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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゆりかご病院

作者: 法蓮


 ゆらゆらゆれるゆりかごは、沢山の叫び声と憎悪に塗れて、この世に留まる『目に見えない者たち』の集まる場所になっていた。近所の人間はおろか、遠方の人間達も、この『ゆりかご病院』と名付けられた死の匂いがする場所へ入りたがる者は誰一人もいないだろう。


 ――そう、僕を除けばね。


 やっと見つけたんだ。死へと繋がる一つの扉。皆は赤ん坊の泣き声と軋む音、そして昔のある事件をきっかけにこの名前が付けられたんだと噂では聞いた。


 僕は一人のおばあさんに色々な昔話を教えてもらった。


 『ゆりかごは安心出来る訳じゃないのさ。あやしてもあやしても、泣き止まない魂が存在しているからねぇ』

 「そうなの?」

 『ああ、そうだよ。この地方では『ゆりかご』は恐れられているから。ここだけの内緒話さ』

 「……へぇ」


 内緒話、そして僕の望むものがそこにあると確信したんだ。誰も近づかない元病院の『ゆりかご病院』と言う名前らしい。その名前を聞いただけで悪寒が走ったのは内緒だ。


 ◇◇◇◇◇


 そんなこんなで『ゆりかご病院』の入り口へと足を進めていくんだ。悪寒と何か見えない力に引き寄せられるように……


 ――それが悪夢の始まりなんて思いもしなかった。


 歩けば歩く程、長い年月放置されていた事が理解出来る程、建物は脆くなっている。


 「っつ……あぶな」


 足を誰かに掴まれたような感覚がしたのだが、確認すると劣化しているだけだった。変な感触が残っているけど、ここは気のせいと言う事にしとこうか。


 何だかんだ興味があると言いながらも、怖いものは怖いんだ。それでも入口へ戻る気なんてさらさらなくて、前にしか進む選択肢しか僕の中にはない。


 半袖で丁度よかったはずなのに、夜だからだろうか、肌寒く感じる。直観では危険だと身体を通じて訴えているのだが、それこそがスリルだとしか思えないんだよな。


 (まぁ、ただの好奇心だけでゆりかご病院(こんなとこ)に来ている訳じゃないんだけどね)


 半分は好奇心、そしてもう半分は僕の父が生まれた病院だからこそ、見ておきたいと思ったんだ。だったら夜中じゃなくて昼間でもよくないか?なんて言われるかもしれないけど、僕も親父も相当が付く程の変人(かわりもの)でね。そこは譲れないんだよね。


 色々な想いが交差する中で、冷たい風とすれ違った気がした。まるで冬みたいな寒さ。いや、寒気に近いのかもしれない。


 (え……なんで)


 足が疲れたと感じたから、少し止まって周囲の様子を伺おうとした……が、自分の身体なのに、言う事を聞いてくれない。足に力を入れても、心の中で怒鳴り声をあげても、自分の身体じゃないみたいに、誰かに操られているように、勝手に動いている。


 こちらへおいで

 たのしいよ

 ゆらゆらゆれて

 たのしいよ


 あそぼう

 あそぼう

 おにいちゃん

 あそぼう

 あそぼう


 ――死ぬまで



 ◇◇◇◇◇


 バサッと起き上がると全身に痛みが走った。


 『大丈夫かえ?』

 「ばーさん」

 『うなされていたから心配してたんじゃよ』

 「そう……か」


 ――あれは夢か?


 自分の中で違和感を感じながらも、夢だった現実にホッと胸を撫で下ろす。


 そんな僕の背中を生気のない瞳でニヤリと笑っているおばあさんに気付く事なく……。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  しっかりした描写のおかげで、舞台の脆さや主人公の怖さが、よく伝わってきました。 [一言]  得体の知れないモヤモヤとした恐怖というのは、一つのホラーのパターン。いわば王道であり、それは「…
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