内で証拠を残さないように存在を消す方法を考える。

 そして僕が結論を出そうとする前に――その護衛が吹っ飛んで廊下の壁に激突した。


「わたくしの護衛が大変失礼しましたわ。彼とは後でじっくりお話します」


 珍しくそう恭しく言ってヨナに頭を下げるシファ様。ヨナはそれに目を丸くしながらも、「う、うん。気を付けて」とどこか的外れのような気がしなくもないことを言った。

 まぁ、いつもはいがみ合う相手が急に頭を下げたりしたらそういう反応にもなるか。

 とはいえ、実はシファ様の反応というのはあまり間違っているわけではない。

 今回の場合は『貴族の護衛』が『宮廷魔法師』に対して侮蔑的な発言をしたことが大問題だ。

 そもそも宮廷魔法師とは国の機関の一員でありながら、貴族に命令されることがない。これはあくまでも宮廷魔法師というのが国王直属であることに由来し、万が一貴族と騎士団や軍が結託してクーデターを起こした時のための戦力とするためなのだが、戦力として手放さないためにさまざまな特権が認められている。

 その一つが『貴族に対し同等の権利を有する』というものであり、ヨナがいくらシファ様といがみ合っていても問題視されない理由だ。今回は『貴族と同等の権利』を有する宮廷魔法師に対して『貴族の護衛にすぎない騎士』が暴言を吐いたので、その雇用主が謝罪した、ということだ。

 ただ、『貴族に対し同等の権利を有する』とはいえ、貴族側から国王に対する根回しなどをされたら首が飛びかねないことには変わりないうえ、シファ様は国王の姪にあたるので何かあればそうなる可能性が高い。

 今ヨナがそうなっていないのは、シファ様が本気でヨナを陥れようとしていないからだ。

 今回シファ様が謝罪したのも、彼女が元来真面目な気質だからだろう。ここが僕の執務室だからというのも影響はあるかもしれないが。この王国内で僕の立場は少々複雑なので、もしかしたらシファ様には気付かないところで配慮を強いているのかもしれない。

 そう思うと若干申し訳なくなってきた気がする。まぁあまりここに入り浸るのはやめてほしいのだが。


「キノア様にも謝罪させていただきますわ。貴方の部下に対し、護衛ががとんだ無礼を――」

「あー、別にいいですよ。ただ、こちらとしても一応何か対応したって形があったほうがいいですし『次はない』って伝えといてください。」

「かしこまりましたわ」


 そんなやり取りが終わった途端に、吹き飛ばされて伸びていた護衛が別の護衛に引き摺られて退場していくのが見えた。

 彼を吹き飛ばしたのは恐らくシファ様だったのだろう。シファ様は王立ララド魔法学園の一年生で、公爵家の令嬢なのにかなり魔法に長けている。あの護衛を吹き飛ばすくらいはどうってことないだろう。

 ちなみに一年生ということは、十七歳の僕とヨナよりも一つ年下の十六歳ということになる。まぁ、女性にしては平均的な身長のヨナや、男性にしては若干背の低めで少し童顔な僕と並ぶと、確実にシファ様のほうが年上に見えるので全然そんな感じはしないが。


 謝罪を終えたシファ様は自然な感じで、ちょうど空いていた僕の隣に腰掛けようとした――が、それよりも早くヨナが身体強化を使った素早い動きで机を飛び越え、僕の隣に着席する。さすが獣人と言える運動神経と突然の行動に僕は驚いたものの、特に何かを言うことはしない。

 シファ様は一瞬ぴくっと頬が引きつったように見えたが、何事もなかったかのように僕の正面の席に腰掛けた。


「ここだとキノア様のことがよく見えるわ」


 そう自信満々に――あからさまなドヤ顔をしながらヨナに向かっての言動を目にして、これは悪い流れだと悟った僕は柏手一つ打って注意をこちらに引きつける。

 狙い通り視線は僕に集まり、面倒そうな流れは回避できたはずだ。


「で、本日はどのようなご用件で? いつもよりも連れている護衛の数が多いようですが」


 普段はあんな質の低い護衛はいなかったし、他にも普段見ない顔がたくさんいる。

 そのことを指摘すると、シファ様は忘れてたとばかりに一つ頷いて話始めた。


「ああ、実はこれから孤児院の視察をしますの。でもそれを聞いた国王様が『危ないかもしれないから優秀な護衛を付けろ』とおっしゃって、これを書いてくださったわ」


 そう言って一枚の紙を手渡してくるシファ様。

 それは国王直々の指令所で、完結に言えば『公爵家令嬢の孤児院視察を護衛しろ』というものだった。

 なるほど、視察に行くからこんなに護衛が多いのか。

 それはともかく――姪に対して甘すぎないだろうかあの国王。

 とはいえ命令だというのであれば仕方がない。早速準備をすることにしよう。


「あら、ヨナも来るの?」

「わたしは、キノアの正式なチームメイト。当然のこと」

「ふぅん。まぁ勝手にするといいわ」

「言われなくても」


 ……ほんと隙あらば喧嘩するのはやめてほしい。



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