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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
2章 球技大会と青八木家

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29話 球技大会4

「こ、今度は私が質問してもいいですか!?」


月影美晴のからかい質疑を凌いだ後、まだほんのり顔が赤い桐田朱里が、体育座りのまま右手を真上に挙げる。


「勿論、私ばっかりするのも変だしね」

「か、かたじけないです!」

「かたじけない?」


笑顔で了承する月影美晴に腰を低くひたすら頭を下げる桐田朱里。何だか弱みでも握られているかのような上下関係が生まれている。


それよりも僕は、態度といい話し方といいかなり余裕のない桐田朱里に既視感を覚えた。先程までもそうだが、こういうときのコイツは本当に突拍子もないことを言い出すわけで、




「お2人って、お付き合いしているわけじゃないですよね!?」




案の定というか何というか、気合いに満ちた表情で的外れなことを言い出した。思わず溜息が出てしまう残念っぷりである。


「一応聞くが、なんでそう思ったんだ?」

「えっ、だって、2人きりで楽しそうに会話してたので……」

「小学生かお前は」

「あたっ!」


なんとも浅はかな考えを堂々と告げる桐田朱里にチョップの判定を下す僕。これで思考回路が正常に戻ってくれればいいのだが。


「サボリ仲間として一緒に居るだけだ、変な勘ぐりはやめろ」

「サボり? 廣瀬君バスケしないの?」

「なんで僕がバスケをしなきゃいけないんだ?」

「えっ、むしろなんで球技大会でバスケしないの?」


桐田朱里の目は、『あなたの方がおかしくないですか?』と言っていた。しまった、このタイミングで思考回路が修正されたか。面倒くさい奴め。


「団体競技が嫌いだからだ、人に合わせてプレイするなんて冗談じゃない」

「成る程、ものすごくしっくりくる理由だね」

「だろ? 茶道みたいな個人競技ならやってやらないこともないがな」

「茶道って個人競技って言うのかな……?」


桐田朱里め、また僕の言葉にいちゃもんをつけやがる。素直に『廣瀬君なら茶道部のエースになれるよ』と返せばいいものを、相変わらず師に反抗的な弟子だ。


「ってそんなことはどうでもよくて!」

「いいのかよ、サボりに言及したのお前だろ?」

「いや、だって、廣瀬君がバスケするとこ見てみたかったし」

「それは私も見てみたかったな、全然想像つかないもの」

「何を言おうが僕は出ないぞ。そもそも大した戦力にもならんしな」


バスケなんて体育の授業でボールを触った程度でシュートもまともにできない。ドッジボールみたいにパスはできてもドリブルもちょっとできるレベル、戦力として僕は役に立たないだろう。



「「……そういうことじゃないんだけどな」」



その瞬間、口元を押さえて見つめ合う桐田朱里と月影美晴。すごいな、けっこう長い文字数を綺麗にハモったぞ。これはギネスさんに載せてもらってもいいんじゃないだろうか。



「……びっくりしたね」

「は、はい! なんか照れ臭いです……」

「あはは、私もそうかも」



ほんのりと頬を赤らめて2人は互いに苦笑いを浮かべる。言葉が揃って相手の考えてることが見えてしまったのだろう、なんだか恥ずかしそうに見えた。


というかこれ、何の話をしてたんだっけ? ハモったインパクトが強すぎて忘れてしまった。



「ちょっとあなたたち、あんまり堂々とサボるんじゃないわよ」



少しばかり居心地が悪くなった空間に、救いの手か微妙な声が降りかかる。


目の先には、仁王立ちする御園出雲の姿があった。我がクラスの委員長、不機嫌そうな面をして登場である。


「僕なら試合に出ないからな?」


御園出雲の言論統制のため、スタートから先制パンチを噛ます僕。同じクラスだからって講釈垂れ流されたら堪ったものではない、僕は絶対に試合に出ないぞ。


「いいわよ別に、それでチームが勝てるなら。全員で勝ち取る勝利なんて奇麗事だもの」

「なんだどうした、今日のお前は話が分かるじゃないか」

「あなたの思考回路がおかしいだけで今までも変なことを言ったつもりはないわ」


そう言って何か諦めたように溜息をつくと、御園出雲は腕を組んでこちらを見やる。


「私も運動は得意じゃないからね、迷惑かけるくらいなら試合に出ない選択肢もアリだと思っただけよ」

「素晴らしい考え方だ、僕と同じ崇高な信念を持っているな」

「……何故か急に陳腐な考え方に思えてきたんだけど」


どういう意味だコラ。褒めてやったのにつけ上がりやがって、やはりこの女とは水と油、決して相容れぬ関係のようだ。


「というかお前、結局ここに何しに来たんだよ?」

「友達2人があなたに何かされてないか心配で見に来たのよ」

「はあ? なんで僕が加害者前提なんだよ?」

「日頃の行いのせいね、自業自得だわ」

「おい貴様ら、僕が無害であることをこのアマに伝えるんだ」

「チョップされて痛かったです」

「カーディガンの指摘は酷かったなぁ」

「気持ちいいくらいの立派な加害者ね、恐れ入ったわ」


嘘でしょ、その謎の団結力はどこで培われたの? 絶対に台本を用意してただろ、いたいけな僕をここまで苛めるなんて非道の極みである。



「って馬鹿なやり取りはこれくらいにして、試合観戦くらいはしなさいよ。せっかくの球技大会なんだから」



僕を攻撃できて満足したらしい御園出雲は、気を取り直して息を吐き、体育館の方を指差した。


その先では、コートを3面使って第一試合が行われていた。各2チーム計6チームが勝利を巡って鎬を削っている。


しかしなんというか、非常に眼福な光景だな。スポーツをする女子というのはこうも無防備というか、よく動くというか、有り体に言うと素晴らしい。試合観戦、とてもいいですね。



「それに一番手前の試合、いきなり決勝レベルの好カードなんだから見ときなさい。ホントにすごいわよあの2人」



御園出雲にそう言われて、僕ら3人は1度立ち上がり、ステージの前方へとやってくる。


「あっ」


視線の先で向かい合っていたのは、僕もよく知る女子2人だった。



「晴華ちゃんと、真宵ちゃんだね」



ステージ側第一試合は、神代晴華率いるCクラスと、名取真宵率いるAクラスの試合が行われていた。


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