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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
1章 桐田朱里と蘭童殿

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8話 和の心

「ざっくりまとめると、緊張してデートどころではなかったってことか?」

「ざっくりまとめなすぎな気もするけど、そういうことです」


困ったように頬を染める桐田朱里を見て、僕は正直頭を抱えてしまう。

せっかく雨竜が乗り気になっているというのに、デートが成立しないのでは意味がない。


「まったく、デートに行く前に僕に相談すれば良かったものを……」

「……相談して好転する気がしなかったんだけど」

「馬鹿言え、僕に掛かれば君の緊張を解くなどわけないことだ」


この女が若干僕のことを舐めているような気がして心外だが、背に腹は変えられない。僕が一肌脱ぐしかないようだ。


「…………あなた、いつまでここに居座る気よ?」


桐田朱里の力になろうと僕が覚悟を決めたその瞬間、聞き慣れた嫌みったらしい声が上から降り注いだ。


「お前こそなんでいるんだ?」

「私は茶道部! ここは茶道室! 居るのは当たり前でしょうが!」


素朴な疑問に怒声を以て応対したのは、我がクラスの委員長である御園出雲だった。

そしてコイツが言うようにこの場所は茶道室、フローリングとリノリウムの床ばかり蔓延る学校の中でも異質な和空間である。


「うるさい奴だな、ここは茶道室だぞ? もっと静かに和を堪能できないのか?」

「あなたがいなければとっくに堪能してるわよ……!」

「イレギュラーにいちいち惑わされていたら社会に出ても活躍できない、マニュアルを読み込む時代はとうに終わったぞ?」

「あなた私と会話する気ないでしょ!?」


ご明察。頭がいい奴はこういうときに助かるな。


「まあとりあえず落ち着けよ、抹茶でも点てながらさ。それを僕にください」

「その恐ろしいまでの図々しさはどこからくるのかしら……」

「茶菓子があるなら一緒に頼む。桐田朱里を説教してたから糖分不足だ」

「……説教されてたかな?」

「というかあなた、本当に帰りなさいよ。後輩たちが入ってこられないじゃない」


御園出雲の弁を聞いて入り口の方へ目を向けると、後輩らしき女生徒たちが入り口周りで待機しており、中へ入ってこなかった。


「茶道部員か?」

「そうよ、あなたを警戒して中に入らないのよ」


成る程、それは良くないな。

部活動とは学生が勉学以外の可能性を育む場。新しい自分を発見する場。それを少しでも妨げるような真似は僕とてしたくない。


「よかろう、そこまで言うなら仕方ない。僕も覚悟を決めねばならぬようだな」

「??」


ゆっくりと立ち上がった僕を見て、目を丸くする御園出雲と桐田朱里。

思ったより足が痺れていて立つのが困難だったが関係ない。

怯えているらしい下級生たちにむけて僕は手を伸ばした。



「さあ君たち、恐れることはない! 日本人として今日も学ぼうじゃないか、ワビサビの精神というものを!!」



その後すぐに追い出された。何故なんだ。

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